降圧剤(薬)をやめる①「高齢者の降圧剤服用について」

高齢者高血圧は元気な証拠! 降圧剤を使うと、かえって死亡率が高まると判明!!


■薬で20mmHg下げると死亡率が10倍

加齢とともに、血圧は上がっていきます。これは、生理的に必然性がある現象です。 私たちの体は、心臓より上に位置する脳に、重力に逆らって血液を送り届ける必要があります。 しかし、年とともに血管の柔軟性がなくなるため、徐々に血圧が高くなるのです。 加齢によって血圧が上がるのは、自然現象で、元気な証拠といえるでしょう。 そうした元気な人たちの血圧を、薬で無理に引き下げたら、どうなるでしょうか。 そうすると、「脳梗塞」になるリスクが高まってしまうのです。

脳梗塞の危険性は、3年前(2009年)に発表された「無作為化対象比較試験(JATOS)」を見ても、示されています。 この研究は、65~85歳の、最大血圧が160mmHgを超える4418人に降圧剤を投与し、 140mmHg未満に大幅に血圧を下げる群(A群2212人)と、 140~159mmHgと多少血圧を下げる群(B群2206人)の二群に無作為に分けて、2年間の経過を追跡したものです。
結果、脳梗塞の発症数は、A群が36人、B群が30人、脳梗塞による死亡数はA群が2人、B群が0人でした。 総死亡数はA群が33人、B群が24人でした(総死亡数とは、すべての原因による死亡者数)。 薬で大幅に血圧を引き下げ、140mmHg以下に落としたA群の方が脳梗塞の発症例が多く、脳梗塞による死亡者も出ています。 総死亡者数の比較においても、B群の1.4倍も多い死者を、A群が出しています。

こうしたデータがあるにもかかわらず、降圧剤が奨められる血圧の目標値は、次々と引き下げられ、高血圧患者が増やされてきました。 顕著なのが、高齢者の最大血圧です。1987年には、厚生省によって、「180mmHg以上」とされていましたが、 2004年には、日本高血圧学会が「140mmHg以上」としました。私の最近の研究では、最大血圧180mmHg以上の人が、 薬で160mmHg未満に下げると、治療しなかった人に比べて、5~6年間での死亡率が10倍になっていることが判明しました。 高血圧が原因となる脳内出血(脳の内部で血管が破れて起こる脳卒中)が多かった昔は、降圧目標値に下げる理由も、 それなりにありました。何しろ、戦後すぐの1950年ころは、脳卒中の95%以上が脳内出血だったのです。 しかし、近年の栄養状態の良化により、脳内出血は18%に減り、脳梗塞が75%に増えました。 このように、高血圧による脳内出血の危険性は大幅に減少しているのに、降圧目標値が厳しくされてきたわけです。 70歳以上の人の降圧剤の服用率は、45%にも達しています。


■スローランニングで私も血圧を下げた

元気な高齢者が薬で大幅に血圧を下げると、脳梗塞の危険性が高まるのですから、 むやみに降圧剤を飲むのは健康維持のために最良の方法とは言えません。 血圧を下げたい人は、できるだけ薬に頼らずに、生活習慣を変えることで、目標範囲の血圧を目指すことが大切です。 減塩などに配慮して食生活を改善し、運動を心がけるなど、自分に合った方法を見つけましょう。

私自身、運動によって、血圧をコントロールしています。2002年に職場の健診で、 最大血圧が156mmHg、最小血圧が106mmHgという値が出たことがあります。 自宅で測ると、最大血圧が130mmHg、最小血圧が85mmHg程度でしたが、血圧を下げる努力を始めました。 いろいろスポーツを試した結果、6年前から、毎日昼食前に1時間の ウォーキングをするようにしました。 汗をかく運動なら末梢神経が拡張し、降圧剤と原理が同じなのですが、下げ過ぎて脳梗塞になる心配はありません。 3年前からはそれを、45分のスローランニングに変えています。 この結果、仕事中の血圧も下がり、最大血圧が130mmHg、最小血圧85mmHgまで落とすことができています。

ただし、薬をやめる際には、慎重に行ってください。 というのも、一気に薬をやめると、血圧が急上昇する恐れがあるからです。 季節は、冬は避け、暖かくなる春から夏の期間がいいでしょう。 複数の薬を飲んでいたら、まず一つの薬の量を減らし、間隔を延ばしていきます。 こうして一つ目の薬を切ることができたら、次の薬を減らすことに移行します。 栄養状態の良い現代人では、最大血圧が185mmHgまで血管が破れないとされています。 毎日、朝、昼、夕、入浴後、飲酒後、就寝前に血圧を測定して、途中で血圧が185mmHgを超えるとか、上昇傾向があったら、 減薬のテンポを遅くしてください。

2010年12月の『日経メディカル』で、日本高血圧学会の重鎮である荻原俊男氏が 「高齢者に対して、降圧剤を何剤も処方して降圧することにメリットがあるとは言えないだろう」、 「高齢者の降圧目標に関しては、安全性と医療経済の観点だけではなく、余命期間なども踏まえて、 総合的に検討する必要がある」と反省しています。