シトルリン

『L-シトルリン』とは、1930年にスイカ圧縮汁から単離されたアミノ酸の一種であり、 スイカの学名であるCitrullus vulgaris(シトラス・ブルガリス)にちなんでシトルリンと命名されました。 スイカだけでなくメロンやゴーヤー、ニンニクにも含まれます。 アミノ酸には、たんぱく質を構成する20種類のほかに、単独で体内を巡っている「遊離アミノ酸」があります。 シトルリンはこの遊離アミノ酸の一つで、体内で必要なときにすぐ働けることから、その作用が注目されています。 シトルリンの機能として、抗酸化作用やNO(一酸化窒素)産生促進作用が知られています。 また、シトルリンは、尿素の生合成回路に関与するアミノ酸です。 日本では、食薬区分改正により、2007年からシトルリンが食品成分として利用可能となりました。 健康食品素材としてのシトルリンは、NO産生を介した血管拡張作用、動脈硬化抑制作用、抗疲労・強壮作用といった訴求が行われています。


●期待される効能

血管拡張作用。動脈硬化抑制作用。抗酸化作用。抗疲労・強壮作用。血中アルギニン値の増加。

◆シトルリンの働き

シトルリンは、 若返りホルモンといわれる成長ホルモンの分泌を促す作用や有害なアンモニアを尿素に変えて排出するのを促す作用、 タンパク質同化、細胞の再生、免疫力向上、 循環器系と肝臓のサポート力を向上、エネルギー生成のサポートなどの働きが期待できるといわれています。 また近年になって抗酸化力も発見されました。 シトルリンが、活性酸素により、 遺伝子本体のDNAが傷つくのを効率よく防ぐことが明らかになりました。

体内で吸収されたシトルリンのうち、75%は腎臓で アルギニンに変わることがわかっています。 また、一酸化窒素の放出に深く関わっています。 アルギニンは、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種で、再びシトルリンに変換されるときに一酸化窒素を生成することも判明しました。 一酸化窒素には、 血管を拡張させて血流を促し、冷え性・手足のむくみ・血色を改善するほか、 LDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑えて 動脈硬化を防ぐ働きや疲労回復効果もあります。 アルギニンを摂取するよりも、シトルリンを摂取する方が、効率よく一酸化窒素を生み出すことができるといわれます。 アルギニンとシトルリンでは代謝の経路が異なり、シトルリンはただちに腎臓へ送られ、アルギニンとなって全身に行き渡るためです。 そのため、シトルリンを摂ると効率よく血流が改善して、 心筋梗塞脳梗塞の危険を減らすことができます。

シトルリンの血流改善効果を証明する試験結果も報告されています。 この試験では、45~65歳の男女36人に、血流の改善によって症状が変化すると考えられる体の冷えや手足のむくみ、血色などの状態の聞き取り調査が行われました。 そして、36人を2つのグループに分け、一方にはシトルリンを1日に800ミリグラム、 もう一方には同じ量の偽薬(体に無害な偽者の薬)をそれぞれ3週間摂ってもらったのです。 その結果、シトルリンを摂ったグループは、偽薬を摂ったグループに比べて、「冷え性」の改善の度合いが2倍も高いことがわかりました。 「手足のむくみ」「血色」においても、改善の度合いが偽薬のグループより約1.5倍高く、 シトルリンの血流改善効果が確認されています。

シトルリンは、2007年8月から食品に添加することが許可され、日本でもサプリメントが発売されています。 1日の摂取目安量は800ミリグラムですが、これはスイカ1/7個分、メロンだと1.3個分になります。 冷えやむくみが不安な人は、サプリメントの活用も考えるとよいでしょう。

