カルシウムの吸収促進・骨再生促進に
『ビタミンD』

ビタミンDは、骨の健康に欠かせないビタミンで、小腸でカルシウムが吸収されるのを促進したり、 休止している骨の細胞を活性化させ、骨の再生を促進する働きがあります。 またこのビタミンDに、筋力を増強する効果や骨折を予防する効果もあることが、さまざまな研究によって報告されています。 例えば、複数の大規模な研究の成果をまとめた報告では、薬を使うことで転倒の危険性が約20%減少するといわれています。 また、「活性型ビタミンD3製剤」を6ヶ月間使用することで脚力が大幅に向上することが報告されています。 また、骨折の発生頻度を比較すると、ビタミンDが足りているグループでは少なく、不足するグループでは高いことが報告されています。 ただし、薬などでビタミンDを摂取する場合は、「高カルシウム血症」に注意が必要です。 薬による治療は医師に相談し、正しく薬を使うことが必須です。
ビタミンDは、食べ物から取り入れられるほか、日光に当たることで体内で作られます。 また、肝臓や腎臓で活性化されてから働きます。


■丈夫な骨を作るには

丈夫な骨を作るには、カルシウムだけでなく、 ビタミンDが必要です。 ビタミンDは、肝臓と腎臓で代謝されて「活性化ビタミンD」という形に変化し、その力を発揮します。 活性化ビタミンDは、カルシウムが小腸で吸収されるのを助けたりしています。 さらに、骨を作る「骨芽細胞」の働きを促して、骨の形成を助ける働きもします。 このようにビタミンDは、骨の健康にとって不可欠な栄養素なので、骨がスカスカになって骨折しやすくなる 骨粗鬆症の予防や治療に役立ちます。 ビタミンDの不足を防ぐには、ビタミンDを多く含む食品を積極的に摂るとともに、適度に日光を浴びることが大切です。 顔と両手の甲を出し、夏は日陰で30分程度、冬なら1時間程度外出しましょう。 その際、日焼け止めは塗り過ぎないように注意します。


■高齢者は”痛くない骨折”に注意

骨が弱くなりがちな高齢者は、背骨が折れた状態になる 圧迫骨折に注意が必要です。 圧迫骨折は、寝たきりに繋がり、死亡のリスクも高めます。 尻餅を搗く程度の比較的弱い力が加わるだけでも起こるほか、転倒などをしなくても、体の重みによって背骨が徐々に押し潰されて起こることもあります。 このような場合、痛みはほとんどないため、圧迫骨折がある人の2/3が骨折していることに気付いていないといわれています。 しかし重症の場合は、激しく痛むこともあります。 圧迫骨折があると、背中や腰が曲がって高いところに手が届きにくくなるなど、日常生活に支障を来します。 背骨が前に曲がると、胸部が膨らみにくくなり、肺活量が減って息苦しさが生じたり、腹圧が高まって、胃酸が食道に逆流する 胃食道逆流症が起こることもあります。 圧迫骨折が疑われる場合は、早めに適切な治療を受けましょう。


●骨粗鬆症が起こりやすいのは

原因となる骨粗鬆症のリスク要因を知っておくことも大切です。骨粗鬆症が起こりやすいのは、次に挙げるような人です。

▼高齢者
食事の量が減りがちで、骨に必要な栄養素を吸収する力も低下するため、骨が弱りやすくなります。

▼閉経後の女性
女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、骨を壊す働きを抑える作用がありますが、閉経後はその分泌量が急激に減るため、骨密度が低下します。

▼特定の病気がある
糖尿病慢性腎臓病関節リウマチなどの病気があると、骨粗鬆症が起こりやすくなります。

▼家族の誰かに骨粗鬆症がある
特に母親が太腿の付け根を骨折したことのある人は、体質や食生活が似ている可能性が高いと考えられ、 将来、同じような骨折を起こす可能性が高くなります。

喫煙過度の飲酒をする運動不足
他にも若い頃に過度なダイエットをした人や痩せ型の人は、十分に強い骨が作られていない可能性があります。

■骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症と診断された場合は、骨折を防ぐため、積極的に治療する必要があります。 食事や運動など生活習慣の改善はもちろんですが、骨粗鬆症の治療には薬が欠かせません。 骨粗鬆症の治療に使われる薬は、次のように大きく2つに分けられます。

▼骨が壊されるのを抑える薬
もっとも一般的な薬は「ビスホスホネート薬」です。重症の人には「抗ランクル抗体薬」が用いられます。 比較的若い閉経後の女性には「SERM」が用いられる場合があります。

▼骨を作る働きを助ける薬
複数の圧迫骨折が起こっているなど重度の骨粗鬆症の場合には、「副甲状腺ホルモン薬」が使われます。 骨密度を高める作用が大きい「抗スクレロスチン抗体薬」も、重度の骨粗鬆症がある人に用いられます。 ビタミンDが不足している人には、「活性型ビタミンD薬」が用いられます。 ビタミンDと同じく健康な骨を作るために必要な ビタミンKが不足している人には、 「ビタミンK薬」が用いられます。

【関連項目】:『骨粗鬆症の薬』

◆自己判断で薬を止めない

骨粗鬆症は自覚症状が現れにくく、薬を使っていても「よくなった」という実感を得にくかったり、薬の飲みにくさを感じたりして、 自己判断で薬の服用をやめてしまう人がいます。 薬の効果や服用方法は、将来の骨折リスクなどについて、医師とよく話し合い、納得して治療を続けることが大切です。