■高齢者にとって高血圧は老化現象であって病気ではないと言えませんか?

【答】

実は、20年前まで高齢者の高血圧は老化現象と見なされており、たとえ上の血圧(最大血圧)が高くても積極的な治療は 行われませんでした。しかし、高血圧が突然死を招く重い病気の危険因子であることが、次第に指摘されるようになったのです。 その契機となったのが「SHEP試験」。これは大規模な臨床試験で、高齢者の血圧と健康状態の関係が調べられました。 その結果、高齢者が高血圧をきちんと下げると、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)の発病を抑えることがわかったのです。 日本では、九州大学医学部が50年以上にわたって行っている「久山町研究」が、高血圧治療の転機となりました。 これは福岡県久山町における脳出血の発症率が欧米の12倍以上も高かったことから、真相を探るために始まった疫学試験です。

その結果によると、最大血圧が140ミリ以上になると脳卒中が起こりやすくなることが判明しています。 そして、この具体的な数字を根拠にしつつ、日本で高血圧治療のガイドラインが作成されたのです。 さらに、高血圧に加えて糖尿病を合併していると、心臓病や脳卒中となる危険性が格段に大きくなります。 そうしたことから、これ医者であっても高血圧を病気としてとらえ、深刻な事態を防ぐために、積極的に治療が勧められるのです。