コレステロールが招く動脈硬化
動脈の壁が厚くなったり、弾力を失って硬くなるのが「動脈硬化」です。 動脈硬化はいくつかのタイプに分類されますが、中でもコレステロールとの関わりが深いのが、 血管壁にコレステロールなどが溜まることで起こる「弱状動脈硬化」です。 本来、コレステロールは血管壁にはそれほど溜まるものではありません。 しかし、 高血圧や 糖尿病、 脂質異常症などの要因で「内皮細胞」が傷つくと、 コレステロールなどが血管壁に溜まりやすくなります。
■コレステロールと動脈硬化
コレステロールが大きく関わるのが「弱状動脈硬化」
「コレステロール」は、動脈硬化の1種である「弱状動脈硬化」に深く関わっています。 動脈硬化の最も重要な危険因子だということができます。
●弱状動脈硬化の起こり方
血管壁は、外側から「外膜」「中膜」「内膜」の3層構造をしています。 内膜は、血管壁の一番内側を覆っている内皮細胞と「内皮下層」に分けられます。 「リポたんぱく」の1種であるLDLが血液中で多くなると、内皮細胞が傷つき、内皮細胞の下にLDLが入り込みやすくなります。 入り込んだLDLは、そこで酸化されて、酸化LDLになります。 一方、白血球の1種である単球も、内皮細胞の表面にくっついて入り込み、そこで「マクロファージ」に変わります。 マクロファージは酸化LDLを集中的に取り込みますが、マクロファージにはこの取り込みを調節する仕組みが備わっていません。 際限なく取り込み続け、やがて大量のコレステロールを溜め込んだマクロファージは泡沫細胞となり、血管壁に沈着してアテローム(粥種)を作ります。 アテロームの表面は被膜で覆われていますが、コレステロールの多いアテロームでは被膜が薄く、破れやすくなります。 被膜が破れると、破れた部分を修復しようとして「血小板」が集まり、「血栓(血液の塊)」ができます。 この血栓が血管に詰まると、「心筋梗塞」などを引き起こします。
■動脈硬化の危険因子
高LDLコレステロール血症は最大危険因子の1つ
動脈硬化はさまざまな要因で起こります。下図に挙げた代表的な危険因子のうち、動脈硬化への関与が最もはっきりしているのが、
「脂質異常症」の中の「高LDLコレステロール血症」です。
高LDLコレステロール血症が動脈硬化を招き、LDLコレステロール値を下げる治療を行うと動脈硬化が抑制されることは、数々の研究によって証明されています。
体質的に血液中のLDLが増える「家族性高コレステロール血症」という病気についての研究は、その代表例です。
冠動脈疾患や脳卒中などの動脈硬化性疾患の予防のためには、
LDLコレステロール対策が非常に重要なのです。
動脈硬化は内皮細胞の傷をきっかけとして起こりますが、そこには炎症や免疫にかかわる細胞も関与しており、
動脈硬化を”炎症反応の1種”と捉えることができます。
そのため最近では、血液検査で体内の炎症の有無や程度を見るために用いられる「CRP(C反応たんぱく)」という物質のわずかな変動を測定することで、
冠動脈疾患の発症を予測できるのではないかと考えられるようになってきています。
■動脈硬化を進める真の悪玉”変性LDL"その他
動脈硬化を促進する真の悪玉は、通常のLDLが酸化や糖化などの変性を受けてできる「変性LDL」です。 変性LDLは、単球が血管壁の内皮細胞にくっつくのに必要な細胞接着分子の数を増やしたり、内皮細胞を傷害するなどの悪さをします。 酸化LDLは、「活性酸素」などによってLDLが酸化されたもので、変性LDLの代表的な存在です。 糖化LDLは、血液中の余分な「ブドウ糖」がLDLに結合したものです。 LDLが酸化されたり、糖化されたりすると、LDL受容体との結合の鍵となる「アポたんぱくB-100」に変性が生じます。 すると、アポたんぱくB-100はうまくLDL受容体と結合できず、細胞に取り込まれにくくなります。 LDLが小型化するほど変性が起こりやすくなるとされており、小型化の要因としては高中性脂肪症、 糖尿病、 高血圧などが指摘されています。