尿がちょっと漏れる
尿がちょっと漏れる”ちょい漏れ”。男女問わず悩んでいる人は多くいますが、日常生活の少しの工夫で、症状を改善できます。
■尿道に残った尿が漏れる男性の”ちょい漏れ”
男性の尿の”ちょい漏れ”は、専門的には『排尿後尿滴下』といいます。 排尿したとき、尿を出し切ったつもりでも、尿道内の球部尿道に尿が残っていて、あとからジワジワと少量の尿が漏れ出てしまうのです。
●球部尿道に尿が残る原因
主に2つの原因が考えられます。1つは、尿道を締める筋肉が衰えることです。 球部尿道の周囲には球海綿体筋があり、この筋肉の収縮によって、球部尿道から尿を出し切ります。 加齢などによって球部海綿体筋の収縮力が低下してしまうと、球部尿道の尿を出し切れなくなり、そのまま尿が残ってしまうようになるのです。 もう1つの原因は、排尿の勢いが低下することです。排尿の勢いが弱くなると、どうしても尿が球部尿道に残りやすくなります。 この最大の原因は前立腺肥大症です。 前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道をぐるりと取り囲んでいます。 前立腺肥大症は加齢に伴い前立腺の組織が肥大化する病気で、これが起こると尿道を圧迫してしまいます。 そのため、排尿の勢いが弱くなってしまうのです。
●排尿後や日常生活での工夫で尿漏れを防ぐ
男性の”ちょい漏れ”を防ぐために、「ミルキング」という方法があります。 排尿後、球部尿道に残った尿を絞り出す方法です。 そのほかに、ゆったりとしたサイズのズボンをはくようにするとよいでしょう。 きついズボンで圧迫していてしまうと、尿道の周囲の臓器の血流が障害されるためです。 同様の理由から、座った姿勢を長時間続けることもできるだけ避けましょう。
■骨盤を支える筋肉が緩んで漏れる女性の”ちょい漏れ”
女性の”ちょい漏れ”は、咳やくしゃみをしたとき、重いものを持ち上げた時など、お腹に力が加わったときに起こります。 専門的には腹圧性尿失禁といいます。 骨盤内にある膀胱、子宮、直腸は、骨盤底筋という筋肉に支えられています。 この筋肉が緩んでいると、膀胱が背中側に倒れてしまいます。その状態でお腹から膀胱に圧力がかかると、尿道が開きやすくなり、尿漏れが起こります。 骨盤底筋が緩む最大の原因は、妊娠と出産です。妊娠中は胎児の重さによって骨盤底筋が緩みます。 出産時には、胎児が通過するときに骨盤底筋が傷つき、それが緩みに繋がります。その他、肥満や加齢で骨盤底筋が緩むこともあります。 また、腹圧性尿失禁に「切迫性尿失禁(急な尿意を感じ、トイレまで我慢できずに尿が漏れる。過活動膀胱が主な原因)」が合併するケースもあります。 骨盤底筋が緩むことで起こる「膀胱瘤」や「子宮脱」などでも、”ちょい漏れ”が起こることがあります。
●骨盤底筋を鍛えて”ちょい漏れ”を防ぐ
緩んだ骨盤底筋を鍛えるため骨盤底筋のトレーニングを行います。 大切なのは、正しく動かすことと、毎日行うことです。 最初は無理のない範囲で行い、慣れてきたら回数を増やしたり、時間を延ばしていきます。 若い人なら2~3週間ほどで、高齢者でも3ヵ月間くらい続ければ症状が改善してきます。 なお、骨盤底筋トレーニングは、女性の腹圧性尿失禁だけでなく、男性の排尿後滴下の改善にも効果があることがわかっています。