乳癌治療の進歩
センチネルリンパ節生検や術後の放射線治療など
■センチネルリンパ節生検
乳癌は、まずわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移することが多いと考えられています。 腋窩リンパ節への転移の有無が、他の臓器に転移するかどうかに大きくか関わっており、転移を避けるために、従来はほとんどの手術で、 このリンパ節を切除する腋窩リンパ節廓清が行われていました。 しかし、これを行うと、リンパ液がスムーズに流れなくなり、約1割の患者さんに、腕のむくみや痺れなどが起こります(リンパ浮腫)。 そこで、センチネルリンパ節生検という方法が開発されました。 手術の際、わきの下にある多くのリンパ節の中で、がん細胞を含むリンパ液が最初に流れ着くリンパ節(センチネルリンパ節)を調べ、 ここにがんがなければ、他のリンパ節にも転移がないと考え、腋窩リンパ節廓清を省略します。 最近は、センチネルリンパ節に転移があっても2mm以下、温存術の場合は転移が2ヵ所以下なら、腋窩リンパ節廓清を行う必要はないという方向に変わってきています。
■術後の放射線治療
乳房温存術を受けた場合は、取り残した可能性のあるがん細胞を死滅させるため、残した乳房に放射線を照射します。 乳房切除術を受けた場合でも、リンパ節転移が4ヵ所以上あれば、再発リスクが高いため、胸壁に放射線を照射します。 通常、放射線治療は、外来で「週5日照射を受け、2日休む」というサイクルで、5週間続けます。 主な副作用には、皮膚炎などがありますが、放射線の照射範囲を絞り込むなどの技術の進歩により、減少傾向にあります。 標準治療ではありませんが、患者さんの通院の負担を減らすため、1回の照射量を増やすことで回数を減らし、 ほぼ3週間で終える短期照射や、体の内側から照射し、約5日間の入院で終える組織内照射などの方法もあります。