■腎臓のホルモン、レニンが高血圧の引き金になる
腎臓病は気付かないうちに病状が進行し、
自覚症状が出た時には人工透析が必要になるほど悪化してしまう危険があります。
さらに恐ろしいことに、腎臓の機能が30~60%になってしまう軽度の腎臓病にかかっただけで、
腎不全などの腎臓そのものの病気よりも、脳卒中や心臓病になる危険の方が大きいということが最新の研究でわかってきました。
これに大きくかかわっているのが「レニン」という腎臓のホルモン。
腎臓の大きな働きは、血液を濾過して老廃物を尿として排出することです。
腎臓の濾過効率が落ちると、腎臓からレニンが分泌されます。レニンは全身を駆け巡り、全身の血管を収縮させて
血液の流れを速くします。その結果、腎臓に多くの血液を流し込むことができるようになり、それを濾過します。
そのおかげで、腎臓はそれまでと変わらない濾過レベルを維持できるというわけです。
腎臓の働きを助けてくれるレニンですが、腎臓の機能がさらに悪化するとどうなるのでしょうか?
たくさんにレニンが分泌され、血管を締め付けることで高血圧を招きます。
すると腎臓の血管は強い血流によって壊され、濾過機能はさらに低下。そこでさらにレニンが出動します。
こうなるとますます血管が収縮し、さらに高血圧が進み動脈硬化につながるという悪循環に陥ってしまうのです。
こうして脳卒中や心臓病につながる危険性が高くなるというわけです。
●腎臓を守るには食事が大切、予防と治療では方法は違う
このような恐ろしい腎臓病を予防するには、毎日の食事に気を配ることが大切です。
腎臓病を防ぐために気をつけたいのが、塩分、タンパク質、カリウムの摂り方です。
塩分を控え、ナトリウムの排出を促すカリウムや、カリウムと同様にナトリウムの排出を助け、
血管を強化する働きを持つタンパク質を十分に摂るようにします。
ただし、気をつけたいのが、腎臓病の「予防」をするための食事方法は、「治療」時のものとは内容が異なる
ということです。すでに腎臓病と診断されている場合、腎臓の濾過機能が落ちているため塩分を控えることは同じですが、
カリウム、タンパク質も同時に少なくする必要があります。
いずれにしても、患者さん一人一人の腎臓機能の状態によって、食事療法の詳細は異なってくるので、
専門医に相談することが必要不可欠です。
●血清クレアチニン値に注意、腎臓の機能低下は回復できる
腎臓はこれまで「不治の病」と考えられてきましたが、腎臓機能の低下が50%程度までの比較的早期の段階で発見して、
きちんとした治療を受ければ、回復する場合もあることがわかってきました。
ただし、自覚症状が乏しいため、対策としては定期的に検査をすることが最も重要です。
腎臓の機能を見るのが「血清クレアチニン値」です。これは腎臓の濾過能力を示す指標。
クレアチニンは腎臓から尿中に排出される老廃物のこと。腎臓機能が低下すると、十分排出されず血液中に増加するので、
それを見ることで腎機能の低下の度合いをみるのです。性別と年齢にもよりますが、要注意の目安は男性は1.2mg/dl以上、
女性は0.9mg/dl以上です。
クレアチニン値で、自分の腎機能が何%くらい働いているのかを計算する方法もあります。
社団法人日本腎臓学会にある「腎機能早見表」で調べることができます。
腎機能が50%以下の人は要注意です。すみやかに専門医にご相談ください。
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塩分 |
タンパク質 |
カリウム |
なぜ |
予防のため |
少なく |
十分 |
多く |
予防食の場合、塩分はできるだけ少なく、タンパク質は体を作るために必要、
カリウムは塩分の排出を助けるので多く摂ります。 |
治療のため |
少なく |
少なく |
少なく |
治療では、塩分は少なくというのは予防と同じですが、タンパク質は心臓に負担をかけるので減らします。
カリウムも腎臓の働きが弱くなっているのでスムーズに濾過できず、高カリウム血症になる危険もあります。 |
●その他
- ▼2つの検査で腎機能をチェック
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腎臓機能をチェックするには2つの方法があります。まず、血清クレアチニン検査。
クレアチニンとは腎臓から排出される老廃物のことで、検査によって腎臓の濾過機能レベルを知ることができます。
自治体や企業の健康診断の際などに相談すると、有料で検査を受けられることが多いようです。
もう一つは尿たんぱく検査です。これは薬局などで1000円程度で販売されている「たんぱく尿検査キット」
を利用して自分で調べることができます。月1回の検査で3か月続けて陽性の場合や、
重度のたんぱく尿が出た場合は、専門医に相談することが必要です。