骨質を強化する

私たちの骨の成分は、硬骨の体積の50%(重量では20%)がコラーゲンで占められています。 コラーゲンは、肌を潤す成分としてよく知られていますが、骨の構成成分としても重要な働きを担っています。 骨の中にコラーゲンが網目状に張り巡らされていて、そこにカルシウムやリンなどの骨成分が結合して 骨全体が構成されているのです。このような骨の構造はコンクリートに建物に例えることができます。 つまり、コラーゲンが鉄筋、カルシウムやリンがコンクリートの役割を担っているのです。 建物の場合、鉄筋がしっかりしていないと強度や耐震性が低く、倒壊しやすくなります。 同様に、骨の中にコラーゲンがしっかり張り巡らされていないと、骨は丈夫にならないのです。 つまり、骨粗鬆症の予防改善には、骨密度を増強するだけでなく、「骨質」を強化することが不可欠なのです。


■骨質強化に『コラーゲン&ビタミンB6・B12・葉酸』

骨粗鬆症の予防改善には、骨密度を増強するだけでなく、 複数ある骨成分の結合力を示す「骨質」を強化することが不可欠であることが判明しました。 骨質(コラーゲンの強度を示す指標)を高めるには、コラーゲンを秩序正しく結合させる善玉架橋を増やし、 コラーゲンを無秩序に連結させる悪玉架橋を減らすことが大切で、 悪玉架橋を減らすには、ビタミンB6・B12・葉酸の摂取が有効です。


●コラーゲン

骨の鉄筋の役割を果たすコラーゲン

これまで、骨粗鬆症の予防・改善には、骨の主成分であるカルシウムを補って骨密度を高めることが 肝心であると考えられてきました。しかし、骨粗鬆症の人の中には、カルシウムをたくさん摂って 骨密度を高めていたにもかかわらず、骨折を繰り返してしまう人がいました。 この傾向は、特に、肥満や糖尿病・高脂血症・動脈硬化などの生活習慣病にかかっている人に多く見られました。 そのため、生活習慣病によってカルシウム以外の成分に悪影響が出ている可能性がある、と考えられるようになりました。 そして注目された成分が『コラーゲン』です。私たちの骨の成分は、硬骨の体積の50%(重量では20%)が コラーゲンで占められています。コラーゲンとは、血管や肌の真皮に多く含まれているたんぱく質の一種として 知られていますが、骨の構成成分としても重要な働きを担っています。 コラーゲンは、骨の中に網目状に張り巡らされていて、そこにカルシウムやリン(カルシウムと結びつく成分) など複数ある骨成分が結合した構造になっているのです。 このような骨の構造はコンクリートに建物に例えられます。つまり、コラーゲンが鉄筋、カルシウムやリンが コンクリートの役割を担っているのです。建物の場合、鉄筋がしっかりしていないと強度や耐震性が低く、 倒壊しやすくなります。同じように、骨の中にコラーゲンがしっかり張り巡らされていないと骨は丈夫にならないのです。、


◆コラーゲンは架橋によって連結している

骨の中にあるコラーゲンは、一つ一つがバラバラに並んでいるわけではなく、架橋によって連結しています。 この構造によって、骨は十分な強度やしなやかさを保つことができます。 ここで、一つ注意しなければならないことがあります。架橋には、秩序正しくコラーゲンを連結させる 「善玉架橋」と、無秩序にコラーゲンを連結させる「悪玉架橋」の2種類があります。 当然、骨の強度や弾力性は、善玉架橋が多いほど高くなります。 善玉架橋が多ければ、コラーゲンがしなやかになり、カルシウムなどの骨の成分も正しく結合されるため、 少しくらいの衝撃を受けても骨折を起こすことはありません。 逆に悪玉架橋が多くなると、骨は硬くなりすぎて弾力を失い、ちょっとした衝撃を受けただけで骨折を起こしやすくなるのです。


◆活性酸素が善玉架橋を悪玉架橋にする

骨のコラーゲンを秩序正しく連結する善玉架橋は、体内で生成されます。 ところが、加齢や喫煙、肥満などの生活習慣によって体内に活性酸素が増えると、善玉架橋の形成が行われなくなってしまいます。 しかも、そうなると悪玉架橋が活性酸素によって多量に作り出されるのです。 こうして悪玉架橋の割合が増えると、コラーゲンの衰えが著しくなり、カルシウムを十分にとっても骨折しやすくなってしまいます。 こうした、骨の成分を結合させる鉄筋の役割を果たすコラーゲンの強度を示す指標を、 「骨質」といいます。 2000年には、NIH(米国衛生研究所)が有識者による会議を開き、骨粗鬆症の定義の中に骨質の重要性を 初めて盛り込みました。この骨質の重要性は、日本の骨粗鬆症治療のガイドラインにも明記され、 骨粗鬆症に対し骨密度と骨質の2つに着目した治療を行う環境が整ってきています。

