狭心症の治療

狭心症の治療でまず必要なのは、危険因子を取り除くことです。そのために、生活習慣の見直しを行います。 喫煙している人は禁煙し、運動不足なら運動を行うようにします。 また、「脂質異常症」「糖尿病」「高血圧」「肥満」などの持病がある場合には、 それらの危険因子となるので、きちんと治療を受けるようにします。 狭心症そのものに対しては、3つの治療法があります。 軽度の狭心症であれば「薬物療法」でコントロールする治療が行われます。 狭心症の薬物療法には、狭心症の発作が起きた場合に、 「薬を使って発作を鎮める治療」と 「狭心症の発作が起こるのを防ぐための治療」があります。 重度の狭心症の場合は、「カテーテル治療」「バイパス手術」が行われます。 これらの治療を行っても、それだけでは再発することが少なくありません。 再発を防ぐためには、「心臓リハビリテーション」も必要です。


■狭心症の治療

「狭心症」の治療は、大きく2つに分けられます。
1つは、狭心症の発作が起きた場合に、「薬を使って発作を鎮める治療」です。 「硝酸薬」の一種である「ニトログリセリン」が広く使われており、舌下錠やスプレー剤などの形で服用します。 通常、ニトログリセリンを服用して2~3分ほどで発作は治まります。

もう1つは、「狭心症の発作が起こるのを防ぐための治療」です。 「薬物療法」「カテーテル治療」「バイパス手術」などの方法があり、 狭心症のタイプや重症度に応じて、下記のような治療が行われています。 薬物療法では、血管を広げる薬などを服用して発作を予防し、カテーテル治療やバイパス手術では、 血管を押し広げたり、新たに血液の通り道をつくることで、狭心症を根本から治すことを目指します。
いずれの場合も、動脈硬化の危険因子を取り除く治療が再発予防の基本になります。


■狭心症の治療法の選択

狭心症には、動脈硬化などで冠動脈が狭くなって起こる「労作時狭心症」と、 主に冠動脈が痙攣して起こる「安静時狭心症」があります。 安静時狭心症では、冠動脈の痙攣を鎮めるための薬物療法が行われます。 労作時狭心症では、患者の年齢や状態によっても異なりますが、通常、冠動脈の狭窄が軽い場合や 外科的治療が困難な場合には薬物療法が行われます。 冠動脈の狭窄が重く、狭窄部が1~2ヶ所の場合には「カテーテル治療」、 狭窄部が3ヶ所以上の場合や冠動脈の根元が狭窄している場合には「バイパス手術」が選択されます。

●薬物療法

発作を予防するために「硝酸薬」「カルシウム拮抗薬」などの血管を拡張させる薬を用いたり、 「抗血小板薬」などの血栓ができるのを防ぐ薬などを用います。 発作が起きたときには、硝酸薬の一種で即効性のある「ニトログリセリン」を用います。

【詳細】:『狭心症の薬物療法①』 / 『狭心症の薬物療法②』 /


●カテーテル治療

「カテーテル治療」とは、脚の付け根や腕などの動脈から冠動脈に「カテーテル」という細い管を送り込み、 狭窄部を広げる治療法です。なかでも広く行われているのが、「ステント」という金属の先端の「バルーン(風船)」に かぶせたカテーテルを使う「ステント療法」です。狭窄部でバルーンを膨らませて冠動脈を押し広げた後、 ステントを残してカテーテルを抜き取ります。一般に、手術時間は約1時間で、入院は数日程度です。

ただし、治療後はステントの表面に薄い膜ができてきます。 従来は、ステントの内側にこの膜が盛り上がり、約15~20%の人で再狭窄が起こるのが問題でした。 そこで考えられたのが、免疫抑制薬などを塗った「薬剤溶出ステント」です。 ステントから薬剤が溶け出し、薄い膜ができるのを防ぐので、再狭窄の割合を5~7%に抑えられます。

ただし、むき出しになったステントに血栓が付着し、冠動脈を詰まらせる「ステント血栓症」が起こることがあります。 これを防ぐために「アスピリン」や「塩酸チクロピジン」などの「抗血小板薬」を長期間服用します。 服用を忘れたり、自己判断でやめると、短期間のうちにステント血栓症が起こることがあるので、 医師の指示通りに飲み続けなければなりません。

【関連項目】:『カテーテル治療とバイパス手術』

◆バイパス手術

「バイパス手術」では、狭窄部はそのままにしておいて、他の部位の血管を使ってバイパス(迂回路)をつくり、 血流を回復させます。一般に、手術には約4~5時間かかり、入院期間も2週間程度と長くなります。 従来は、手術中は心臓をいったん停止させ、人工心肺を用いていましたが、 これは、体への負担が非常に大きい方法でした。 そこで最近では、人工心肺を使わず、心臓を動かしたままで行う「オフポンプ手術」が主流になり、 体力のあまりない人でも手術を受けやすくなっています。

【関連項目】: 『カテーテル治療とバイパス手術』


■狭心症治療の進歩

以前は、狭心症の治療といえば、硝酸薬や血管拡張薬によって痛みを解消することが中心でしたが、 近年、カテーテル療法の進歩により狭心症治療の考え方が変わってきています。 カテーテル治療が安全に行える人であれば、痛みやはっきりした虚血に対してはカテーテルを使って積極的に治療し、 運動もしっかり行ったうえで、動脈硬化の進展や狭心症の再発・心筋梗塞を防ぐために薬物療法を行うというのが、 現在の狭心症治療の主流になっている考え方です。
ただし、カテーテル治療も100%安全ではありませんし、従来の治療により日常生活をそれほど不自由なく送れている人に カテーテル治療が必要かどうかは見解が分かれるところです。