自分に合う入れ歯

・歯を失った場合は、歯や口の状態、価値観を基準に、自分に合った義歯を選んで、必ず補う。
・義歯にはさまざまな種類があり、それぞれにメリット、デメリットがある。
・義歯を入れた後は、歯科医による定期的な点検を受け、調整をする。


■歯を失ったとき

部分入れ歯やブリッジなどで失われた個所を補う

歯を失ったとき、そのままにしておくと、食べ物をきちんと噛めないばかりか、残った歯が動いてしまい、歯並びに悪い影響を 与えてしまいます。そのため、部分的に歯を失ったときには、「部分入れ歯」や「ブリッジ」「インプラント」などの方法で、 失われた歯を補う治療を行います。どの方法を選択するかは、残っている歯の本数、歯や口の状態によって異なるので、 歯科医と相談の上、自分に合った義歯を選ぶことが大切です。


●ブリッジ

失った歯の両側の歯を削って土台にし、橋(ブリッジ)を架けるように、削った歯も含めて、つながった人工の歯冠をかぶせて 固定します。ブリッジに使用する歯の素材には、金属、硬質レジン(プラスチック)、セラミックスなどがあり、 硬質レジンやセラミックスを使った場合は、外観も違和感が小さく回復できます。人工歯が固定されているので装着したときの 違和感は小さく、噛む力はもともとの歯の約60~80%程度といわれています。しかし、失われた歯の両側の健康な歯を削る 必要があります。また失われた歯数が多い場合には行えません。 健康保険の適用があり、失った歯が1本の場合、自己負担分は、3割負担の場合で数千円程度です。 ただし、健康保険では、硬質レジンを使えるのは前歯のみで、奥歯は金属になります。またセラミックスも健康保険の適用外です。

●部分入れ歯

部分入れ歯は着脱式で、「人工歯」と入れ歯を固定するカギのような金具の「クラスプ」。人工歯を支える合成樹脂などでできた 「義歯床」から成ります。クラスプを隣接した健康な歯にかけて装着します。健康な歯を削らなくて済み、 失われた歯数が多い場合にも使われます。部分入れ歯は、飲食したり話したりする際に、口の中で動きやすいため、 違和感を覚えたり、歯肉に当たって痛みが生じたりすることがあります。クラスプが見えるため、入れ歯だとわかることがあります。 噛む力はもともとの歯の約30~40%程度といわれています。取り外して洗浄できるため、手入れは容易です。
レジンの義歯と義歯床、金属製のクラスプの部分入れ歯の場合、健康保険の適用があります。 部分入れ歯でも失った歯が1本の場合、自己負担分は、3割負担の場合で数千円程度です。 コバルト・クロム合金、チタン、白金化金などを使った、装着感の良い金属製の義歯床や、クラスプのないタイプの部分入れ歯などは、 健康保険の適用外になります。


●インプラント

歯を失った顎の骨に、チタンなどで作った人工歯根を手術で埋め込み、人工歯根が顎の骨と結合したらその上に人工歯を固定します。 人工歯根が顎の骨に固定されているため、見た目がよく、義歯を装着している感覚もほとんどありません。 噛む力は、もともとの歯とほぼ同様です。治療期間は、最短で6週間、通常は数か月かかり、長期にわたります。 手術を行うので、頻度は高くありませんが、神経や血管を傷つけ、神経麻痺、出血、細胞感染などが起こるリスクがあります。 インプラントを行うには、健康な歯槽骨があることが条件になるので顎の骨や歯槽骨が十分にない場合や、重度の歯周病がある場合は 行えません。また、喫煙している、糖尿病などの全身疾患がある場合は、治療を受けるのが難しくなります。 こうした問題がある場合は、治療を受ける前に治療や改善が必要です。
通常、健康保険の適用はありません。費用は、場合によって異なりますが、1本につき、40万円程度かかります。 インプラントを希望する場合は、歯や歯肉、歯槽骨の状態、顎の骨の状態、持病、生活習慣、費用などについて、 歯科医とよく相談してください。


■入れ歯のケア(手入れ)

きちんと洗浄を行い、こまめな調整を

ブリッジや部分入れ歯は汚れやすいのできちんとケアをすることが大切です。義歯に付いた甘い食べかすをそのままにしておくと、 口臭や歯周病の原因になることがあります。

▼ブリッジのケア
汚れがたまりやすいのは、義歯と歯肉の境目や、ブリッジの下の隙間です。歯ブラシや歯間ブラシ、ブリッジ専用の デンタルフロスなどを活用しましょう。ケアの際は、歯肉を傷つけないよう、注意してください。

▼部分入れ歯のケア
取り外して洗浄します。入れ歯専用の洗浄ブラシを使い、義歯、義歯床、クラスプなどを全体に磨き残しがないよう、 丁寧に洗浄します。義歯用、あるいは食器洗い用の洗剤を使った後、きれいにすすぎます。 そのあと、コップなどに義歯洗浄用剤を入れ、入れ歯を浸けておくと効果的です。よく朝、よくすすいでから装着します。

●こまめな調整が必要

ブリッジや部分入れ歯を作った後は、数日後、数週間後、数か月後などに、歯科医による定期的な点検を受け、 なじむように調整していきます。自分では気付かなくても調整が必要な場合があるため、点検は必ず受けてください。 「入れ歯が合わない」「違和感がある」という場合は、遠慮せずに歯科医に相談してください。 インプラントの場合も、ネジの締まり具合や噛み合せなどの調整が必要です。定期的な点検を受けてください。