ギャバ【GABA:γ-アミノ酪酸】

高血圧になりやすい体質の一つに「神経虚弱体質」があります。 神経虚弱体質の人は、身に降りかかったストレスにうまく対応できずに、神経が過敏になって、 血管が収縮したり、心拍数が上がったり、動脈の血管壁が痛んだりして、血圧が一気に上がってしまうのです。 こうした神経虚弱体質の人にお勧めの栄養が『GABA(ギャバ)』です。 ギャバが、神経や脳において抑制性神経伝達物質に関与して気分を和らげる効果があることから、 ストレス状態を軽減したり、緩和する成分として摂取することが勧められています。 また、ギャバは、血圧降下に関与する成分としても知られ、 血圧が高めの方に適した特定保健用食品として市販されています。


■「ギャバ【GABA:γ-アミノ酪酸】」とは?

『γ-アミノ酪酸』というよりも、 『ギャバ』(GABA:ganma-amimobutyric acid) といったほうがなじみのある食品成分ですが、近年、お茶をはじめとする飲料、お菓子などの加工食品や、 発芽玄米などの食品にも含有される成分として、その名称をよく耳にするようになりました。 ギャバ(GABA)は、商品イメージからストレス緩和に関係したり、血圧降下に関与する成分などとして、 漠然と「健康によさそうな成分」と捉えられているようです。


■ギャバの構造と食品での分布

γ-アミノ酪酸(ギャバ)は「HOOC-CH2-CH2-CH2-CH2-NH2」という化学構造を持ち、4-アミノ酪酸とも呼ばれます。 同一分子内に塩基性のアミノ基と酸性のカルボキシル基をもつ両性電解質ですが、食品や生体内においては、 たんぱく質を構成するα-アミノ酸(アミノ基とカルボキシル基が同一の炭素原子に結合)とは異なり、 カルボキシル基から数えて4番目(7位)の炭素原子にアミノ基が結合している遊離型アミノ酸として存在します。

γ-アミノ酪酸(ギャバ)は動物性、植物性食品いずれの食品にも広く分布しており、 植物性食品、特に米、麦などの穀類、トマト、ナス、カボチャ、メロンなどのウリ科の野菜や果物、 その他のアスパラガスやミカンなどに多く含まれています。 発酵食品にも比較的多く含まれており、ある種の乳酸菌や紅麹菌の関与する発酵食品 (漬物、キムチ、ヨーグルト、など)にγ-アミノ酪酸(ギャバ)が多く含まれていることが確認されています。

通常の食品に含まれるγ-アミノ酪酸(ギャバ)は100g中数mgを超えない程度のものがほとんどですが、 最近では特殊な製造過程を用いて生産し、含有量が特別多く含まれるようにした食品があります。 発芽玄米、特殊な製造方法を施したお茶(通称ギャバロン茶)、前述の発酵食品を利用した特定保健用食品などです。 発芽玄米は、玄米を水につけてわずかに発芽させたもので、 発芽させることによってギャバの含有量を増加させたものです(約10~数十mg/100g)、お茶においては、収穫後、 茶葉を嫌気的な条件化に保存(窒素ガス中に封入する)することによって、茶葉中のグルタミン酸がギャバに代謝されることを 利用したもので、このような製造方法には通常の茶葉よりも多くギャバが含まれています(約170mg/100g乾物)。


■ギャバの生体での働き

ギャバは、生体内ではグルタミン酸の酵素的脱炭酸反応によって生合成されています。 ヒトの神経系では30種類以上の神経伝達物質が働いており、グリシン、グルタミン酸などのアミノ酸のほか、 さまざまなアミノ酸の脱炭酸生成物やその誘導体が存在します。たとえば、チロシンからはドーパミンや アドレナリン、ヒスチジン、トリプトファンからはヒスタミン、ドーパミンといった神経伝達物質が生成されます。 ギャバもグルタミン酸から生成される神経伝達物質のひとつです。

