正しい歯磨きの仕方

正しい歯磨きが最も大切。初期であればしっかり治せる

『歯周病』を予防するには歯磨きが大切ですが、正しく磨けていない人が少なくありません。 歯磨きを正しく行うとともに、定期的に歯科を受診して口の中をチェックすることが大切です。
歯周病の主な治療は「歯磨きの指導」「歯石の除去」「歯肉の手術」の3つです。 歯磨きはとても重要です。正しい歯磨きの仕方を身につけ、きちんとプラークを除去できるようになると、それだけで歯肉の炎症は治ります。 「歯石」は、プラークが歯に付着し続けることで、石のように固まってしまったものです。 歯石は歯磨きでは取れません。また、歯石ができると、そこにプラークが溜まりやすくなり、歯磨きをしてもなかなか取れません。 歯石を除去すると歯周病はよくなりますが、歯磨きを十分にしないと、再びプラークが溜まってしまいます。 歯石を除去しても、大切なのは歯磨きなのです。正しい歯磨きと歯石の除去で、多くの歯周病は治ります。 それでも治らない場合には、手術が行われることがあります。歯周病は、早めに気付いて受診することが大切です。 早い段階であれば、歯磨きや歯石の除去でしっかり治せます。


■歯周病の予防には毎日の歯磨きが大切

歯周病は、プラーク(歯垢)の中に存在している歯周病菌が原因で起こります。 毎日の正しい歯磨きでプラークを取り除くことが大切です。 また、歯周ポケットの奥深くにあるプラークや、磨き残しによって歯の表面に付着したままのプラークは、 唾液に含まれるミネラルなどと結合して石灰化し、硬い「歯石」となり、歯磨きだけでは取り除けなくなります。 まずは歯周病の症状が現れていないかどうか、セルフチェックをしてみましょう。

●歯周病のチェックリスト

  • 1.歯肉に赤く腫れている部分がある
  • 2.歯磨きをすると血が出る
  • 3.歯肉に触ると痛いところがある
  • 4.歯が長くなったように見える
  • 5.噛むと歯が揺れる感じがある
  • 6.歯と歯の間の隙間が目立ってきた
  • 7.口のにおいが気になる

上記のうち4つ以上当てはまる場合、歯周病が進行している可能性が高いです。 4.5.6のどれか一つでも当てはまる場合、早めに歯科を受診することが勧められます。

●正しく磨くことが大切

歯周病の予防や治療では、毎日の歯磨きによって、歯や歯肉(歯茎)の表面に付着した「プラーク(歯垢)」 を取り除くことが大切です。プラークは細菌の塊で、プラークが歯と歯肉の間にたまることが歯周病の最大の原因になります。 本人はしっかり歯磨きをしているつもりでも、きちんと磨けていない場合がよくあります。 「しっかり歯磨きをしているという人」で、一見きれいに見える場合でも、「歯垢染色液」で染め出してみると、 プラークが残っていることがわかります。特に歯と歯の間、歯と歯肉の境目、歯並びがよくない部分などにプラークが残っています。

●歯を磨く回数と歯周病

1日に何回歯を磨くか」を調べたところ、最も多かった答えは「1日2回」でしたが、「1日3回」という人の割合も年を追うごとに 増えています。ところが、軽度から中等度の歯周病に該当する「4mm以上の歯周ポケット」を持つ人の割合には、 ほとんど変化が見られませんでした。つまり、歯を磨く回数は増えても、実際にはほとんど磨けていない人が多いため、 歯周病の予防につながっていないと考えられるのです。


■歯の正しい磨き方①

・1日に何回磨いても、きちんと磨けていなければ、虫歯や歯周病の予防につながらない。
・効果的な歯磨き法の「スクラッピング法」と「バス法」を覚えよう。
・自分に合った歯ブラシを選び、デンタルフロスや歯間ブラシなども使用する。

いつまでも歯を丈夫に保つには、正しい歯の磨き方を身につけることが必要です。 歯の磨き方にはいくつか方法がありますが、ここでは、確実に汚れを落とす「スクラッピング法」と 歯周病の予防や治療に効果的な「バス法」を紹介します。

