β遮断薬

β遮断薬」と「α遮断薬」は、 心臓や血管の収縮にかかわる交感神経の刺激が伝わるのを遮ることで、血圧を下げる薬です。 β遮断薬は、心臓の筋肉に分布する「β受容体」に作用して、心拍出量を減らし、血圧を下げる薬で、 主に心臓に作用するため、「狭心症」などの心臓病を合併している人によく使われます。


■薬の作用

交感神経の刺激を抑えて、心拍出量を減らす

生物の細胞の表面には、「受容体」という、たんぱく質の一種が存在しています。 受容体は、そこに特定の物質が結合すると、細胞の内部でそれに対応した反応が起こるという、細胞への刺激を受け取る ”窓口”のような役割を果たしています。β遮断薬は、心臓の筋肉の細胞に数多く分布している「β受容体」 への刺激を遮る薬です。

●先回りしてβ受容体に結びつく

交感神経が興奮すると、その末端から「ノルアドレナリン」というホルモンが分泌され、β受容体に結合します。 すると、心臓の筋肉が強く収縮し、心拍数が増え、心拍出量が増加して血圧が上がります。 β遮断薬は、ノルアドレナリンよりも先にβ受容体に結合することによって、交感神経の刺激が心臓の筋肉に伝わるのを妨げ、 血圧を下げるのです。

交感神経はストレスの影響を受けやすいので、β遮断薬はストレスの多い人に向くとされ、 比較的若い人によく用いられます。β遮断薬には、心臓のβ受容体のみに作用するもの(β1選択性)、 心臓や血管を保護する作用があるものなど、さまざまなタイプがあり、患者が持つ合併症と、 薬の作用・副作用を考え合わせて選択されています。 「アテノロール」「フマル酸ビソプロロール」「酒石酸メトプロロール」などのβ1選択性の薬がよく用いられています。



■副作用・使用上の注意

心拍数の多い人に適している。除脈を引き起こすこともある

β遮断薬は、心臓の働きが活発な、比較的若い年代の人に適した薬です。「狭心症」がある人や、 「心筋梗塞」を起こしたことのある人にも適しています。 多くの場合、β遮断薬は、「カルシウム拮抗薬」「利尿薬」などと併用されます。 ただし、最初から使われることは少なく、”薬をいくつか組み合わせて使った後、さらに1種類追加する”というような場合に 用いられるのが一般的です。

●副作用

最も注意を要するのが、脈が非常に遅くなる「除脈」です。 そのため、脈が遅くなるタイプの不整脈(徐脈や房室ブロック)がある患者さんには、β遮断薬は使われません。 β受容体は、肺の気管支炎や冠動脈にも多く分布しています。気管支にあるβ受容体が遮断されると、気管支が収縮し、 「ぜんそく発作」や「呼吸困難」が誘発される危険性があります。 したがって、「気管支ぜんそく」がある人にも適していません。また、狭心症の中でも、冠動脈が痙攣して起こる 「冠攣縮性狭心症」がある人は、症状の悪化を来すので使用できません。 β遮断薬を使っていると、糖尿病でインスリン補充療法を受けている人などが、「低血糖」に陥っても、 症状が現れにくく、発見が遅れてしまうことがあります。 また、高脂血症の悪化、活力の低下などが起こることがあります。