狭心症の再発を防ぐ心臓リハビリテーション
『心臓リハビリテーション』で狭心症などの再発が予防でき、以前の生活を取り戻すのにも役立ちます。 心臓リハビリテーションには、セルフモニタリング(自己観察)、運動療法、食事療法、薬の適切な使用 という4本の柱があります。 患者さん自身が体の状態(症状や血圧、心拍数、体重など)を観察していくのがセルフモニタリングです。 運動療法では、運動能力が向上することで、楽に動けるようになり、狭心症の症状が軽減します。 さらに、危険因子である生活習慣病の改善が期待できます。 また、血管が自分で広がる能力が向上することで、心臓が楽に働けるようになります。 心臓リハビリテーションによって、食事はとても重要です。 管理栄養士が食事内容を調べ、どのように改善するとよいのかを 個別に説明します。 心臓リハビリテーションは継続が非常に大切で、入院中だけ心臓リハビリテーションを行うのに比べ、 それを6ヶ月間続けた場合には、治療後の6年間で、再発が28%減少した、という報告があります。
■心臓リハビリテーション
狭心症を治療した後、再発を防ぐために重要
「狭心症」で「カテーテル治療」や「バイパス手術」を受け、一時はよくなっても、狭心症が再発したり、 「心筋梗塞」が起きたりすることも珍しくはありません。 榊原記念病院のデータでは、カテーテル治療でステントを入れた患者さんでも、治療後およそ15年間で約30%の人が狭心症や 心筋梗塞を再発しています。適切な治療を受けても、治療前と同様の生活を続けていれば、再発する可能性があるのです。
●再発予防のためには
再発を防ぐために行われるのが、『心臓リハビリテーション』です。 病気との付き合い方を学びながら、運動療法を中心とした総合的な治療が行われます。 入院中から始まり、退院後は通院して続けます。 心臓リハビリテーションを行うと、心臓の冠動脈に狭くなった部分があっても、他の血管の血行をよくすることで、 ”自然のバイパス”が育ちます。また、動脈硬化を改善する効果もあるといわれています。 動脈硬化を起こした血管には、コレステロールなどが溜まった「プラーク」という膨らみができています。 プラークの膜が破れると、血液の塊ができて血管を塞ぎ、これが心筋梗塞につながります。 心臓リハビリテーションを行うと、膜が薄かったり、コレステロールなどが多くて不安定なプラークが、膜が厚く、 コレステロールなどが少ないために破れにくい安定したプラークに変わります。
また、動脈硬化の危険因子には、
「高脂血症」、
「糖尿病」、
「高血圧」、
「肥満・メタボリックシンドローム」
などの生活習慣病や、
「喫煙」、
「運動不足」、
「ストレス」などがありますが、
心臓リハビリテーションによって、これらの危険因子を改善することができます。
さらに、心臓リハビリテーションには、「再発予防」のほか、「以前の生活を取り戻す」という目的もあります。
心臓の病気を経験すると、何をするのにも不安が伴い、生活が制限されることがあります。
そこで、心臓リハビリテーションによって適切な運動を行っていくことで、不安を軽減し、
できるだけ以前と同じ生活を送れるようにするのです。
心臓リハビリテーションには、セルフモニタリング(自己観察)、運動療法、食事療法、薬の適切な使用
という4本の柱があります。
■セルフモニタリング
症状や血圧、心拍数、体重などを自分で管理する
患者さん自身が体の状態を観察していくのがセルフモニタリングです。 狭心症の症状である「胸の痛み」「動悸」「息切れ」などの有無や、症状の変化に注意を払い、 症状があった時には書き留めておきます。血圧や心拍数は家庭用血圧計で毎日測り、これも記録しておきます。 また、体重も記録します。肥満の管理に重要ですし、「むくみ」のチェックにも役立ちます。 心臓の機能が低下してむくみが生じると、体重が増えるからです。
■運動療法
運動処方に基づいて適切な強度の運動を行う
運動療法には、次のような効果があります。まず、運動能力が向上することで、楽に動けるようになり、狭心症の症状が軽減します。 さらに、危険因子である生活習慣病の改善が期待できます。また、血管が自分で広がる能力が向上することで、 心臓が楽に働けるようになります。そして運動を行った爽快感によって、不安や鬱状態が改善するなど、 心の状態をよくする効果が期待できるのです。
●検査の結果に基づいた運動療法を行う
運動療法を行うときには、事前に検査を行いその人の体力や行える運動の限界を明らかにします。 そのために行われるのが、「運動負荷試験」や「心肺運動負荷試験」です。 運動負荷試験では、運動しながら心電図と血圧を調べます。心肺運動負荷試験は、それに加えて呼気と吸気を調べ、 体力(呼吸循環能力)を評価します。同年代の健康な人と比べてどの程度の体力があるのか、 どの程度の運動で体に異変が現れるのか、などがわかります。 これらの情報に基づき、患者さん一人一人に適した運動処方が作られ、どのような強度の運動をどのくらい行うのかが指示されます。 運動の強度の目安は「目標心拍数」で表され、運動の際はその心拍数を守るようにします。 運動は有酸素運動が基本で、ウォーキングや自転車こぎなどが勧められます。
●運動療法は自分でも続ける
通院での心臓リハビリテーションの終了後は、自分で運動療法を行います。 目標心拍数の運動がどのくらいの強さなのかを覚えておけば、自分で行うときに役立ちます。 ただし、体調によっては、目標心拍数に達する運動の強度では強すぎる場合がるため、 必ず”ややきつい”と感じる程度にとどめてください。 運動は、1日に30分間を2回行うのが理想です。これを週に3日以上、可能であれば毎日行います。 安全に行うためには、注意点を守るようにします。
■食事療法・薬の適切な使用
それぞれの専門のスタッフによる説明と指導を受ける
心臓リハビリテーションによって、食事はとても重要です。管理栄養士が食事内容を調べ、どのように改善するとよいのかを 個別に説明します。薬の使用に関しては、担当医や看護師からだけでなく、薬剤師から説明されることもあります。 このように、心臓リハビリテーションには多くの専門家が携わります。医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、管理栄養士、 臨床心理士、ソーシャルワーカーなどによる”チーム医療”が行われているのです。
●しっかり続けていくことが大切
心臓リハビリテーションは、健康保険が150日間適用されます。継続が非常に大切で、入院中だけ心臓リハビリテーションを 行うのに比べ、それを6ヶ月間続けた場合には、治療後の6年間で、再発が28%減少した、という報告があります。 カテーテル治療やバイパス手術は優れた治療法ですが、心臓リハビリテーションを加えて続けると、 これほど高い効果が期待できるのです。