メタボリックシンドロームと遺伝的な要因との関連
『メタボリックシンドローム』、すなわち内臓脂肪症候群には、 身体活動や食生活などの環境的な要因に加えて、遺伝的な要因も関連すると考えられます。
■体力と遺伝、メタボリックシンドロームとの関連
メタボリックシンドロームの予防には習慣的な有酸素性運動の実践が重要
「メタボリックシンドローム」は、全死亡リスクや心血管系疾患による早期死亡リスクを増加させることが
指摘されています。つまり、メタボリックシンドロームの予防や改善を図ることによって、
死亡リスクを減少させることができる、と考えられます。
一方、「有酸素性能力(心肺体力)」もまた全死亡リスクや心血管系疾患による
早期死亡リスクとの関連が指摘されており、高い有酸素性能力はメタボリックシンドロームの男性の
早期死亡リスクを軽減できるとの報告も見られます。
これは、有酸素性能力が高い人々は身体活動量も多い傾向があるためです。
有酸素性能力の有力な生理学的指標として最大酸素摂取量が知られています。 日本人の中高年男女を対象に、メタボリックシンドロームのリスクファクターと最大酸素摂取量との関係について 調べたある研究では、メタボリックシンドローム群の最大酸素摂取量は、健康な人々よりも統計的に有意に近い 低い値を示し、最大酸素摂取量によって体力を5段階に分類したところ、男性では最大酸素摂取量が35ml/kg/分、 女性では26ml/kg/分を下回ったときに、メタボリックシンドロームのリスクファクター保有数が増加した、 という報告がなされています。
メタボリックシンドローム、すなわち内臓脂肪症候群には、身体活動や食生活などの環境的な要因に加えて、 遺伝的な要因も関連します。近年は、ヒト肥満関連遺伝子マッピングの急速な発展により、2003年当時で 139種の肥満関連遺伝子がすでに挙げられており、そのうちBMIやウェスト周囲径などの指標を用いて、 統計学上肥満との間に有意な関連が認められるものとして、90種類の肥満関連遺伝子が確認されています。
前述の研究では、細胞の核内受容体型転写遺伝子(PPARγ)の遺伝子多型がメタボリックシンドロームの リスクファクター保有数と関連しているが、低体力者はこの遺伝子多型の有無に関わらず、 高体力者よりも肥満しており、メタボリックシンドロームのリスクファクターをたくさん保有していることが示唆され、 有酸素性能力を高いレベルに保つことは、太りやすい体質であるかどうかとは独立して、 メタボリックシンドロームのリスクを低下させるものと考えられるとされ、 このことから、メタボリックシンドロームの予防には習慣的な有酸素性運動の実践が重要であると推察される、 と報告されています。