入浴健康法『コリ、疲れをとる』

体が温まり、全身の血行がよくなると、コリがほぐれて疲れが軽減されます。 入浴しながら簡単なストレッチングを行ったり、手軽な手浴や足浴を愉しんで疲れを解消しましょう。


■入浴の疲労回復効果

1日の終わりに、衣服を脱ぎ湯に浸かると、全身の疲労が溶け出すように心地よく感じられます。 忙しく暮らす現代人にとって、疲労回復は重要な課題です。疲労回復についての調査では、 「アニマルセラピー」「マッサージ」などさまざまな疲労回復法が挙げられていますが、 そのなかでも、最も多くの人が行っている疲労回復法が「入浴」です。 実際に、正しい方法で入浴すると、筋肉の疲れやコリが軽減されます。 正しい入浴法を知り、ちょっとした工夫を加えて、入浴の疲労回復効果を高めましょう。


■血行が悪くなると、筋肉がこる

農作業など強い動作の場合も、パソコンを使うなどの軽い動作の場合も、長時間同じ動きを 繰り返していると、筋肉(筋肉の線維)が収縮し張ってきます。すると、筋肉の周囲に 張り巡らされた血管が引き伸ばされたり、血管が筋肉に挟まれて圧迫されたりして、 血液の流れが悪くなります。その結果、十分な酸素や栄養が筋肉に供給されにくくなり、 老廃物が運び出されなくなったりします。 脳は、このような状態を「筋肉が緊張し、疲れている」と感じます。 脳が筋肉の緊張や疲労を感じると、脳はさらに筋肉を緊張・収縮させるように働いてしまいます。 その結果、一層血行が悪くなり、疲労やコリが増すという悪循環に陥ります。


■温めて血行を促進する

悪循環に陥った筋肉も、温められて血行がよくなると、老廃物が排出され、酸素や栄養が 十分行き渡るようになり、緊張が緩んで疲労や肩こりが改善します。 入浴は、血行をよくする有効な手段の1つです。入浴によって筋肉の緊張状態がどのように 変化するかを「筋電図」を使って調べたところ、湯に入った3分後には、筋肉の緊張が取れる ことがわかりました。 また、湯に浸かると浮力が生じ、体にかかる負担が軽くなることも疲労回復効果に役立っていると考えられます。 熱い湯に入ると血管が収縮するため、血行はよくなりません。 血行をよくするには、ぬるめの湯に入ることが大切です。 また、「手浴」「足浴」など、体の一部を湯につけるだけでも、全身の血行が促進されます。


■入浴のタイミング

入浴のタイミングを間違えると、疲労回復の効果を十分に得られないことがあります。 運動のすぐ後に入浴すると、皮膚の末梢血管に血液が流れ、筋肉に流れる血液が少なくなります。 すると、酸素や栄養が十分に供給されず、老廃物が運び出されないため、筋肉の疲労回復が 損なわれます。そのため、運動後は30分~1時間ほどあけてから、入浴するようにします。 食後も消化のために血液が胃腸に流れます。食後すぐに入浴すると、運動のすぐ後の入浴と 同様の理由で消化が悪くなりますから、やはり時間をあけるようにしましょう。 運動や食事前の入浴も避けたほうがよいでしょう。


■疲れ・コリをとる入浴法

次のような工夫で、疲れやコリを改善しましょう。 なお、疲労回復の場合でも「ぬるめの湯、半身浴、10~15分」などの安全のためのポイントを 守ることが大切です。

▼無理のない姿勢で湯に浸かる
体の力を抜いて、ゆったりと湯に浸かる。重りの付いている浴槽用の椅子を浴槽に沈め、 それに腰掛けて湯に浸かるのもよい。

▼肩にタオルをかける
半身浴で肩が寒いと感じる場合は、湯につけたタオルを肩にかける。

▼首や肩のストレッチング
体が温まってきたら、簡単なストレッチングで首や肩の周囲の筋肉を伸ばす。 温まった状態で行うと、筋肉を伸ばしやすく、より緊張がほぐれる。 ひとつの動きに5秒間ほどかけ、息を吐きながらゆっくりと軽く伸ばす。 回数は2回から多くても4回程度。無理に頑張ると気分が悪くなることがあるので 注意しましょう。

▼マッサージシャワーをかける
肩や腰にマッサージシャワーをかけると、より筋肉がほぐれる。 体を洗った石鹸を流すときに行うと、湯の節約になる。 なお、シャワーの湯の温度は浴槽と同じにする。 (市販のマッサージシャワー用のシャワーヘッドを利用すると、”打たせ湯” のようにシャワーの湯が出て、マッサージするように肩や腰を刺激する)

●首や肩のストレッチング

  • 首を前後左右にゆっくりと、首を痛めないように倒す。
  • 両方の手を組み、手のひらを外側に向け、腕を胸の前に伸ばす。
  • 前に伸ばした腕を反対側の腕で体のほうに引き寄せる。

■手浴・足浴で手軽に疲労回復

手や足の末梢神経を温めると、温まった血液が1分間ほどで全身を巡るため、全身が温まります。 片方の手や足を温めるだけでも同様の効果が得られます。 体が冷えたと感じたとき、風邪の引き始めなどで入浴を控えたいとき、入浴する時間がないときには、 手浴や足浴で手軽に温まるのがおすすめです。

  • 深めの洗面器やバケツなどの容器を用意する。
  • 40℃を超えないぬるめの湯を入れる。入浴剤を入れるのもよい。
  • ポットに40℃よりやや温かい湯を入れ、そばに置いておく。 湯が冷めてきたときに、ポットの湯をつぎ足す。
  • 時間は10~15分。
  • 椅子に座りリラックスして手や足を湯につける。 テレビを見たり、音楽を聴きながらでもよい。