女性の尿漏れの治療
尿漏れの治療は、尿漏れのタイプに応じて、運動療法や薬物療法などで対処します。
■腹圧性尿失禁の治療
骨盤底筋の緩みを訓練で改善する
まず行われるのは「運動療法」です。骨盤底筋が緩むことが原因なので、それを鍛える「骨盤底筋訓練」が行われます。 重症度が軽度から中程度の人であれば、この訓練で3~4割の人が改善します。 通常、3ヶ月以内に効果が現れます。骨盤底筋訓練の効果を引き出すためには、正しいところに力を入れて行うことが大切です。 正しく行っても改善しない場合には、「手術」が行われます。尿道をテープでつり上げるもので、 有効性の高い手術です。体への負担も軽く、短時間で終わります。
●骨盤底筋訓練
膣や肛門を締めている感覚をつかむために、最初は仰向けに寝て行いましょう。 体に余分な力を入れずにできるようになると、座った姿勢や立った姿勢でも行えるようになります。 朝起きた時や寝る前など、日常生活の中に骨盤底筋訓練を取り入れるとよいでしょう。 排尿している途中で尿を止めることができたり、入浴の際に膣に指を入れて骨盤底筋を収縮させ、 膣が閉まることを確認できれば、正しく訓練できていることになります。 骨盤底筋訓練は、切迫性尿失禁の改善にも効果があると考えられています。 下着が濡れる程度の中等度までの腹圧性尿失禁であれば、骨盤底筋訓練をすることで、60%程度の人が改善するといわれています。 正しい方法で3ヵ月間続けても効果がない場合は、泌尿器科や婦人科を受診してください。
●手術
尿道と膣の間にメッシュのテープを通して尿道を支えます。腹圧がかかって尿道が開きそうになった時に、テープが尿道を圧迫して、尿漏れを防ぎます。 手術法には、主にTVTスリング手術とTOTスリング手術があります。 体への負担が少なく、有効性が高いとされる手術で、重度の場合や生活の質を改善したい人の選択肢となります。
■切迫性尿失禁(過活動膀胱)の治療
行動療法と薬物療法を組み合わせて行う
「薬物療法」と「行動療法」があり、両者を組み合わせて治療するのが効果的だとされています。 薬物療法では、「抗コリン薬」や「β受容体作動薬」が使われます。 抗コリン薬は、膀胱の収縮を弱める動きのある薬です。そのため、薬が効きすぎると排尿時の収縮も弱くなり、 残尿が起こることがあります。口の渇きや便秘といった副作用もあります。 β腫瘍体作動薬は、膀胱の筋肉を緩める作用のある薬です。尿がたまっても、膀胱内の圧力が高まらないようにして 尿失禁を防ぎます。抗コリン薬のように、口の渇きや便秘といった副作用がなく、その点で使いやすい薬です。 行動療法には、「生活指導」と「膀胱訓練」があります。
●行動療法
医師の指導の下に行う生活指導(生活上の注意)と膀胱訓練があります。 生活指導では、利尿作用のあるカフェインやアルコールを含む飲み物を控えるようにします。 水分を摂り過ぎないことも大切です。また、便秘によって直腸が拡張すると、膀胱が刺激されやすくなるため、食物繊維を摂るなどして便秘を予防します。 膀胱訓練は、尿意を感じた時に排尿を我慢する時間を徐々に延ばしていくことで、膀胱にためる尿の量を増やす訓練です。 日本人の女性の1回の排尿量は、一般的に200~400mlです。150mlを下回る場合は、膀胱訓練を行うことで、膀胱にためられる尿量を増やすことが期待できます。
- ▼生活指導
- 過活動膀胱の原因となっていることを、生活から除くように指導します。 例えば、水分を摂り過ぎていたり、カフェインを多く含む飲み物をたくさん飲んでいたりする場合には、 それを減らすようにします。また、危険因子である肥満や便秘を避け、禁煙します。
- ▼膀胱訓練
- 尿意を感じたときにすぐに排尿せず、我慢することで、膀胱にためられる尿の量を増やします。 最初は5分程度の短い時間から始め、徐々に我慢する時間を延ばしていきます。 それによって少しずつ自信をつけ、排尿を自分でコントロールできるようにするのです。
行動療法では、「排尿日誌」をつけると、自分の排尿の状況がよくわかり、治療に役立ちます。 膀胱訓練でどのくらい尿をためられたかを把握することもできます。 それらを知ることが自身につながっていくのです。
●薬物療法
主に抗コリン薬やβ2作動薬を使います。最初にβ2作動薬を使うことが多くなっています。