【関連項目】:『コラーゲン』


◆骨質を高めるにはビタミンB6・B12・葉酸が有効

さて、ある調査によると、骨質の低い人には、ある共通した特徴が見られることがわかっています。 一つは、悪玉アミノ酸の一種である「ホモシステイン」の血中濃度が高いことです。 ホモシステインの血中濃度が高くなると、体内で活性酸素が増え、悪玉架橋が多くなってしまいます。 もう一つの特徴は、ビタミンB群が不足していることです。 ビタミンB6は、善玉架橋を作るのに欠かせない栄養で、しかも、ビタミンB6が不足すると、 ホモシステインの血中濃度も高くなってしまいます。 なお、この二つの特徴は、細胞の老化を促す活性酸素が体内に多い状態ともいえます。

上記のことから、骨質を高めるには、ホモシステインの血中濃度を下げ、悪玉架橋が増えないようにすることが肝心です。 そのためには、ビタミンB群の中でも、前述のビタミンB6に加え、ビタミンB12葉酸を補うことが有効です。 ビタミンB12と葉酸を補うことでホモシステインの血中濃度が下がり、 骨質が高まる効果については、国内の大規模な試験でも明らかにされています。 その試験では、65歳以上の脳梗塞の患者約600人を①ビタミンB12と葉酸を投与するグループ、 ②偽薬(プラセボ)を投与するグループに分け、それぞれの経過を調べました。 そして、2年後に血液検査を行った結果、①のグループの血中ホモシステイン濃度が、②のグループよりも 低下していることが確認されました。しかも、①のグループの骨折率は、②のグループに比べて1/8であることもわかったのです。 ちなみに、骨密度は両グループとも同じように低下していました。 こうしたことから骨質が悪く骨折の危険性が高と判断される場合には、ビタミンB6・B12・葉酸の多く含まれる食品や サプリメントを摂ることが有効であると思われます。

ビタミンB6は、血管をしなやかにして動脈硬化を防いだり、神経の機能を安定させたりする作用のある栄養素です。 マグロの赤身・レバー・ニンニク・ピスタチオに豊富に含まれています。 ビタミンB12は、血液の成分である赤血球の生成を促したり、悪玉アミノ酸であるホモシステインの 血中濃度を下げたりする効果に優れています。サンマ・ニシンといった魚類やシジミ・アサリなどの貝類を摂ると、 効率よく補えます。葉酸は、人の細胞分裂を促す作用があり、ビタミンB12と同じように赤血球の生産にもかかわっています。 葉酸を補うには、ノリ・コンブといった海藻、モロヘイヤやパセリなどの野菜をと摂ることをお勧めします。 こうした食品を積極的に摂って、ビタミンB群をふだんからバランスよく補うようにしましょう。

【関連項目】:『ビタミン』


【ビール酵母がお勧め】

とはいえ、仕事が忙しい人や偏食しがちの人では、食事からビタミンB群を十分に補うのは難しいと思います。 そうした人はビタミンB群のサプリメントを利用するのもお勧めです。 また、ビタミンB6・B12・葉酸を補うためにお勧めなのが「ビール酵母」。 ビール酵母とは、ビールを作るときに用いる善玉の微生物のことです。 ビール酵母には、ビタミンB群が豊富で、もちろんB6・B12・葉酸もたっぷり含まれています。 しかも、カルシウムも入っているため、骨を強めるのにうってつけです。 このほか、ビール酵母には余分な塩分を排出するカリウムやインスリンの分泌を促すマグネシウムなどのミネラルも含まれているので、 骨質を低下させる生活習慣病の予防にも適しています。 ビール酵母はサプリメントとして、薬局や健康食品売り場・通信販売などで市販されています。 ビール酵母に大きな副作用はありませんが、ビールと同じように尿酸の血中濃度を高めるプリン体が多く含まれます。 そのため、痛風のある人は、ビール酵母を摂るのを控えた方がいいでしょう。