メタボリックシンドローム対策の効果的なウォーキング方法

メタボリックシンドロームの予防・解消のためにウォーキングを行うなら、 ただ漫然と歩いているだけでは効果は小さいものになります。 ただ歩くだけでは、体の奥の方にある深部筋肉は、ほとんど鍛えられません。 メタボリックシンドロームの予防・解消にはこの深部筋肉を強めることが重要なのです。 深部筋肉の強化には、「腰回し歩き」が一番で、週2回でも鋭く効きます。


■メタボリックシンドローム対策に「ウォーキング」

生活習慣病対策に最適

近年「メタボリックシンドローム」という言葉が、流行語のようになっています。 メタボリックシンドロームは、内臓肥満、高脂血症(脂質異常症)、高血糖、高血圧といった生活習慣病の危険因子を 複数併せ持った状態のことをいいます。こうした危険因子がいくつも重なると、一つ一つの程度は軽くても、 将来、動脈硬化や糖尿病といった危険な生活習慣病を引き起こす可能性が急激に高まります。

このメタボリックシンドロームを撃退するには、運動を行って内臓脂肪を減らすことが大切で、 そのために有効な運動は、ジョギングやマラソン、サイクリングのような体内に酸素を取り入れながら行う 「有酸素運動」です。有酸素運動を行って体内に酸素をたっぷり取り込むと、酸素が内臓脂肪を効率よく燃やして エネルギーに変えてくれるのです。一方、短距離走や筋トレのような無酸素運動では、酸素を体内に取り込むことが できないので、内臓脂肪はうまく燃えません。有酸素運動の中でも、年齢を問わず誰でもすぐに始められ、 メタボリックシンドロームの予防・解消の効果も大変大きいと人気を集めているのが「ウォーキング」です。 2006年8月に内閣府が行った「体力・スポーツに関する世論調査」(全国の20歳以上、3000人を対象)によれば、 「この1年間に行った運動スポーツ」の第一位がウォーキングでした。 実際、ウォーキングはジョギングよりも脂肪燃焼の効率が高く、やれば、血管が若返る、血圧や血糖値が下がる、 コレステロールや中性脂肪が減るなど、さまざまな効果のあることが国内外の多くの研究・調査で明らかになっています。 また、ジョギングのような走る運動では、着地の際に、体重の3~4倍の負荷が片方の足にかかります。 しかし、ウォーキングでは、必ずどちらかの足が地面についているため、 負荷は体重の1.1倍~1.2倍。そのため、膝や足首などの故障が少ないのです。


■深部筋肉を鍛える

体の奥にある深部筋肉を強めるのが重要

普通のウォーキングでは、主にお尻や太もも、ふくらはぎなど、体の外についている筋肉が使われますが、 体の奥の方にある「深部筋肉」は、ほとんど鍛えられません。 メタボリックシンドロームの解消には、この深部筋肉を強めることが大変重要なのです。

深部筋肉には、代表的なもので「脊柱起立筋(背骨に沿って走る筋肉」)、 「大腰筋(背骨と太ももの骨をつないでいる筋肉)」、「腸骨筋(骨盤についている筋肉)」の3つがあります。 これらは、姿勢を保ち、日常の動作を陰で支える重要な役割を担っています。 中でも、大腰筋は、上半身と下半身をつなぎ、太ももを引き上げるときに働いて、立つ・歩くなどの動作を司る、 特に重要な筋肉です。こうしたことから、年を取ったり、体を動かさない生活を続けたりして深部筋肉が衰えると、 歩幅が小さくなり、ウォーキングもできなくなってしまいます。

深部筋肉は、ふだん私たちが意識することがないため、強めるのが非常に難しい筋肉です。 しかし、逆に深部筋肉を意識して強めれば、結果的に効率よく全身の筋肉を強めることにつながるのです。 そうすれば、筋肉量が増えて体が酸素を多く取り込めるようになり、基礎代謝も向上します。 その結果、内臓脂肪が大いに燃えるため、メタボリックシンドロームの予防・解消に役立つのです。

しかし、一生懸命ウォーキングをしても、それが自己流の歩き方であっては、深部筋肉をうまく強めることができず、 運動効果が上がらないばかりか、膝や腰を痛める場合も少なくありません。 そこで、深部筋肉を鍛える歩き方を以下に紹介します。


●ウォーキングには「腰回し歩き」

無理なく無駄のない歩き方

ウォーキングをしている人の歩き方をじっと見ていると、たいていの人は、左右の手足だけしか動かしていません。 こうした左右の手足だけを動かす歩き方では、体の表面の一部の筋肉が使われるだけで、深部筋肉はほとんど 使われません。そこで、深部筋肉も鍛えることができ、健康効果も大きい歩き方として勧められている歩き方が 「腰回し歩き」(正式名称はコア・ストレッチ・ウォーキング)です。 腰回し歩きは、競歩の歩き方をもとに考案されました。50km競歩では、フルマラソンよりも長い距離を できるだけ早く歩かなければなりません。そのためには、いかに無理なく、無駄なく歩くかを追求する必要があります。 こうした競歩の腰回し歩きの動作が短距離走・長距離走選手のトレーニングにも取り入れられています。

腰回し歩きは、みぞおちの胸椎(胸部に当たる背骨)から、腕や足を振り出すイメージを持って歩くのがポイントです。 こうすることで、自然に腰を回すことになり、体幹部(体の中心部)にある脊柱起立筋、大腰筋、腸骨筋などの 深部筋肉までしっかり使われます。また、深部筋肉を動かすと腹筋や背筋、大腿四頭筋など、 体の表面にある筋肉も総動員されるため、普通の歩き方よりも全身の筋肉を効率よく鍛えることができます。 中高年を対象として週2回開かれているある健康教室で、腰回し歩きの効果を調査したところ、 3ヵ月後の測定で、参加者の大腰筋の断面積が平均で10.1%も増大したという結果がでています。 腰回し歩きは、週に2回行えば大きな運動効果が得られます。腰回し歩きのやり方は次のようにします。