骨粗鬆症の予防・対策のための
『食生活』

骨粗鬆症の予防と対策では、一般的に「骨密度」を高めることが重要だといわれています。 骨密度とは、骨を構成するカルシウムなどのミネラルがどれだけ詰まっているかを表す指標です。 骨密度を骨粗鬆症の診断基準にする考え方は、1993年にWHO(世界保健機構)が提唱しました。 骨密度を高めるにはまず、食事でしっかりと「カルシウム」を補うことが肝心です。 食事からのカルシウム摂取量が少ないと、骨に蓄えられたカルシウムが溶け出して体内で消費され、 骨粗鬆症の進行を招くことになります。 厚生労働省の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では、食事からのカルシウム摂取目標は「1日800mg」 が望ましいとされています。しかしながら、厚生労働省の調査では、日本人のカルシウム摂取量の平均は約500mgで、 目標を大幅に下回っているのが現状で、慢性的なカルシウム不足に陥っています。 したがって、カルシウムを多く含む食品を毎日の食事に取り入れ、 十分なカルシウムを摂取することが骨粗鬆症の予防と対策には大切です。 また、カルシウム以外にも、骨の健康に欠かせない「ビタミンDやビタミンK」をしっかり摂ることも大切です。 ビタミンDは、カルシウムの吸収を高める成分で、主に魚に多く含まれています。 魚にはカルシウムも多く含まれているので、骨密度を高めるのに最適でしょう。 ちなみに、ミネラルの一種であるマグネシウムもカルシウムの吸収を高めるといわれています(下記参照)。


●食事のポイント

骨粗鬆症の予防と治療には、食事では、骨や筋肉を作るのに必要な栄養素を積極的に摂ることが大切です。 毎日の食事で、骨に必要な3つの栄養素をしっかり摂りましょう。

カルシウム
カルシウムは、骨の材料となる栄養素で、骨粗鬆症対策には、1日700~800mgのカルシウムを摂ることが推奨されています。 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ、スキムミルクなど)、 大豆製品(豆腐、納豆など)、野菜(小松菜、チンゲン菜、切り干し大根など)、 海藻類(ヒジキ、ワカメなど)、小魚(シラス干し、ちりめんじゃこ、シシャモ、干しエビなど)、卵などに豊富に含まれています。 なかでも乳製品は吸収率が最も高く、効率よくカルシウムを摂取できるため、毎日の食事に積極的に取り入れましょう。

ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの効率的な吸収を助ける働きをしています。 1日の推奨量は10~20μgですが、摂取量を計算して摂るのは難しいので、毎日の食事で積極的に摂ることが大切です。 魚(サケ、サンマ、マグロ、ウナギ、丸干しイワシ、シラス干しなど)、 きのこ類(エリンギ、マイタケ、キクラゲ、干しシイタケなど)に豊富に含まれています。 これらの食品を1日に1品は食事に加えるようにしましょう。 例えば、サケなら60g程度が目安です。

ビタミンK
ビタミンKは骨にカルシウムが沈着するのを助けます。1日の推奨量は250~300gです。 ビタミンDと同様に、意識して積極的に摂りましょう。 緑黄色野菜(小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、ニラ、青じそなど)、 納豆、ワカメなどに豊富に含まれています。1日3回、緑黄色野菜やワカメを使った食事を摂るようにしましょう。 納豆は1日1パック摂れば、ビタミンKを十分摂取することができます。
【関連項目】:『骨の強度を高めるビタミンKを摂るなら「納豆」』

ビタミンDとビタミンKは、ともに「あぶら」に溶けやすい「脂溶性ビタミン」であるため、あぶらも同時に摂れる料理にするのがお勧めです。 調理に油を使ったり、サラダのドレッシングにオリーブ油を使ったり、ツナの缶詰のあぶらを利用したりしましょう。


●たんぱく質も必要

これらの3つの栄養素に加え、積極的に摂りたいのが、 はたんぱく質です。 骨はコラーゲン線維と カルシウムなどのミネラルからできていますが、このコラーゲン線維の材料となるのがたんぱく質です。 また、筋肉を作るたんぱく質をしっかり摂ることは、転倒や骨折を防ぐうえでも重要です。 骨粗鬆症対策のための推奨量は示されていませんが、健康な成人の1日の摂取目安量である男性60g、女性50gを摂れば十分と考えられています。 たんぱく質は、肉、魚、卵、乳製品、 大豆・大豆製品などに多く含まれています。 1日3回の食事に加えるようにするとよいでしょう。


●骨粗鬆症に良い食材

▼カルシウムを多く含む食品
牛乳、チーズ、ヨーグルト、小魚、干しえび、豆腐、納豆、 小松菜などの青菜類
▼ビタミンDを多く含む食品
きのこ、さけ、うなぎ、しいたけ、かつお
▼ビタミンKを多く含む食品
納豆、 小松菜ブロッコリー、 ほうれん草、にら
【関連項目】
『骨粗鬆症予防対策に「カルシウム」』
『カルシウム吸収促進・骨再生促進に「カルシウム」』
『カルシウム』

●バランスと適正なエネルギー量も大切

高齢になると、食べ物の好みが変わったり、小食になるなどして、カルシウムやたんぱく質の摂取量が不足する傾向があります。 栄養のバランスと摂取量に注意して、骨を作るのによい食事を摂るようにしましょう。


●アルコールやリンの多量摂取に要注意

アルコールを多量に摂取すると、骨を作る働きが阻害されて、骨がもろくなりやすくなります。 ビールであれば350mLを2.5缶以上、日本酒の場合は1.5合以上、ワインなら350mL以上のお酒を毎日飲んでいると、 そのリスクが高まります。リンは食品添加物として一部の「加工食品」や「インスタント食品」「清涼飲料水」などに含まれています。 リンを摂り過ぎると、カルシウムが体外に排出されてしまったり、カルシウムの吸収が悪くなるので注意が必要です。