◆男性の精力剤としてのシトルリンの効果

最近では、シトルリンが男性機能を向上させる成分として注目を集めています。 結論からお伝えするとシトルリンには精力向上に効果があります。 男性なら誰でも気になる性機能面でも、滋養強壮の面でも効果がある成分なのです。 鍵を握っているのは、シトルリンが持つ一酸化窒素の産出促進効果。 一酸化窒素には、血管を広げる作用があるため、血行促進に効果があります。 「シトルリンが体内で一酸化窒素を発生させ、そのおかげで血管が拡張する」のです。 つまり、血管を拡張することで勃起時のペニスのサイズは増大するので、 血管を拡張する作用があるシトルリンを摂取することによってペニスのサイズアップが可能になるのです。 シトルリンはヨーロッパでは血管拡張させるための医薬品として使用されています。


●作用メカニズム

シトルリンは、立体異性体(D体とL体)が存在します。自然界では、一般にL体(L-シトルリン)が認められます。 生体内では、遊離アミノ酸のL-シトルリンとして存在します(タンパク質の構成アミノ酸とはならない)。 生体内では、シトルリンは、アルギニンオルニチンとともに 尿素代謝におけるオルニチン回路の一員として重要です。 尿素はヒトにおける窒素異化の主な最終産物であり、アンモニア、二酸化炭素、アスパラギン酸から生成されます。 L-シトルリンは、L-アルギニンから生成される過程でNOを産生するため、NOにおける機能性が訴求されています。 経口摂取されたL-シトルリンは、アルギニノコハク酸を経て、L-アルギニンに転換され、さらにL-シトルリンに変換される際にNOを産生します。 NOは、細胞内情報伝達機能において作用する分子であり、血管平滑筋を弛緩させることにより血管拡張作用を示します。 神経伝達物質としての機能や免疫調節作用も有します。

●科学的根拠

シトルリンの経口投与における機能性を検討した臨床研究として、次のような報告が知られています。
欧米では、L-シトルリンによる抗疲労・強壮作用が訴求されており、アスリート向けのサプリメントとしても認知されています。 例えば、疲労感を訴える男性18名を対象に、1日あたり6gのシトルリン/リンゴ酸サプリメントを15日間経口投与した臨床試験では、 疲労感の軽減、運動時のATP(アデノシン三リン酸)産生の亢進、ホスホクレアチン(筋肉中のエネルギー源)回復の促進といった効果が認められたといいます。 なお、欧米市場では、リンゴ酸と組み合わせたシトルリン/リンゴ酸として製品化されています。 スイカ果汁がシトルリンの供給源となり、血中アルギニン値を上昇させるという予備的な臨床研究が報告されています。 この試験では、健康な被験者を対象に1日あたり0g(対照)、780g、1500gのスイカ果汁がクロスオーバー法にてそれぞれ3週間投与され、 シトルリンの摂取量は1日あたり1gあるいは2gとされました。 そして、低用量のスイカ果汁摂取によって空腹時の血漿アルギニン値が投与前に比べて12%増加しました。 また、高用量のスイカ果汁摂取では、投与前に比べてアルギニン値が22%、オルニチン値が18%増加しました。 この研究結果から、スイカ果汁の摂取は、シトルリンの安定した供給源となり、アルギニンへ効率的に転換されることが示唆されます。
その他、シトルリンの経口投与によって、血中シトルリン及びアルギニン値が増加し、術後の肺高血圧症のリスクが低下するという予備的な臨床研究が報告されています。 さらに、鎌状赤血球症の患者を対象にした予備的な臨床研究において、L-シトルリンを1日あたり0.1g/kg体重の用量にて投与した結果、 シトルリンによる症状改善効果が認められ、緩和療法としての可能性が示唆されています。 なお、シトルリンは皮膚の水分保持に関与する天然保湿因子(NMF)の1つとしても知られています。

●摂取方法

一般に、短期間では効果が期待できないので、継続して利用します。 日本では1日あたり800mg程度のL-シトルリン含有サプリメントが用いられています。 シトルリンとともにアルギニンを配合した製品もあります。

●注意事項

L-シトルリンは、スイカの他キュウリやニガウリ、メロン、冬瓜の可食部に見出されており、食経験に基づく安全性が想定されます。 適応となる病態に対して適切な品質の製品を使用する場合、現時点では特に問題は報告されていません。 臨床研究では、有害事象は知られていません。