■乳癌のタイプの調べ方
患者さんの乳癌のがん細胞の遺伝子、あるいは遺伝子が作るたんぱく質を調べることによって(遺伝子検査)、乳癌のタイプがわかり、 治療方針を決めることができます。以前は、手術のときに摘出したがんの組織を調べる方法が一般的でしたが、 現在は、手術前に胸に針を刺して、病変の組織の一部を採って調べる針検診が主流です。 このがん細胞の遺伝子検査は、血液検査でBRCA遺伝子などを調べ、遺伝的に乳癌になりやすいかどうかを調べる検査とは別のものです。
●タイプ別の薬物治療
乳癌はその特徴により、ルミナルA(HER2陰性)、ルミナルB(HER2陰性)、ルミナルB(HER2陽性)、HER2陽性、トリプルネガティブ の5つのタイプに分けられます。ルミナルと名前がつく3つのタイプは、女性ホルモンのエストロゲンの刺激でがん細胞が増えるグループです。 乳癌の7~8割はこのグループに入り、エストロゲンを減らすホルモン剤が効果的です。 また、手術後にホルモン剤を使うと、再発や転移を半分ほどに減らすことができるといわれています。 ルミナルAとルミナルBの違いは、増殖能力です。ルミナルAは、増殖能力が低く、進行も穏やかなタイプで使う薬はホルモン剤だけでよいとされます。、 一方、ルミナルBは、増殖能力が高く、ホルモン剤に加えて抗がん剤も使います。
女性ホルモン以外に、過剰なHER2たんぱくによって増えるタイプがHER2陽性です。 ルミナルB(HER2陽性)は、女性ホルモンとHER2たんぱくの両方で増えます。 HER2たんぱくで増えるグループには、抗HER2薬という分子標的薬を使います。 乳癌の薬の中で、最近、特に進歩したのがこの抗HER2薬です。 また、このグループでは、治療効果をさらに高めるため、抗がん剤も一緒に使います。
女性ホルモンとHER2たんぱくのどちらのグループにも属さないトリプルネガティブと、女性ホルモンで増えるグループの中のルミナルBは、 がん細胞の増殖力が高いことがわかっています。活発に活動しているがん細胞には、抗がん剤が効果を発揮します。
このように、タイプに応じた薬が用いられるようになった結果、治療成績が向上しただけでなく、使う薬が絞られて、 患者さんの体への負担も軽減しています。
●乳癌のタイプ
がん細胞の増殖の仕方や増殖能力の高さによって分かれる
乳癌は、がん細胞の増殖の仕方により5つのタイプの分類されます。
- ▼ルミナルA(HER2陰性)
- エストロゲン(女性ホルモン)により、がんが増殖します。増殖能力が低いタイプです。
- ▼ルミナルB(HER2陰性)
- ルミナルA同様、エストロゲンにより増殖します。ルミナルAに比べて、増殖能力が高いタイプです。
- ▼ルミナルHER2(HER2陽性)
- ルミナルBのうち、過剰なHER2たんぱくによっても増えるタイプです。HER2たんぱくはがんの表面に存在し、 過剰にあるとがん細胞が増殖するよう指令を出します。
- ▼HER2陽性
- 過剰なHER2タンパクによってのみ増殖するタイプです。
- ▼トリプルネガティブ
- 増殖の原因がエストロゲンでもHER2たんぱくでもないタイプです。
乳癌のタイプは、切り取ったがんの組織を顕微鏡でみて調べます。