生活習慣病予防と運動習慣(ウォーキング)

高血圧症・高血糖症・高脂血症などの生活習慣病予防の基本は「食事」と「運動」です。 中でも「歩くこと(ウォーキング)」が最も手軽で有効な方法であるとされています。


■運動習慣

生活習慣病は運動不足病

「生活習慣病」は、遺伝因子・環境因子・生活習慣因子の3つが絡み合って作り出される病気です。 遺伝因子と環境因子は、本人がいくら努力しても根本的な解決は困難ですが、 食事、運動、休養、喫煙、飲酒などにかかわる生活習慣因子は、本人の努力しだいでなくしていくことが可能です。 特に心臓病や脳卒中などの原因となる高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などは 「運動習慣」によって改善されるので、「運動不足病」ともいえます。 生活習慣を変えることで、病気の危険を確実に減らすことができるのです。


■歩くことから始めよう

運動習慣として重要なのは運動量と質の「適度さ」です。 競技に勝つためのスポーツ選手のトレーニングとは違い、中高年者が生活習慣病予防のために行う運動は、 肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病などといった症状を改善し、それによって動脈硬化を防ぐのが目的です。 汗水垂らして歯を食いしばる激しい運動ではなく、全身、特に大きな筋肉が含まれる下肢を用いた リズミカルで長続きする運動が適しています。そのためには特別な運動種目を行うのではなく、 日常生活の中で、できるだけ「歩く」ことから始めましょう。


■歩くほど遠のく生活習慣病

男女あわせて6,800人を対象に、歩行数と健康状態の関係を調べたところ、 1日の歩行数が2,000歩未満の群は男女とも血圧が高めなのに対し、 1万歩以上歩いている群は、明らかに血圧が低く抑えられていました。

1日あたりの歩行数 平均血圧(最高血圧/最低血圧)
1万歩以上 男性 134/82
女性 120/78
2000歩未満 男性 144/94
女性 145/82

また、動脈硬化を防ぐ作用があるといわれる善玉コレステロール(HDLコレステロール)の値も、 歩行数2,000歩未満の群が平均よりも5%も少ないのに対して、1万歩以上歩く群では7%も多いという結果が出ています。 つまり歩いている人ほど血圧が正常に抑えられ、善玉コレステロールが多いので心筋梗塞や狭心症になりにくい、 ということがはっきりしたわけです。


■日本人の1日あたりの平均歩数は6,600歩

国民栄養調査の対象となった6,800人の1日あたりの平均歩数は約6,600歩でした。

30代~40代 7,500
50代 6,900
60代 6,000
70代以上 3,700

年齢別の平均歩数は働き盛りの30~40代でも7,500歩、キロ数にして約5kmにしかなりません。
職業や生活内容による歩行数の違いを見ても、目標とする1万歩以上を歩いている人は意外に少ないことがわかりました。

サラリーマン(マイカー通勤) 3,620
サラリーマン(電車通勤) 8,280
サラリーマン(休日在宅) 2,850
主婦(外出なし) 2,570
主婦(買い物など) 5,680
主婦(スポーツ好き) 16,380
大学生(電車通学) 6,670
大学生(近くに下宿) 4,320
大学生(アルバイト有り) 12,410
大学生(帰省中) 1,420
高齢者(朝夕散歩) 5,680


■1日にどれくらい歩けばよいか

さまざまな調査・研究から、生活習慣病予防には最低でも週に700kcal、 できれば週に2,000kcal程度を消費する運動を継続することが望ましいといわれます。 週に2,000kcalとすると、1日約300kcalを消費する計算です。 これをもとに歩行距離と歩数を割り出すと、成人男性の場合で1日に10km、歩数は14,000歩になります。 14,000歩が理想ですが区切りよく「1万歩」を目標にしましょう。

●あなたの正確な歩数は?

1km走れば、体重と同じ値のkcalを消費するといわれます。 つまり体重70kgの人が1km走ると70kcalを消費するのです。歩行に消費するカロリーは走行時の約半分。 これをもとに、1日300kcalを消費するのに必要な歩数は以下の計算になります。

(300÷(体重÷2))×100,000÷歩幅

大切なのは歩くことを特別なことと考えないで、日常生活のの中でこまめに取り入れていくことです。 ちょっとした工夫でもっとたくさん歩くことができるようになります。