狭心症の薬物療法に使う薬
狭心症の薬物療法では、主に、発作を止めたり予防するために用いる「硝酸薬」に加え、 冠攣縮性狭心症では「カルシウム拮抗薬」、器質性狭心症では「β遮断薬」が基本的な治療薬となります。 また、血栓を防ぐために「抗血小板薬」などを用いることもあります。 また、「抗高脂血症薬」のように、高脂血症の改善だけでなく、血管を保護する作用もあることから、 狭心症の発作予防を期待して使われている薬もあります。
■発作を鎮めるのに使う薬
狭心症の発作が起こった時は、特効薬として古くから知られるニトログリセリンなどの硝酸薬が使われます。
●硝酸薬
狭心症の代表的な治療薬です。 硝酸薬には、冠動脈を拡張させて血流を増やし、末梢の血管を拡張させて心臓に戻る血液量を減らして心臓の負担を軽くします。 硝酸薬は冠動脈を拡張させるとともに、末梢の血管も拡張させるため、器質性狭心症にも、冠攣縮性狭心症にも用いられます。 古くから知られる「ニトログリセリン」と、同じような作用を持つ 「イソソルビド硝酸塩」「イソソルビド一硝酸塩」などが用いられています。 発作を止めるために使う即効性のものと、発作を予防するために使う持続性のものがあり、さまざまな剤形があります。
発作時に使うのは主に「舌下錠」で、舌の下に含んで粘膜から吸収させます。 ニトログリセリンは、舌下に含んで1分ほどで効き始め、20~30分ほど効果が続きます。 イソソルビド硝酸塩では舌下に含んで2~3分で効き始め、ニトログリセリンより少し長く効果が続きます。 口の中が乾いて舌下錠が溶けにくい人には、舌下に噴霧して使う「スプレー」もあります。 噴霧して1分ほどで効き始め、効果は60分ほど続きます。 発作が起きたら1日に何回でも使えますが、あまり何度も使うようなら発作予防の治療を強化する必要があるでしょう。 発作を防ぐために使うのは、内服薬が基本です。その他、テープなどの外用薬もあります。 いつ薬を飲んだのかわからなくなりやすい人などは、テープにして、貼るときに日時を書いておくとよいでしょう。
◆副作用・使用上の注意
いずれの薬も、飲み込むと効果が弱まってしまうので、舌下錠は必ず舌下で溶かし、 スプレー薬はしばらく舌の下にためておきます。使用後5分経っても効果が現れない場合には、 もう1錠追加するか、再度スプレーします。15分経っても効果が現れない場合は、 心筋梗塞の可能性もあるため、すぐに救急車を呼んでください。
副作用で起こりやすいのが頭痛や顔面紅潮ですが、これらは血管の拡張によるもので、薬が効いている証でもあります。 慣れると治まってくることもあるので、我慢できる程度であれば、なるべく使い続けることが勧められます。 そのほか、めまい、動悸、頻脈、血圧低下などが起こることもあります。閉塞隅角緑内障のある人は 眼圧を上げる恐れがあるため使えません。また、勃起障害治療薬の「シルデナフィル」や「バルデナフィル」を併用すると、 過度に血圧が低下して危険なことがあるので、併用は禁物です。