神経伝達物質には、興奮性神経伝達にかかるものと抑制性神経伝達にかかるものとが存在し、 前者にはドーパミンやグルタミン酸などが、後者の代表的な物質としてギャバが挙げられます。 脳内においてギャバはあまねく存在し、主要な抑制性神経伝達物質として機能していると考えられています。 一方、脳内や神経伝達物質におけるギャバの作用機序については研究が進んでいるものの、 これ以外の組織でのギャバの機能については、抹消神経組織における機能について一部が報告されているだけで、 現段階では不明な点が多いといえます。


■ギャバの経口摂取の効果と意義について

ギャバが、神経や脳において抑制性神経伝達物質に関与していることから、ストレス状態を軽減したり、 緩和する成分として摂取することが勧められています。 ギャバを含有する食品がストレス軽減食品として人気を集めており、これらの食品の販売量も急速に伸びているようです。

とはいえ、循環血液中に存在するギャバは血液脳関門を通ることができないため、 経口摂取されたギャバが直接抑制性神経伝達物質として働くことはないものと考えられます。 しかしながら、いくつかのヒトを対象とした臨床試験では、摂取によって、脳波のうちリラックスしているときに 出されるとされるα波の出現頻度が増加することや、心拍数や瞳孔の状態などを指標としたリラクゼーション効果や ストレス時に放出されるたんぱく質(クロモグラニンA)量の減少を確認したというデータも示されています。 ギャバの摂取によるこれらの効果について、はっきりとしたエビデンスが得られるには、 今後さらなる研究成果を待たなければならないものと考えられます。

一方、現在、ギャバを関与成分として含有する乳酸菌飲料やタブレットが特定保健用食品として市販されています。 これらのトクホは「血圧の高めの方に適する食品」として許可されています。 これらのトクホの作用機序については、血圧上昇に関与する交感神経の働きを抹消においてギャバが亢進抑制し、 血管の収縮に働くノルアドレナリンの分泌を抑えることによるものとされています。 じつは、この効果については学術的には詳細に解明されているわけではないのですが、許可の背景には、 1980年より農林水産省を中心としたギャバを多く含有するお茶 (ギャバロン茶)の開発と、 これに関連する血圧上昇抑制効果を検証する動物実験やヒト試験データの蓄積があったためであると考えられます。 ギャバロン茶の血圧上昇抑制作用もこれらのトクホと同様な機序にあるものと考えられます。

そのほかのギャバ経口摂取による健康増進や疾病予防に関する効果について、記憶や行動の改善、血中脂質低下作用、 アルコール代謝促進作用、肥満防止作用などが標榜される場合がありますが、これらの根拠は動物実験の域を出るものではなく、 抗うつや睡眠改善効果、更年期障害の改善、月経前症候群(PMS)の緩和、 注意欠損多動性障害(ADHD)の改善、痛みの緩和などについても根拠が明確なものではありません。 米国ナチュラルメディシン・データベースでは、これらの効果については科学的データが不十分であるとしています。

【関連項目】:『L-テアニン』 / 『ハイバーフォリン』


■ギャバの摂取上の注意点

ギャバは、食品に広く分布している成分であるため、日常的に効果的に摂取を促進するという一般食品ではありません。 むしろ今まで述べてきたような摂取効果を期待して、発芽玄米やギャバロン茶などの飲料、 ギャバを添加して高含有量とした菓子類、特定保健用食品を選択する場合が多いと思います。
これらの食品の摂取上の注意点としては、目安摂取量を遵守すべきで、多く摂取しても標榜する効果が 強く期待できるわけではなく、疾病が治癒するような効果は決してもたらさないという点でしょう。 ギャバは、「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品として判断しない成分本質」 リストに掲載されており、医薬品(頭部外傷後遺症にともなう諸症状の改善)としての適用は1日3g、 3分割服用となっていますので、食品から摂取される場合のギャバの量は、到底これを上回るものではなく、 過剰摂取の害はほとんどないものと考えられます。

ギャバそのものの過剰摂取の頻度は少ないと考えられますが、標榜する機能を期待するあまり、 それを含有する食品を過剰に摂取してしまい、エネルギー摂取量の増加や食事バランスを崩す問題などを 招いてしまうことに注意を向ける必要があると思われます。