男性の尿漏れの治療

男性の尿漏れの治療は、原因に応じて薬物療法や手術、行動療法などを行います。


■前立腺肥大症の治療

まず薬物療法が行われ、症状が改善しない場合や、症状が重い場合は手術が検討されます。

▼薬物療法
主にα1遮断薬PDES阻害薬、5α還元酵素阻害薬などが使われます。 α1遮断薬とPDE5阻害薬は、前立腺の筋肉の緊張を取り除くことで、尿を流れやすくする作用があります。 5α還元酵素阻害薬は、肥大化した前立腺を小さくする作用があります。

▼手術
手術では、電気メスやレーザーで肥大した前立腺を切除したり、くりぬいたりして取り除きます。 新しい手術法に、光選択的前立腺レーザー治療(PVP)があります。

■前立腺肥大症以外の過活動膀胱の治療

治療の基本は、薬物療法行動療法になります。

▼薬物療法
主に膀胱の収縮を抑える抗コリン薬と、膀胱の筋肉を緩めて尿を溜めやすくするβ3作動薬を使用します。 抗コリン薬では、口の渇きや便秘などの副作用が現れることがあります。 β3作動薬では、副作用が発生する頻度は非常に少ないです。

▼行動療法
医師の指導の下に行う膀胱訓練生活指導(生活上の注意)があります。 膀胱訓練は、尿意を感じた時に排尿を我慢することで、膀胱に溜める尿の量を増やす訓練です。 我慢する時間を5分間、10分間と徐々に伸ばしていくことで、尿意切迫感や膀胱の過敏な収縮が抑制され、尿漏れを防ぎます。 生活指導では、利尿作用のあるカフェインやアルコールを含む飲み物を控え、水分を摂り過ぎないようにします。 また、便秘をしていると膀胱が刺激を受けやすくなるので、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂るなどして、便秘にならないよう心がけましょう。

▼減量
肥満のある尿失禁の患者さんが、6ヵ月間の食事療法による減量を行ったところ、尿失禁の減少がみられたという報告があります。

■排尿後尿滴下の対策

排尿後尿滴下は、現在のところ有効な治療法は確立されていませんが、簡単にできる対処法があります。 排尿のあと、陰嚢の裏の会陰部から陰茎の裏の方向に数本の指で押して、尿道内に残っている尿を押し出します。 排尿後尿滴下が起こりやすい人は、試してみることをお勧めします。
また、最近では、男性用の尿とりパッドや尿漏れパンツなどもあります。 尿の吸収量に応じて様々な種類があり、市販されているので、利用してみるのもよいでしょう。

■前立腺肥大症の薬物療法

まずは薬物療法を行い、尿の通りを改善させる

前立腺肥大症の治療では、基本的にはまず薬物療法が行われます。使われるのは次のような薬です。

▼α1遮断薬
前立腺や尿道括約筋の緊張を取り除き、尿の通りをよくします。前立腺肥大症の治療で初めに選択する薬です。 副作用は軽く、立ちくらみや、まれに射精障害が起こります。

▼5α還元酵素阻害薬
前立腺肥大に関わっている男性ホルモンの産生を抑える作用があります。 それによって、症状を緩和したり、肥大した前立腺を小さくしたりします。 α1遮断薬で効果がなかった人や、前立腺がかなり大きい人に用いられます。 副作用としては、まれにですが、勃起障害や乳房が張るといった症状が現れることがあります。

▼抗コリン薬
急に尿意を催す尿意切迫感や、頻尿などの症状が強い場合に用いられます。 膀胱の過敏な状態を制御する働きがあります。副作用として、口の渇きや便秘が現れることがあります。 また、膀胱の収縮が弱まることで残尿が増える可能性があるため、尿の出をよくするほかの薬と併用します。

これらの薬のほか、生薬や漢方薬が使用されることもあります。


■手術が検討される場合

前立腺肥大症の多くは、薬物療法でよくなります。ただ、3ヶ月以上薬物療法を行ってもよくならない場合や、 もともと症状が重く、薬物療法では十分な効果が得られない場合には手術が検討されます。 多くの手術療法がありますが、最も広く行われているのは「TURF」です。 入院期間は1週間程度で、日本全国の泌尿器科で受けることができます。 レーザーを用いて内腺をくり抜く「HoLEP」という方法もあります。 入院期間が短く、体への負担が少ないのが特徴です。この治療を行っている医療機関はまだあまり多くはありません(2014年.1月現在) 治療を希望する場合は、担当医に相談しましょう。

▼TURF
手術用の内視鏡である切除鏡を尿道から挿入し、先端についたループ状の電気メスで、肥大した内腺を削り取ります。 削った内腺は、一旦膀胱に入れてかき出します。

▼HoLEP
内視鏡とレーザーファイバーを尿道から挿入し、内腺と外腺の間にレーザーを照射して、内腺をくり抜くように切除します。 それを膀胱内で砕き、尿道から吸引します。