歯周病の症状、進行、検査

健康な歯肉は薄いピンク色で、コラーゲンの働きでよく引き締まっています。 しかし、プラークが付着し、歯周病菌が繁殖した状態が続くと、歯肉に炎症が起きて腫れてきます。 この状態が歯肉炎(歯周病の初期の段階)です。 歯周炎は、歯磨きできちんとプラークを除去しておくと、それだけで治ります。 しかし歯磨きが不十分だと、歯と歯肉の隙間で歯周病菌が繁殖を続けます。 そのため、隙間はどんどん深くなり、歯磨きではプラークを取り除けなくなります。 この状態が歯肉炎(歯周病の進行した段階)です。 歯周病菌はコラーゲンを分解する酵素を出すため、歯肉は腫れてぷよぷよした状態になります。 また、歯周病菌によって産出される毒素や炎症物質などにより、骨を溶かす働きが高まり、歯槽骨が徐々に破壊されます。 そのため、歯を支え切れなくなり、最終的に歯が抜けてしまうこともあるのです。


■歯周病の進行

気付かないうちに進行し、放置すると歯が抜けることも

『歯周病』は、初期の段階ではほとんど痛みがありませんが、 歯茎が腫れたり、血が出る、といった自覚症状が現れると、かなり進行している状態です。 また、歯周病は、疲れや体の抵抗力が落ちた時に大きく進行すると言われており、 この時に起きる急性炎症は、それまであった歯の周りの骨をグッと一挙に溶かしてしまいます。 「歯茎が炎症を起こす→治まる」を繰り返していると、歯がグラグラになったり、 抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病の進行の速さは人によって異なりますが、通常、20歳前後の若い年代から歯肉炎が起こり始め、 10~20年間かけて悪化し、30歳代後半以降にさまざまな自覚症状が出てきて、初めて歯周病に気付くことが 多いようです。厚生労働省の調査では、中高年の4~5割に歯周炎があると報告されています。 また、20歳前後の若い年代には、歯肉炎が多いこともわかっています。 歯周病は、初期には目立った症状がなく、気付かないうちにゆっくりと進行します。 放置すれば、最終的には歯が抜けてしまいます。しかし、早い段階で見つけて、適切に対処すれば、 治すことが可能です。


●歯周病の進行と症状

歯肉が腫れたり後退し、やがて歯根が露出してくる

歯周病は、歯肉炎を経て歯周炎へと進みます。 歯周炎は「軽度、中等度、重度」の3段階に分けられ、それぞれ次のような症状が現れます。

▼歯肉炎
歯肉に炎症が起こり、歯肉が腫れたり、歯を磨いたときに出血したりしますが、痛みはほとんどありません。
▼軽度の歯周炎
歯周ポケットが深くなり、歯槽骨が溶け始めます。
▼中等度の歯周炎
歯槽骨がさらに溶け、歯肉が後退して歯が伸びたように見えたり、歯が前後左右にぐらついたりします。 ときどきひどく腫れて痛んだり、血や膿が出ることがあります(急性発作)
▼重度の歯周炎
歯槽骨がほとんど溶けてしまい、歯のぐらつきがひどくなります。

急性発作の腫れや痛みは、膿が排出されると2~3日で治まりますが、歯周炎が治ったわけではありません。 慢性的な炎症は続いており、歯槽骨の溶け出しも続いています。急性発作は、過労などで抵抗力が低下している 時などに起こりやすく、また、歯周炎が進むにつれて、急性発作の起こる頻度が高まります。


●歯周病の検査

歯周病は、症状の軽いうちなら簡単な治療で完治しますが、中等度・重度へと進行すると、 治療にかかる日数も費用も多くなり、最悪の場合、歯を失うことになります。 40歳以上の人は症状がなくても歯科や自治体の歯科検診などで検査を受けてください。 検査の結果、異常がなくても、年に1度は歯周病の検査を受けることをお勧めします。
歯周病があるかどうかは、次のような歯科での検査で調べることができます。

▼問診
現在の健康状態やこれまでの経過などが聞かれます。心臓病や糖尿病、血液が固まりにくい病気のある人、 ワーファリン、バファリンなど血栓を予防する薬を飲んでいる人などは必ず伝えます。
▼歯周ポケット測定(プローピング)
プロープという細い棒状の器具を歯周ポケットの中に入れて、ポケットの深さを測ります。 歯垢がたまっていたり、歯周ポケットに炎症があると、ポケットは深くなり、プローピングすると出血します。 プローピングの結果は、グラフで見ることができます。
▼歯のぐらつきを調べる
ピンセットで1本1本の歯を挟んで動かし、ぐらつき具合を調べます。
▼かみ合わせを調べる
かみ合わせがよくないと、歯に異常な力がかかって歯周病が進行するので、 かみあわせが適切かどうかを調べます。
▼PCR(歯垢の染め出し)
染色剤で歯垢を赤く染め出して、どこにどれくらい歯垢が付いているかを調べます。
▼エックス線撮影
歯槽骨がどれくらい溶け出しているかを調べます。

このような検査から歯周病があるかどうか、また、どの段階の歯周病かなどの診断が行なわれます。


◆こんな症状がある場合は要注意!

●歯磨きの時、出血する
●歯肉が赤く腫れていて触ると痛い
●歯肉が歯から離れている
●口臭が消えない
●歯肉と歯の間からウミが出る
●歯がグラグラしたり、歯と歯の間に隙間ができる
●かみ合わせが変わってくる
●部分義歯が合わなくなってくる