狭心症・心筋梗塞の危険因子
狭心症の発症に大きくかかわっているのが「動脈硬化」です。 狭心症の発作を抑え、心筋梗塞を防ぐには、その危険因子である生活習慣病を治療し、 喫煙などの生活習慣を改善することが大切です。
■狭心症の危険因子
日本人の死亡原因の1位はがん、2位が心臓病、3位が脳卒中と、心臓病で亡くなる人は多数に上ります。 心筋梗塞や狭心症などをはじめとする心臓病と、脳卒中に深く関係するのが「動脈硬化」です。 動脈硬化は年齢とともに誰にでも起こってきますが、乱れた食生活などの悪い習慣やストレスが加わると、 進行に拍車がかかります。動脈硬化には、自覚症状はありません。 静かに進行して、突然心臓病や脳卒中を引き起こすことがあります。 ですから、危険因子を知り、予防することが何よりも大切です。
●生活習慣病と喫煙が大きな危険因子
特に問題となる危険因子が、次の4つです。 いくつか重なる人は特に注意が必要です。
- ▼高血圧
- 血管に高い圧力がかかり続け、血管壁が傷つきやすくなります。 すると、そこからコレステロールを多く含む「LDL」が入り込み、アテロームが形成されて、 動脈硬化が起こります。
- ▼糖尿病
- 高血糖の状態が続くと、全身の血管が障害されます。生活習慣病の中でも薬によるコントロールが特に難しく、 注意が必要です。
- ▼高脂血症
- 血液中にコレステロールなどの脂質が増えるため、血管壁に余分な脂質が蓄積されやすくなります。
- ▼喫煙
- タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素が血管を傷つけると同時に、血栓をできやすくします。 また、ニコチンには血管を収縮させて脈拍数を増やしたり、 血圧を上げたりする作用があり、心臓への負担が大きくなります。
◆メタボリックシンドロームが発症率を高める
高血圧、糖尿病、高脂血症の大もとになるのが「肥満」です。肥満自体が、生活習慣病の危険因子になります。 特に注意が必要なのが、腹部の臓器を包む膜に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」です。 さらに、内臓脂肪型肥満に加え、血圧、血中脂質、血糖のうち2つ以上が診断基準に当てはまる 「メタボリックシンドローム」があると、狭心症や心筋梗塞の発症率が高まります。
●上記以外の危険因子
- ▼加齢
- 一般に男性は40歳以上、女性は55歳以上になると動脈硬化が進み、 発症しやすくなります。 血管の修復に有効に働く女性ホルモンの影響で女性は男性よりも狭心症になりにくいといえますが、 閉経後は急速に動脈硬化が進みやすくなるため、70歳くらいになると、 発症の危険性は男性とほぼ同じになります。
- ▼家族歴
- 特に、兄弟姉妹に狭心症・心筋梗塞を起こした人がいると、発症率が高まります。
- ▼運動不足
- 肥満だけではなく、高血圧や糖尿病、高脂血症など生活習慣病の原因にもなります。
- 【関連項目】 『運動不足解消』
- ▼ストレス
- ストレスは自律神経に影響を及ぼし、血圧や血糖値を上げます。 また、ストレスによって、心臓の収縮を促すホルモンが分泌され、発作の引き金になることがあります。
- 【関連項目】 『ストレス解消』
■危険因子の数と発症の危険性
危険因子が複数重なるほど、狭心症や心筋梗塞発症のリスクは高まります。 例えば、狭心症や心筋梗塞の発症率は、高血圧があると、健康な人の2.6倍に、 糖尿病があると2.3倍に、喫煙していると1.7倍になります。これらすべてに当てはまる場合、 発症率は3つの数字を合計した6.6倍になるわけではなく、それ以上の10.6倍にもなります。 逆に、危険因子が喫煙と糖尿病だけ、あるいは喫煙と高血圧だけなら4.3倍に、 糖尿病と高血圧だけなら5.9倍と、危険因子が1つ減るだけで、発症の危険性は元の10. 6倍から大幅に低下します。 危険因子を複数持つ人は、1つでも取り除いていくことが、狭心症や心筋梗塞を防ぐために、とても大切なのです。
■狭心症の危険因子チェック
- Q1:高血圧である・・・・・7点
- 血管に高い圧力がかかり続けるため、血管壁が傷つきやすくなる。 傷ついた部分からLDLが入り込み、アテロームが形成されて、動脈硬化が起こる。
- Q2:糖尿病である・・・・・7点
- 高血糖の状態が続くと、全身の血管が障害されていく。糖尿病は生活習慣病のなかでも、 薬によるコントロールが特に難しい。
- Q3:高脂血症である・・・・・7点
- 血液中にコレステロールなどの脂質が増えるため、血管壁に余分な脂質が蓄積されやすくなる。
- Q4:喫煙している・・・・・7点
- ニコチンや一酸化炭素が血管を傷つけ、血栓をできやすくする。 また、ニコチンには血管を収縮させる作用がある。
- Q5:太っている・・・・・4点
- 肥満は、高血圧、糖尿病、高脂血症の危険因子。特に内臓脂肪型肥満があり、 メタボリックシンドロームの診断基準に当てはまる場合は、狭心症や心筋梗塞発症の危険性が高まる。
- Q6:運動不足である・・・・・2点
- 運動不足は、肥満や高血圧、糖尿病、高脂血症などの原因となる。
- Q7:ストレスが溜まりがちである・・・・・2点
- 自律神経に影響を及ぼし、血圧や血糖値が上がるほか、心臓の収縮を促すホルモンが分泌され、 発作の引き金になることがある。
- Q8:家族に心臓病の人がいる・・・・・1点
- 遺伝的に発症しやすい体質や、病気を招きやすい共通の生活習慣を持つことが多い。
- Q9:40歳以上である・・・・・1点
- 加齢とともに、血管の弾力が失われて動脈硬化が起こりやすくなる。
- Q10:男性である・・・・・1点
- 女性ホルモンの影響で、女性は男性よりも狭心症になりにくい。 ただし、閉経後は男性同様に動脈硬化が進みやすいので注意が必要。
- ▼0~6点
- 現在は心配ありませんが、定期的に検査を受けておきましょう。
- ▼7~17点
- 発症の可能性があります。生活習慣の見直しが必要です。
- ▼18点以上
- 発症の危険が高い状態です。生活習慣改善と治療が必要です。