高血糖症(糖尿病)の治療と予防のための食事療法「中高年の食事」

高血糖症(糖尿病)の治療と予防のための食事療法は、基本的に同じです。 「毎朝体重を量る習慣をつける」「まとめ食いはダメ、1日3食をバランスよく」「脂質の摂り過ぎに注意」が基本的食事療法法になります。


■治療と予防の食事

治療と予防の食事は基本的に同じ

糖尿病にはいくつかのタイプがありますが、日本人の9割以上は「2型糖尿病」です。 これは遺伝的な体質に加え、食事や運動など毎日の生活習慣が大きくかかわって発症します。 日本糖尿病療養指導士の山田勝義氏は次のように言っています。

「治療と予防の食事は基本的には同じです。食事に注意するだけでかなりの予防効果があるのに、面倒くさがって、 なかなか取り組めない人が多いですね。ポイントだけ押さえて、気軽に始めてみてください。」


■毎朝、体重を量る習慣を

糖尿病を防ぐために、まず気を付けたいのは「肥満」です。太りすぎるとインスリンの働きが悪くなり、 血液中から細胞内へ糖分が取り込まれにくくなります。実際には相当の肥満なのに「同年代はみんなこの程度」とか  「中年になれば、おなかが出るのは当たり前」などと油断して、生活習慣に注意を払おうとしない人が少なくありません。 まず自分で計算をして標準体重を知ってください。それが目標体重になりますし、食生活を改善する動機づけにもなります。 計算式に身長を当てはめるだけで標準体重は簡単に計算できます。

身長(m) × 身長(m) × 22 = 標準体重(kg) × 体重1kg当たりの必要エネルギー量 = 適正エネルギー量(kcal)

体重1kg当たりの必要エネルギー量は、次のようになります。
・軽労作(主婦、デスクワークが主な人)・・・・・25~30kcal
・普通の労作(立ち仕事が多い職業)・・・・・30~35kcal
・重労作(力仕事が多い職業)・・・・・35kcal~

±10%までは許容範囲です。毎朝、起床時に体重を量ることをお勧めします。
習慣にすれば、前日に食べ過ぎたかどうかをチェックできます。毎日数値を見ていれば、すごく太ってしまってから大慌て、 ということもなくなります。


■まとめ食いはダメ、量のバランスを

1日に必要な適正エネルギー量も上記のように計算します。これを、朝・昼・夕に分け同じくらいの量ずつ食べるのが好ましい。 例えば、1800kcalが必要な人は、1食でだいたい600kcalを摂取するようにします。 数字にはあまりこだわらなくてもいいですが、量のバランスは守るようにしてください。 朝をほとんど食べない分、夕食を多めにとか、逆に夕食にドカ食いをしたから翌日の朝食は食べないなど、 トータルで数字を合わせようとするのはよくありません。こうした「まとめ食い」は、血糖値の急激な上昇を招き、 膵臓に大きな負担をかけます。もし食べ過ぎてしまったら、次の食事をやめたり減らしたりするのではなく、 元の量に戻してください。

また、適正エネルギー量内であれば、食べてはいけない食品はほとんどなく、 むしろ必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。 何をどの程度食べるかは『糖尿病食事療法のための食品交換表』を用いるのが一般的です。 食品を6グループに分類して、食品と量を計算する方法で、治療だけでなく予防にも活用できる優れものです。
しかし、慣れないと面倒で、なかなか続けることができません。 そこで理想的な献立として、「ご飯(主食)・味噌汁(汁物)・カレイの煮つけ(主菜)・野菜の煮物(副菜)という組み合わせ」 を頭に入れておくことが勧められます。1食分に必要な栄養素は、この組み合わせでおおよそ摂れます。 あとはそれぞれの品(皿)を同じグループの食品と交換すればいいのです。どの食品がどのグループなのかは前述の 食品交換表のグループ分けを利用します。この方法を使えば、必要なものまで削ることはなくなります。 ご飯などの主食を削ると、おかずや間食がつい増えてしまうので逆効果です。適量は摂るべきです。 なお、献立を考える際には次のような点に注意します。

  • 油を使った料理は1日2品まで(揚げ物など油の多い料理は1品)。
  • 野菜は毎食(最低でも、生なら両手にいっぱい程度、火を通したものは片手にいっぱい程度は摂る。 野菜料理は1品が最低量なので、さらに加えてもよい)。
  • 果物は1日量でリンゴ1/2個、牛乳はコップ1杯を目安に。

■脂質の摂り過ぎには注意

「脂質」は摂り過ぎてしまいがちです。特に豆腐や納豆などの大豆製品には注意してください。 大豆製品は野菜と同じだとか、低カロリーだとか、勘違いしている人がいますが、脂質も含まれており、 肉や魚と同じグループに属しています。例えば、サンマの塩焼きは、1尾がそのまま食卓に出されることが多いのですが、 1尾食べてよいのは、1日2000kcal以上を必要とする人です。中高年男性の多くは1日の必要カロリー数が1900kcal以下なので、 1尾では食べ過ぎになります。1/3か1/2にするのが妥当ですが、その点に目をつぶるとしても、冷奴や枝豆を加えると 完全なカロリーオーバーになります。

とはいっても、時には手綱を緩めることも必要でしょう。トンカツなどの揚げ物は衣や揚げ油の分も含めると食べ過ぎです。 衣をはがして、という栄養指導もあるようですが、そうするとトンカツではなくなってしまいます。 これは、たまのご褒美、と考えて割り切る。アルコールやお菓子も「ビールは1日置きに350mlを1缶まで」などと ルールを決めればいいでしょう。何より、続けることが大切です。