■基本的な心配事



■基本的な心配事

高血圧は、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」の異名を取りますが、特別な自覚症状のないまま進行し、 やがて突然死を招く命取りの病気の引き金となるからです。 高血圧による突然死は、主に心臓病(心筋梗塞・狭心症など)や脳卒中(脳梗塞・脳出血など)として起こります。 日本人の死因のトップは男女ともに癌で、2位は心臓病、3位は脳卒中となっています。 このうち心臓病と脳卒中を足すと、死因の約1/3に相当する3割弱を占めているのです。 他の生活習慣病に比べても、高血圧が重大な病気を招きやすいことは確かです。 例えば、高血圧による脳梗塞の発症率は、糖尿病に比べて約2.5倍高いと報告されています。 そこで、高血圧の治療が重要になります。血圧を適正水準に保っていれば、心臓病や脳卒中の発症を防いで健康長寿の実現につながるというわけです。

では、高血圧が心臓病や脳卒中を引き起こすのはなぜでしょうか? それは、血圧の高い状態が続くことで動脈硬化が進んだり、心臓に過度の負担がかかったりするからです。 動脈硬化とは、血管の内壁が厚く硬くなって、しなやかさを失ってしまう状態のこと。 高血圧になると動脈硬化が進行し、高血圧がますます悪化するという悪循環に陥ります。 太い動脈のみならず末梢血管まで硬くなったら、血流が滞って血液が体の隅々に行き届かなくなってしまいます。 そこで、心臓が無理に強い力で血液を送り出すようになり、その結果、血圧が上昇してしまうのです。

さらに、動脈硬化の進んだ血管の内側にアテローム(コレステロールが堆積した瘤)ができ、 それが破れて血栓が発生することがあります。 この血栓で血管が詰まると、心筋梗塞や脳梗塞が起こってしまいます。 もっとも、医療の進歩によって心臓病や脳卒中になっても、命が助かることが増えてきました。 むしろ、最近は病気の後遺症によるQOL(生活の質)の低下が問題視されています。 特に、脳梗塞の後遺症は半身不随や手足の麻痺、認知症、言語障害、寝たきりなど多岐にわたり、 生活面で介護が必要になることも少なくありません。 また、QOLの低下についていうと、高血圧が目の病気(眼底出血・高血圧網膜症など)や腎臓病(腎不全など)、 合併症としてさまざまな病気や症状を招くことも問題です。 眼底出血や網膜症が起こると極端な視力低下や失明を招くことがあり、 腎不全になったら生涯にわたって人工透析を受けなければならなくなります。

突然死を防ぐことはもちろんですが、高血圧の合併症を防いで健康に暮らすためにも、 血圧を適切にコントロールすることが大事なのです。