あせも

汗をかく各時期には、子どもだけでなく大人や高齢者にも起こりやすくなる『あせも』。 悪化させないためには早めの対処が必要です。


■「あせも」とは?

大量の汗をかいてそのままにすることで起こる

たくさんの汗をかいて長時間そのままにしていると、汗を体外に排出する「エクリン汗腺」という管の出口を、垢や埃などが塞いでしまいます。 その結果、汗がエクリン汗腺から表皮の中に漏れ出てしまい、炎症が起こり、発疹ができて痒みが現れることがあります。 これが「あせも(汗疹)」です。 エクリン汗腺は、大人も子供も全身に200万~500万個あるといわれています。 体が小さい子供は大人と比べてエクリン汗腺の密度が高いため、あせもができやすく、より注意が必要です。
あせもには、3つのタイプがあります。

▼水晶様汗疹
直径1mm程度の発疹ができますが、赤みやかゆみは現れません。一般に数日間で自然に消失します。

▼紅色汗疹
最も多くみられるタイプのあせもです。水晶様汗疹より大きい、直径2~3mm程度の炎症を伴う赤い発疹ができ、強い痒みが現れます。 痒みを我慢できずに、あせもをひっかくなどしてできた傷から細菌が侵入すると、重症化して 伝染性膿痂疹(とびひ)が起こることがあります。

▼深在性汗疹
起こることは稀ですが、紅色汗疹を繰り返し、エクリン汗腺が破壊されると、汗を体外に排出できなくなります。 汗をかけなくなることで、体温を調節する機能が低下するために、暑い時期に 熱中症の症状を引き起こすことがあります。

あせもができる仕組み
伝染性膿痂疹(とびひ)
あせものタイプ


■あせもができやすい部位

▼子どもの場合
0~3歳くらいまでの乳幼児には、首回りや脇の下、肘の内側、脚の付け根、足首などにあせもができやすいので注意が必要です。 また、おむつをしている場合、おむつのギャザーの部分や、おむつが当たる背中や腰などの皮膚にもあせもができやすくなります。

▼大人の場合
肥満のある人は、皮下脂肪が多いため体内の熱が放出されにくく、 肥満のない人に比べ汗を多くかくため、あせもができやすくなります。 特に下腹部や脚の付け根、脇の下、首周りなど、皮膚と皮膚がこすれる部位は注意が必要です。 また、乳房が大きい女性では、乳房と乳房の間や、乳房の下に汗が溜まり、あせもができやすくなります。

▼高齢者の場合
高齢者の中には、暑い時期にエアコンを敬遠する人がいますが、汗をかいたままにしていると、あせもができやすくなります。 また、病気などで1日の大半を寝た状態で過ごす場合は、背中などにもあせもができやすくなります。

■あせもの予防

あせもを予防するためには、かいた汗はそのままにせず、こまめに拭きとって皮膚を清潔に保つことが基本です。 子どもは皮膚が薄いので、タオルなどでゴシゴシこすることは避け、皮膚を軽く抑えるようにして汗を吸い取りましょう。 日常生活での服装は、ゆったりとしていて渇きやすい木綿の生地などの服にしましょう。 また、子供の場合は、汗をかいたら、すぐに着替えさせます。 暑い時期は体温調節がしやすい半袖がよいでしょう。ただし、あせもが腕や肘の内側にできて自分でひっかいてしまう場合や、 伝染性膿痂疹のある場合は、患部をガーゼで覆ったり、長袖にすることが勧められます。 汗をかいたら早めに入浴したり、シャワーを浴びたりして、汗や垢、ほこりなどを洗い流します。 乳幼児の場合、入浴後にベビーパウダーを使うと、汗が吸い取られ、あせもの予防に役立ちます。 ただし使う量が多いと、ベビーパウダーが固まってエクリン汗腺の出口を塞いでしまうことがあるので、注意してください。


■あせもの治療

あせもができた場合は、皮膚を清潔に保ち、悪化を防ぎます。 そのうえで、あせも用の市販薬での対処が可能です。

◆あせも用の市販薬の正しい塗り方

あせもが広範囲にできている場合は、患部の数箇所に塗り薬を少量ずつ置き、全体に塗り広げていくと、むらなく塗ることができます。 薬を塗るときに、強くすり込むと皮膚を傷つけることがあるので、優しく塗り広げるようにしましょう。 手のひらや足の裏などの皮膚が厚い部位は、皮膚が柔らかくなっている入浴直後に塗ると、薬の吸収がよくなり、効果的です。 乳幼児は皮膚が薄く、環境の影響を受けやすいので、用法・用量を守ってこまめに薬を塗るようにします。

◆皮膚科の受診が必要な場合

市販薬を使っても、あせもを繰り返したり、なかなか治らなかったりする場合や、伝染性膿痂疹が起こった場合は、皮膚科を受診してください。 伝染性膿痂疹の治療では、患部の細菌の増殖を抑えるために、「抗菌薬」の塗り薬や飲み薬を使います。 患部の炎症が強い場合には「ステロイド薬」の塗り薬、痒みが強い場合には「抗ヒスタミン薬」の飲み薬を併用することがあります。


■その他

▼アトピー性皮膚炎がある場合
アトピー性皮膚炎の患者さんは、あせもができないようにするために、汗をかくこと自体を避ける傾向があります。 しかし、汗には体温調節など重要な役割があるので、汗をかくことを避けるのではなく、 汗をかいたらすぐに拭き取ったり、シャワーで洗い流すとよいでしょう。

▼あせも用の市販薬の選び方
局所麻酔薬の成分の作用によってかゆみを抑えたり、体液を吸着して患部を乾燥させたりするなど、配合する成分の違いによって、 あせも用の市販薬にはさまざまな種類があります。 あせもの症状や年齢などによって適した薬が異なるので、購入する際は、薬剤師に相談することが勧められます。

▼薬を塗るときの注意
薬を塗る場合は、手についた細菌などによる感染を避けるため、塗る前に必ず手を洗いましょう。 また、薬を塗った後は、手についた薬を拭き取るか、洗い流します。