▼スクラッピング法
歯の外側は90度、内側は45度の角度で、歯の表面にブラシを当て、細かく振動させながら小刻みに動かします。 歯と歯肉の境目にも毛先が当たりますが、歯肉を傷めないよう、力を入れずに小刻みに動かします。 前歯の裏などは、歯ブラシを縦に使って、前後の角のどちらかを歯の根元に当て、小刻みに上下します。

▼バス法
歯と歯肉の境目に45度の角度で歯ブラシを当て、歯ブラシの先を歯周ポケットに入れるようにして、 歯ブラシを細かく振動させるように動かします。歯と歯肉の間のプラークを取り、歯肉をマッサージする効果もあります。 特に歯周病のある人に勧められる磨き方です。

●磨く順番

磨く順番は、特に決まりはありませんが、磨き残しのないよう、自分なりの順番を決めてください。 スクラッピング法でもバス法でも、普通の歯ブラシが当たるのは歯2本分ほどなので、ずらしながら1ヶ所20往復くらい磨きます。 時間にして15~20分くらいかけてください。時間がかかるので、洗面所に限らす、例えばテレビを見ながら、 湯船に浸かりながらなど”ながら磨き”でもよいでしょう。
1日3回、毎食後に歯を磨くのが理想です。口の中の汚れがプラークにになるまでは12時間程度かかるといわれているので、 必ずしも食後すぐに磨く必要はありませんが、すぐに磨けなかった場合は、寝る前に丁寧に時間をかけて 必ず磨くようにしてください。


■歯の正しい歯の磨き方②「スクラッピング法」

歯周病を予防するには、歯磨きを正しく行うことが大切です。 そのためには、まず適切な歯ブラシを選びましょう。 硬い毛の歯ブラシのほうがプラークを落としやすいのですが、正しい歯磨きの方法が身に付いていないと、 歯や歯肉(歯茎)を傷めやすいため、最初は毛が「軟らかめ」か「ふつう」の歯ブラシを選びましょう。 歯ブラシは、毛が密集していてヘッド(毛が植えられている部分)がやや小さめで口の中で小回りが利き、奥歯にも届きやすいものを選びます。 自分に合う歯ブラシがわからない場合は、歯科医に相談してみましょう。

●歯磨きの3つのポイント

▼正しい方法で磨く
歯ブラシは鉛筆を持つように握り、力を入れ過ぎないように歯全体を磨くのが基本です。 歯の外側(頬側)は歯ブラシの毛先を歯の表面に対して90度程度の角度で、歯の内側(舌側)は歯ブラシの毛先を斜め45度程度の角度で当て 歯と歯肉の境目に毛先が当たるようにします。
歯と歯肉の境目や、歯並びがデコボコしている部分、歯と歯の間、一番奥の歯、抜けた歯の両隣、歯の側面などは、 プラークが残りやすい場所なので注意が必要です。 歯と歯肉の間のプラークを落とすには、1本ずつ、歯と歯肉の境目を次のように磨きましょう。 軽い力で毛先を10~20回程度、振動させるように小刻みに動かしながら、少しずつ次の歯のほうにずらしていきます。 歯ブラシの毛の弾力で、毛先が跳ねる力を利用するように磨いてください。 歯並びがデコボコしている場所は、歯ブラシの角度を工夫して、1本ずつ丁寧に磨きましょう。
前歯の内側は、歯ブラシを縦にして、主に毛先の先端部を当てるようにして磨きます。 奥歯など、上下の歯が接する噛合わせの面も忘れずに、歯の溝に沿って磨いてください。 歯肉が腫れていて痛みや出血がある場合は、より弱い力で磨くようにしましょう。
歯磨きは基本的には毎食後しっかり行うようにしてください。 朝や昼は忙しいという場合は、歯磨きの時間を短くしてもかまいませんが、その場合でも夜はしっかり時間をかけて磨くようにしましょう。 というのも、寝ている間は、口の動きが少なく唾液の分泌が減るので、細菌が繁殖しやすくなるためです。 発泡剤や香料が含まれている歯磨き剤を使って歯磨きをすると、よく磨けていなくても口の中がスッキリしてきれいに磨けたつもりになりがちです。 まずは歯磨き剤を使わずに磨き、次に少量の歯磨き剤を使って磨く「2度磨き」が勧められます。
正しい歯の磨き方

▼歯を磨くルートを決める
歯をあちこち不規則に磨くと、全部の歯をしっかり磨けないことがあります。 磨き残しを防ぐためには、磨き始める場所と、磨き終わりの場所を決め、「一筆書き」をするように磨いていくのが効果的です。
歯を磨くルートの例

