変形性肩関節症

変形性肩関節症は、他の病気が原因で起こることもあります。 自然に治ることはないので、適切な治療を受けましょう。


■肩の軟骨が摩り減り、骨が変形する変形性肩関節症

肩関節は、上腕骨の骨頭が、肩甲骨の”受け皿に浅くはまっており、それぞれの表面が弾力のある「軟骨」に覆われています。 変形性肩関節症は、上腕骨と肩甲骨が接する部分の軟骨が摩り減ることで起こります。 骨同士が直接ぶつかるようになり、さらに骨が変形してしまうこともあります(下図参照)。 症状としては、痛みや関節の動かしづらさがあります。肩を動かすときにゴリゴリする感じがしたり、音が聞こえたりすることもあります。 変形性肩関節症は、膝や股関節の変形性関節症ほどは多くありません。 また、病気が起こっていても体重の負担がかからないため、症状が出にくい傾向があり、気付いていない場合もあります。

変形性肩関節症


◆変形性肩関節症の診断

変形性肩関節症の診断はエックス線検査で行われます。正常な肩関節の場合、骨と骨の間に隙間が見えますが、 変形性肩関節症では軟骨が摩り減っているため、隙間がなくなって見えます。


■加齢や肩の使い過ぎなどが関係している

変形性肩関節症には、原因が特定できない場合と、特定できる場合があります。 原因が特定できない場合、多くは「加齢」が関係しています。 肩を長年使っているうちに、軟骨がもろくなったり、摩り減ってしまうのです。 「関節が変形しやすい体質」のために起こる場合もあります。 この場合は指、肘、膝、股関節など、他の関節でも変形性関節症が起こることがあります。 原因が特定できる場合、スポーツや仕事による「肩の使い過ぎ」「肩の骨折や脱臼」があります。 また「腱板断裂」も、変形性肩関節症が起こる原因になることがあります。 腱板断裂があると上腕骨の骨頭が安定していないため、肩を動かすときに骨頭がずれて動き、軟骨がこすれやすくなるのです。 その他に、「偽痛風」でも変形性肩関節症が起こることがあります。 多量飲酒、ステロイド薬の大量投与などで起こる「上腕骨頭壊死」や、 「関節リウマチ」も原因となります。 ただし関節リウマチは近年薬による治療が飛躍的に進歩したため、変形性関節症の原因となるケースは減っています。

<<偽痛風>>

「痛風」は、 血液中に尿酸が増えることで尿酸の結晶が関節の内部に沈着し、関節に炎症が起こる病気です。 それに対して「偽痛風」では、ピロリン酸カルシウムという石灰の成分が結晶化し、関節に沈着して炎症が起こります。 痛風は足の親指の付け根や足首の関節に起こりやすいですいです。 偽痛風は膝関節に起こるのが代表的ですが、肩などほかの関節に起こることもあります。


■まずは薬と運動で症状を軽減させる

薬物療法では、非ステロイド抗炎症薬の、飲み薬や塗り薬、貼り薬が使われます。 夜間の痛みには、トラマドールやプレガバリンが効果的です。痛みが強い場合には、ステロイド薬やヒアルロン酸を患部に注射します。 また、2016年にデュロキセチンが使えるようになりました。 もともと鬱病の治療に使われていた薬ですが、痛みを抑える効果があることから、変形性関節症の治療にも使われるようになっています。 運動療法は、腱板断裂の運動療法と同じ運動を行います。痛みで緊張した肩の筋肉をほぐしたり、肩関節の動かせる範囲を広げたりする運動です。 肩関節は体重の負担がかからないため、ある程度変形が起こっていても、多くの人は薬と運動で日常生活に支障がなくなります。


■患者さんの状態に合わせて手術療法が選択される

関節の変形が進行し、薬物療法と運動療法だけでは改善しない場合には、肩関節の一部を人工のものに置き換える手術が検討されます。 手術には3つの方法があり、患者さんの年齢、痛みや骨の変形の程度などを考慮して選択されます。 いずれの場合も、大体2~3週間の入院が必要です。

▼人工骨頭置換術
上腕骨の骨頭だけを人工骨頭に置き換える手術です。上腕骨側の変形は進んでいても、肩甲骨側はあまり変形していない場合が対象となります。

▼人工関節置換術(従来型)
上腕骨の骨頭と肩甲骨の受け皿の両方を、そのままの構造で人工関節に置き換える手術です。 上腕骨側と肩甲骨側の両方で変形が進んでいる場合が対象となります。 ただし、腱板断裂が起こっている人には適しません。腱板断裂があると、関節が安定せず、腕を上げるときに骨頭が動いてしまい、 腕がうまく上がらなかったり、人工関節が早く緩んでしまったりするためです。

▼リバース型人工関節置換術
肩甲骨側に上腕骨の骨頭のようなボール状の部品を、上腕骨側に受け皿状の部品を取り付ける人工関節です。 他の手術では治療が困難な人で、原則として70歳以上の場合が対象となります。 ただし、この手術を行っている医療機関は限られています。

人工骨頭置換術
人工関節置換術(従来型)


◆”クリーニング”をする手術も

炎症が起こっている組織や、軟骨のかけらの”クリーニング”をする手術があります。 患部をきれいにして、痛みを軽減します(下図参照)。骨の変形が軽い人が対象となります。

クリーニング