狭心症の薬物療法に使う薬

狭心症の薬物療法では、主に、発作を止めたり予防するために用いる「硝酸薬」に加え、 冠攣縮性狭心症では「カルシウム拮抗薬」、器質性狭心症では「β遮断薬」が基本的な治療薬となります。 また、血栓を防ぐために「抗血小板薬」などを用いることもあります。 また、「抗高脂血症薬」のように、高脂血症の改善だけでなく、血管を保護する作用もあることから、 狭心症の発作予防を期待して使われている薬もあります。


■血栓予防に使う薬

器質性狭心症では、血栓ができて心筋梗塞を起こすのを防ぐために、「抗血小板薬」など、血栓をできにくくする薬が用いられます。 近年、狭心症治療の中で、特に抗血小板薬の重要性が増しています。

●抗血小板薬

血管の内壁が傷つくと、血小板がそこに集まってきて固まります。これが血栓の始まりです。 抗血小板薬は、この血小板の作用を抑えて、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬です。 狭心症の治療で基本的な薬とされるのが「アスピリン」です。 消炎鎮痛薬として用いられている薬ですが、血栓予防には少量を用い、『低用量アスピリン』と呼ばれています。 近年は、さまざまな研究で心筋梗塞や脳梗塞を予防するうえで有効性が報告されています。 その他、抗血小板薬には、より作用が強力な「クロピドグレル」や「チクロピジン」、末梢血管の拡張作用も併せ持つ 「シクロスゾール」、脂質異常症の薬でもある「EPA」のほか、「アスピリン・ダイアルミネート」「シロスタゾール」などがあります。 器質性狭心症では、血栓ができて心筋梗塞が起こるのを防ぐために、少量のアスピリンかアスピリン・ダイアルミネート の服用を続けることが勧められています。そのほかは狭心症そのものの治療薬ではありませんが、 冠動脈のカテーテル治療を受けた後は、何をおいても抗血小板薬の服用を忘れてはいけません。 冠動脈にステントを留置した場合は、通常、アスピリンとチクロピジンを併用します。

◆副作用・使用上の注意

出血しやすくなり、出血する止まりにくくなります。胃の痛みが出たり、便の色が悪くなったりしたら、医師に相談してください また、チクロピジンでは、血小板や白血球の減少、肝障害などが起こることがあるため、定期的な血液検査が必要です。


●抗凝固薬

血液が固まるのにかかわっている凝固因子の働きを抑えて、血栓ができにくくなります。 心筋梗塞を抑えて、血栓ができにくくします。心筋梗塞を起こして心臓の働きが悪くなり、血栓ができやすいときや、 心房細動を合併した時に、「ワルファリンカリウム」が用いられることがあります。


●その他の薬

動脈硬化の改善には、原因となる脂質異常症、高血圧、糖尿病などの基礎疾患の治療が必要になります。 治療薬で特に重要なのが、脂質異常症でLDL(いわゆる悪玉)コレステロール値が高い場合に用いられる「スタチン」です。 この薬には、単に血液中のコレステロールを減らすだけでなく、血管壁を守っている血管内皮の機能を高める働きがあることが わかってきました。器質性狭心症では、動脈硬化が縮小し、表面の被膜も破れにくくなって、安定化してくることが 知られています。冠攣縮性狭心症でも、痙攣が起こる部位に動脈硬化が見られるような場合には、スタチンを使うことで 改善することがあります。その他、高血圧の治療に、近年、日本でよく用いられている「ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)」」 も血管内皮機能の改善効果が高いといわれています。