▼歯磨きのサポーターを使う
歯ブラシの毛が届かない歯と歯の間や、歯ブラシでは磨きにくい奥歯、歯に被せ物がある場所などは、歯間ブラシやデンタルフロスなどを使って、 プラークを取り除くことが大切です。ただし、これらのケア用品は、誤った使い方をしたり、自分に合っていないものを使ったりすると、 歯肉を傷つけることがあるので、使う前に歯科医院で相談するとよいでしょう。

■進行した歯周病の治療

歯周病の治療では、プラークが歯に付着しないようにするため、まずは正しい歯磨きの指導が行われます。 また、歯石は、無理に歯ブラシでこすったり、爪などで取ろうとしたりすると、歯肉や歯を傷つけることに繋がるので、 歯科医院で器具を用いて取り除いてもらう必要があります。 軽度の歯周病の場合は、これらの方法で症状が改善することが期待されます。
進行した歯周病の場合は、ポケットの奥の歯石を取り除く「歯周外科手術」を行い、場合によっては歯を支える組織を再生させる 「歯周組織再生療法」を併せて行うことが検討されます(下段参照)。 歯周病の治療後は、定期的に歯科医院で口の中のチェックを受けることが大切です。 歯周病など口の中の病気がない場合でも、半年から1年に1回程度は歯科を受診するようにしましょう。

【「歯周外科手術」と「歯周組織再生療法」】

歯周外科手術では、麻酔をかけてから、歯肉を切開し、ポケットの深い部分に付着した歯石を取り除きます。 すでに溶けてしまった歯槽骨は元には戻らないので、併せて歯周組織再生療法を行うことがあります。 歯周組織再生療法では、歯石などを取り除いて空いた部分に特殊な膜を置いたり、 特殊なたんぱく質を含む薬を塗ったりして、骨や歯肉を再生させます。 ただし、歯周病の進行の状態によっては、歯周組織再生療法を行うことができない場合があるので、 希望する場合は、かかりつけの歯科医に相談しましょう。


■歯ブラシの選び方

歯ブラシにはいろいろなタイプがあります。選ぶときは、毛先のサイズや硬さ、列数などを確認し、自分に適したものを 選びましょう。毛先が硬い歯ブラシは、歯の汚れを取るには効果的ですが、力を入れ過ぎると歯肉を痛めやすいので、 使用に際しては注意が必要です。
スクラッピング法を行う場合、毛先のサイズは普通の大きさを基準に、口が小さかったり歯の裏側が磨きにくかったりする場合は、 小さいサイズを選んでください。硬さは、歯肉が健康な人は普通を、歯周病のある人は柔らかめを選びます。
バス法の場合は、毛先が長くて幅が狭い(毛先が2列、普通の歯ブラシは3列)、バス法用の歯ブラシを使うとよいでしょう。 入手しにくい場合は、柔らかめで、小さめのサイズを使ってください。
また、歯並びが悪い個所がある場合は、毛先が1束になっている「ワンタフトブラシ」を使うと磨きやすくなります。 普通の歯ブラシを使う場合は、縦に使って磨いてもよいでしょう。

▼デンタルフロスや歯間ブラシ
歯と歯の隙間には、デンタルフロスや歯間ブラシを使用してください。どちらも、ゆっくり行うことが大切です。 やりすぎると、歯や歯肉を傷めるので、注意が必要です。

▼電動歯ブラシ
普通の歯ブラシではうまく磨けなかったり、手が不自由な場合には、電動歯ブラシが便利です。 毛先が動くので、歯ブラシ本体を動かす必要はありません。スクラッピング法と同じように、歯の外側は90度、 内側は45度の角度で当て、1カ所に当てたら左右に動かしたり、強く押し当てないで使用します。

■まとめ

歯周病を予防するためにも、治療するためにも、正しい歯の磨き方(イラスト参照)を身につけることが大切です。 また、歯の状態や歯並びは、一人一人異なっているので、自分に合った磨き方をする必要があります。 そこで、歯周病が疑われる場合には、歯科を受診して、自分の歯の状態や歯並びに合わせた歯磨きの方法を指導してもらいます。 歯磨きのタイミングは、食べたらすぐに磨くのが理想的です。