サルコペニア肥満による高血圧対策の運動「大腰筋スクワット」

筋肉が減少すると血圧が上がります。 近年、サルコペニア肥満による高血圧(筋肉量減少による高血圧)が増えています。 『大腰筋スクワット』で腰を鍛えると、高い血圧を下げることが可能です。


■サルコペニア肥満

寝たきりも招く「サルコペニア肥満」

皆さんは「サルコペニア肥満」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。 まだ一般的にはあまり浸透していない言葉ですが、今後あなたがサルコペニア肥満になるリスクもあります。 いや、既にもうなっているかもしれません。そもそもサルコペニア肥満とはどんな肥満でしょうか。 「サルコ」は筋肉、「ペニア」は減少の意味で、サルコペニア肥満とは、加齢に伴って、 筋肉の量、機能が低下する現象のことをいいます。 サルコペニアとされる条件は、筋肉率(体重に占める筋肉の重さの割合)で、男性なら27.3%未満、女性なら22.0%未満。 この筋肉率は、体組成計で測ることができます。 一方、肥満は、身長から見た体格の割合を表す「BMI(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]」で計測し、 BMIが25以上の人が肥満。つまり、サルコペニア肥満は、この2つの条件が該当する人ということになります。

私たちの筋肉量は、20歳代がピークで、それ以降は年に1%ずつ減少していくともいわれています。 30歳代までは目立たないものの、40歳代から見られ、60歳代、70歳代となると、サルコペニア肥満の人が急速に増えることが、 調査で判明しています。
では、サルコペニア肥満になると、どんな問題があるのでしょうか。

一つには、サルコペニア肥満が寝たきりの引き金となっていることが大きな問題です。 筋肉は私たちの基礎代謝(安静時に消費するエネルギー)のために重要な働きをしている組織で、 加齢によって筋肉量が減ると、基礎代謝が低下し始めます。 すると、若いころと同じものを食べ、同じ運動をしていても、基礎代謝の低下によって安静時の消費エネルギー量が少なくなります。 この結果、年とともにどうしても太りやすくなります。 こうした傾向が年々加速し、60歳代を過ぎると、筋肉量の低下に伴って、転びやすくなってきます。 そして、転倒→骨折→寝たきりになるというパターンがとても多いのです。

また、もう一つ注目しておきたいのが、「高血圧」の問題です。 そもそも肥満体型になると、糖尿病などの生活習慣病になりやすく、心筋梗塞や脳卒中になる危険も高まることが知られています。 サルコぺニア肥満になると、高血圧になるリスクも高まることがわかってきました。 ある研究で、40~80歳の男女529名を対象とした調査を行いました。 この調査によって、普通の体型の人が高血圧になるリスクを1としたとき、男性のサルコペニア肥満の人は、 高血圧になるリスクが1.7倍高いことがわかりました。 一方、女性の場合、さらにリスクが高く、女性のサルコペニア肥満の人は、 普通の人より2.3倍も高血圧になるリスクが高いことがわかったのです。

それでは、サルコペニア肥満を予防、あるいは改善するためにはどんなことをすればよいのでしょうか。
このために勧められるのが、適切な筋力トレーニングです。 高齢者には、よくジョギングやウォーキングなどの有酸素運動が勧められています。 もちろん、有酸素運動が健康のために、あるいは高血圧改善のためによいことは間違いありません。 しかし、サルコペニア肥満を改善するためには、「筋力トレーニング」が必要です。 実は有酸素運動だけでは、筋肉は鍛えられないわかっています。