植物ステロール

植物ステロールは、広く植物に含まれている成分であり、 コレステロールと化学構造上の基本骨格が類似した植物成分です。 植物ステロールは、コレステロールの吸収抑制により血液中の総コレステロールとLDL(悪玉)コレステロール値を下げる働きがあり、 動脈硬化性疾患に伴う生活習慣病を予防する成分として注目されています。 動物実験では動脈硬化の抑制作用も示されました。 なお、コレステロールは動物性食品に含まれる成分です。


■植物ステロールについて

▼期待される効果
総コレステロール値低下作用。動脈硬化の予防と改善。前立腺肥大症の排尿障害改善。

▼作用メカニズム
植物ステロールと呼ばれる成分は、40種類以上が知られています。 それらの中では、β-シトステロールが最も多く50%を占め、次いで33%がカンペステロール、2~5%がシグマステロールです。 植物ステロールのコレステロール低下作用は、動物性食品に含まれる コレステロールの吸収を抑制することによります。 食べ物から摂取されたコレステロールは、十二指腸で水溶性の微細粒子に取り込まれ、小腸で吸収されます。 植物ステロールは、化学構造がコレステロールと似ているため、十二指腸でコレステロールの代わりに微細粒子に取り込まれ、 コレステロールは吸収されることなくそのまま排泄されてしまいます。 その結果、コレステロールの吸収量が抑制されて、血中コレステロールが低下します。 植物ステロールには、体内でのコレステロールの再吸収過程を阻害することでコレステロールの排泄を促進し、 結果的に血液中のコレステロールを少なくする作用もあります。 さらに、植物ステロールが、小腸粘膜上皮におけるコレステロールのエステル化を阻害するというメカニズムも考えられています。

▼科学的根拠
臨床試験では、総コレステロール値が10%、LDLコレステロール値が13%程度低下するとの報告があります。 ただし、HDL(善玉)コレステロールや中性脂肪への影響はありません。 また、脂質異常症患者のコレステロール値改善に、 植物ステロール含有ジアシルグリセロールが有効とする研究があります。 動脈硬化のモデル動物を用いた研究では、4週間の投与でコレステロール値が低下、 18週間の投与後には著名な動脈硬化の抑制効果が認められました。 さらに、前立腺肥大症における 排尿障害の改善に植物ステロールが有効であったという臨床試験も報告されています。

▼摂取方法
1日当たり1000mg程度を食事と一緒に摂ります。日本では高コレステロール血症に対する医薬品としても利用されており、1200mgが標準的な処方です。 コレステロール値を改善するサプリメントとして、「紅麹」「大豆イソフラボン」との併用も可能です。 なお、一般的な食事からの摂取量は、1日当たり100~300mgとされています。

▼注意事項
下痢や便秘、腹部膨満感(お腹が張った感じ)、おならが出やすくなるなどの胃腸症状を認めることがあります。 ただし、一般的には、通常の食材に由来する成分であり、特に問題となる健康被害や副作用は知られていません。 脂溶性ビタミン類の吸収を抑える作用があるので、併用する際には、時間を空けて摂取します。 臨床報告として、β-カロテン(ビタミンAの前駆体) の吸収抑制が知られています。また、脂質異常症などで治療中の場合は、念のため主治医に相談の上、使用するようにします。 日本では、植物ステロールを有効成分とする製品が、特定保健用食品(トクホ)として認可されており、 「コレステロールが高めの方に適した食品」といった表示例があります。

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