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サプリメントなどで目にする『システイン』は、 美白効果や二日酔いの緩和など、女性だけでなく男性にも興味深いアミノ酸といえるでしょう。 そのシステインと誘導体であるアセチルシステインは、米国では「NAC」という名称で一般的なサプリメントとして販売されています。
『システイン』は、アスコルビン酸(ビタミンC)とともに、抗酸化性の強い食品成分の一つであるといわれています。 肌の黒色色素であるメラニンができる前の物質、ドパキノンと反応してメラニンの生成を抑制するだけでなく、 メラニンの排出を促進します。また、皮膚では、直接メラニンを還元することによってメラニンを脱色し、 「シミ」に効くとされています。さらに肝臓の代謝酵素を活性化し、二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドの代謝を早めるといわれています。 サプリメントとして美白効果を期待される方や、タバコを吸う方、お酒を飲まれる方に勧められている成分です。
システインは、必須アミノ酸であるメチオニンと同様に、分子内に硫黄を含む含流アミノ酸に分類されます。 酸性状態では比較的安定していますが、中性やアルカリ性の状態では容易に酸化され、 2分子の「シスチン」になります。シスチンのSH基は、たんぱく質内や分子間にジスルフィド(S−S) 結合を作りやすい性質を持っています。例えば、この結合によって小麦粉を練って作る生地に見られる独特の粘弾性 の発現に大きく寄与します。いわゆる「ねかし」の間にS−S結合ができるため、粘弾性の増加が起きます。 医薬品やサプリメントで用いられているアセチルシステインは、システインをアセチル化した誘導体で、 特異なにおいと水に溶けやすい性質が特徴です。食品中のアミノ酸組成では、シスチン含有量で示されています。 小麦粉・そば・精白米に多く含まれ、穀類特に小麦製品に多く含まれています。 なお、ゼラチンにはトリプトファンと同じく、シスチンは全く含まれていません。
システインはメチオニンを基質として、アデノシルメチオニンを経て合成されます。 さらにシステインにグルタミン酸、グリシンが順次結合し、グルタチオンが合成されます。 グルタチオンは、ほとんどの哺乳類に存在するトリペプチドです。 抗酸化性を持つことから体内の過酸化物の還元などに働きます。 また、各種の酵素の作用により、体内の薬毒物と抱合体を形成し、体外へ排泄されるため、 生体防御において重要な働きをしています。
入手可能な最も信頼できる科学的エビデンスによって裏づけが行われている米国内のナチュラルメディシンデータベース (NMDB)に、システイン及びシスチンは、収載されていませんが、アセチルシステインは収載されています。 NMDBによれば、胸痛(狭心症)・慢性気管支炎の合併症予防・ホモシステイン値の低下・インフルエンザの 症状緩和に対して有効性レベル3「効くとは断言できないが、効能の可能性が科学的に示唆されているレベル」 と判断されています。アルコール性肝障害・環境汚染物質に対する防御・体内の水銀・鉛・カドミウムなどの 重金属の除去・花粉症に対しては、「科学的なデータが不十分」とされています。
アセチルシステインはサプリメントだけでなく、医薬品としても用いられています。 一つ目の用途としては、多くの感冒薬に含まれる解熱鎮痛成分の一つである、アセトアミノフェンは、 通常の容量で服用される場合には問題ありませんが、大量に摂取した場合、肝臓障害や腎臓障害をもたらす場合があります。 アセトアミノフェンは肝臓において、グルクロン酸や硫酸と抱合を受け、体外に排泄されます。 しかし、過剰量を服用した場合は、アセトアミノフェンが薬物代謝第一相酵素であるチトクロームP450(Cyp)2elによって 代謝され、N-アセチルP-ベンゾキノンイミン(NAPQI)という物質に代謝されます。 この物質は有毒であるため、グルタチオンS-トランスフェラーゼによってグルタチオンとともに抱合され、排泄されます。 過剰量の服用により、NAPQIの産生が多量であった場合、グルタチオンの生合成(補給)が追いつかずに枯渇すると、 NAPQIは生体高分子(肝臓のたんぱく質など)と結合し、細胞の壊死をもたらします。 アセチルシステインは、グルタチオンより吸収がよく、枯渇するグルタチオンの材料を効率よく補給することによって、 肝臓障害を予防するものです。二つ目の用途としては、気管支喘息・慢性気管支炎における去痰の薬として用いられる ものです。粘液成分に含まれるムコ多糖類のS−S基を解裂することにより粘度を低下させ、喀痰の喀出を 容易にします。
システインを積極的に摂りたい人は、穀類、特に小麦製品を摂るとよいでしょう。 アセチルしステインは処方薬等で使用する場合、ほとんどの成人で安全です。 しかし、サプリメントとしてとる場合は、大量摂取による副作用に注意する必要があります。 副作用としては、悪心・吐き気・嘔吐・下痢などがあります。 また、まれに失神・発熱・頭痛・眠気・低血圧・肝臓障害が生じる怖れのあることが知られています。 吸入により肺に入ると、口の腫れが起こる場合もあります。 妊婦にアセチルしステインを投与すると、胎盤を通過することがわかっています。 胎児や母体への危険性は低いと考えられていますが、アセトアミノフェン中毒など、限定された場合に限られるでしょう。 授乳婦への安全性に関する信頼性の高いデータは、現在までに得られていません。 したがって服用は避けるべきでしょう。