大腸癌が進行したら・・・

進行した『大腸癌』の治療では、治療法の進歩により、治療の幅が広がってきています。 諦めずに治療を受け続けることが大切です。


■大腸癌の進行

大腸壁の最も内側の粘膜に発生し、大腸壁の外側に向かって広がる

『大腸癌』は、大腸壁の最も内側の粘膜に発生し、大腸壁の外側に向かって広がっていきます。進行するにしたがって、 リンパ管を通じてリンパ節に転移したり、血管を通じて肺や肝臓などの臓器や腹膜などへ転移し、さらに全身へと広がっていきます。

●大腸癌のステージ

大腸癌の進行度を示す「ステージ」は、癌の深さ、リンパ節転移の有無によって、ステージ0~Ⅳに分けられます。

▼ステージ0
癌が最も内側の粘膜内にとどまっていて、転移のない状態。

▼ステージⅠ
癌が粘膜下層や固有筋層にとどまっていて、転移のない状態。

▼ステージⅡ
癌が固有筋層を超えていて、転移のない状態。

▼ステージⅢ
癌の深さに関わらず、リンパ節転移がある状態。

▼ステージⅣ
癌の深さに関わらず、他の臓器や腹膜への転移がある状態。

●診療の変化

進行した癌に対する治療は、進歩しています。特に次の3点が変わり、治療成績も上がってきています。
①ステージに合わせて治療する。
②手術と、抗癌剤などを使った化学療法の組み合わせ方が進歩している。
③事前に分子標的薬の効果を遺伝子検査でチェックできるようになった。
ここでは、進行した「結腸癌」の治療を中心に解説します。


■治療

手術・化学療法を中心に、ステージに合わせた治療を行う

大腸癌の主な治療には、「内視鏡治療」「手術」、抗癌剤などの薬を使った「化学療法」などがあります。

●大腸癌のステージ

▼ステージ0の場合
内視鏡治療が中心になります。

▼ステージⅠの場合
癌が粘膜下層に達すると、転移のリスクが出てくるため、多くの場合、手術が選択されます。

▼ステージⅡの場合
手術で、癌を含めた腸管の切除と、リンパ節の切除(リンパ節廓清)を行います、 手術後に補助的に化学療法(術後補助化学療法)を行う場合もあります。

▼ステージⅢの場合
ステージⅡと同じ手術を行った後、再発予防の目的で補助的に化学療法が行われます。

▼ステージⅣの場合
治療には手術と化学療法があり、患者さんの症状によって、手術を先に行うか、化学療法を先に行うか、両者を併用するか などを考慮します。

●手術

癌を含めて腸管を切除し、同時に、転移していたり、転移の可能性のあるリンパ節も切除するのが基本です。 一例として、癌を中心に、口側、肛門側の腸管を約10cmずつ切除し、残した腸管を縫合し、つなぎます(腸管吻合)。 リンパ節廓清の範囲は、癌の進行具合によって異なります。腸管に近いリンパ節のみを切除する場合もあれば、 血管の根元のリンパ節まで扇状に広く切除する場合もあります。


●化学療法

化学療法は、主に、手術後に再発予防の目的のほか、手術では癌をすべて取り除けない場合や再発した場合に行われます (直腸癌の場合もおおむね同様)。化学療法だけで大腸癌を完全になくすことはできません。
薬の使い方は、①②③を組み合わせるのが一般的です。
①抗癌剤のフルオロウラシルと、その効果を高めるレボホリナートカルシウムを併用。
②オキサリプラチンとイリノテカンという抗癌剤のどちらか。
「分子標的薬」のベバシズマブ、セフキシマブ、パニツムマブのどれか。
中でも分子標的薬は、癌細胞の増殖にかかわる特定の部分だけを狙い撃ちにする薬で、高い効果を示します。 最近は、癌細胞の遺伝子のタイプを調べることにより、どの分子標的薬の効果が期待できるかを事前に知ることができるようになり、 癌に合った治療を行えるようになっています。調べるのは「KRAS」という、癌細胞の増殖に関わる遺伝子の タイプで、変異のない「KRAS野生型」と、変異のある「KRAS変異型」があります。 KRAS野生型の場合は、3つの分子標的薬すべての効果が期待でき、KRAS変異型の場合は、ベバシズマブの効果が期待できます。

化学療法の進歩と共に、手術と化学療法の組み合わせ方についても研究が進んでいます。 例えば肝臓や肺に転移があって、以前なら手術できなかった場合でも、現在は化学療法を行うことによって癌が縮小し、 手術が可能になるなど、これまでは治療をあきらめていたような進行した大腸癌でも、治療が行えるようになってきています。 担当医とよく相談して、自分の病状に合った治療を受け続けることが大切です。