狭心症・心筋梗塞の早期発見

狭心症心筋梗塞を起こす人が増えています。 しかし、胸の痛みなどの典型的な症状が必ず現れるとは限りません。 症状についてよく知っておくことが早期発見に繋がります。


■狭心症・心筋梗塞とは?

心臓は、血管を通して、全身に血液を送り出す働きをしています。心臓は周囲を冠動脈という血管に取り囲まれており、 そこを流れる血液から酸素や栄養を受け取ることによって、活動しています。 この冠動脈の壁の内側にコレステロールなどが溜まって動脈硬化が進行したり、冠動脈が痙攣するなどして、 血液の通り道が狭くなるのが『狭心症』です。 冠動脈が狭くなると、心臓が活動するのに必要な血液が不足するため、さまざまな症状が起こりやすくなります。 狭くなった冠動脈に血液の塊(血栓)などが詰まり、血液の通り道が塞がってしまうのが『心筋梗塞』です。 心筋梗塞を起こすと、詰まった場所から先には血液が流れていかなくなり、心臓の一部が壊死して動かなくなってしまいます。 詰まる場所によっては、「突然死」に至ることもあります。 狭心症・心筋梗塞の原因は大きく2つのタイプに分けられます。動脈硬化が原因で起こるものと、血管の痙攣が原因で起こるものです。 さらに、症状の現れ方で4つのタイプに分かれます。


■動脈硬化が原因の場合

運動をしたときなどに症状が起こりやすい

●典型的な症状が現れるタイプ

締め付けられるような胸の痛みが起こります。それに伴い、強い動悸息苦しさ、冷や汗、吐き気などが現れます。 狭心症の場合、これらの症状は通常5~10分間ほどで治まります。症状を抑える薬を使っても治まらずに、30分以上長く続く場合は、心筋梗塞が疑われます。 狭心症があるのを放置していると、突然、心筋梗塞を起こす恐れがあります。 たとえ数分でも胸のあたりに明らかな症状を感じた場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。 高血圧など、すでに危険因子がある場合は、循環器科など専門医のいる医療機関を受診してください。 そうでない場合は一般の内科でもよいでしょう。症状が長く続く、つらい、脂汗が出るといった場合は、すぐに救急車を呼んでください。

●関連痛が疑われるタイプ

狭心症では、心臓とは関係ないと思われる離れた場所に、痛みなどの症状が現れることも少なくありません。 原因となる場所から離れたところに感じるこれらの痛みを関連痛(放散痛)といい、主に上半身に起こります。 通常、狭心症が起こると、心臓から痛覚神経を経て脊髄、脳へと刺激が伝わり、「胸が痛い」と感じます。 脊髄には、歯や肩、腕、背中、胃などからも痛覚神経に繋がっており、心臓からくる痛覚神経と同じ束になっています。 狭心症によって心臓から脊髄に刺激が伝わるときに、これらの痛覚神経に刺激が伝わり、その結果、他の場所に痛みを感じるのです。
狭心症では、関連痛だけが現れる場合もあります。ただそのような場合でも、多くの場合、早期発見のためのヒントがあります。 狭心症の多くは、運動時興奮時など心臓の活動量が増えた時に起こります。 つまり、運動をしたときに症状が現れるか否かがヒントになります。 また、「通勤時に階段を上ると歯が痛む」「散歩中の坂道でいつも肩こりを感じる」など、 同じ行動をとるときに再現性をもって起こることも大きなヒントです。 スポーツをしたとき、怒って興奮したときなどに限って症状が現れる場合は、狭心症の疑いがあるので必ず受診してください。

●症状を感じにくいタイプ

早期発見が難しいケースとして、症状を感じにくいタイプの場合があります。 「軽い息苦しさ」くらいしか感じないというタイプで、糖尿病のある人や高齢者に多く見られます。 糖尿病や加齢の影響で神経が障害されているため、狭心症が起こっても痛みを感じにくくなっているのです。 糖尿病があり血糖値を十分に下げられていない人、腎機能が低下している人、特に70歳以上で動脈硬化の要因である脂質異常症、高血圧、肥満、 喫煙の習慣のいずれかがある人は要注意です。これらのリスクがある人は、狭心症や心筋梗塞を起こす可能性が高いので、 最低でも年1回は、心臓の検査を受けてください。


■血管痙攣型

睡眠時や安静時に症状が起こるタイプ

動脈硬化が原因の狭心症とは逆に、安静時に起こるタイプの狭心症があります。 睡眠中の深夜または早朝に、突然冠動脈が痙攣して一時的に狭くなるもので、血管痙攣型(冠攣縮性)狭心症といいます。 血管痙攣型の狭心症では、血管の拡張や収縮をコントロールしている自律神経のバランスの微妙な乱れが影響していると考えられています。 自律神経には交感神経副交感神経があり、睡眠中は血管を広げる副交感神経が優位になり、 起床時は血管を縮める交感神経が優位になります。そのバランスが崩れるために、深夜または早朝に冠動脈の痙攣が起こるのです。 血管痙攣型の多くは、胸の痛みや息苦しさなどの典型的な症状が現れて、目が覚めるため、症状を自覚できます。

●喫煙者や若い人に多い

日本人には、血管痙攣型の狭心症が多く、狭心症全体の約40%を占めると考えられています。特に、喫煙者や比較的若い働いている世代に多く起こります。 喫煙は、自律神経のバランスを乱すうえ、血管を広げる作用のある一酸化窒素の働きを阻害します。 また、日常生活の肉体的・精神的なストレスで、自律神経のバランスが乱れることがあります。 血管痙攣型の狭心症は、初めて起こった場合でもいきなり心臓が止まってしまし、突然死に至ることがあります。 特に喫煙者は、十分な注意が必要です。


■検査

複数の検査をして原因やタイプを見極める

狭心症や心筋梗塞が疑われる場合は、問診や次のような検査が行われます。 問診では、症状や症状が現れた状況、他の病気などについて詳しく説明をしてください。 狭心症の多くは、問診によっておおよその判断ができます。
必ず行われるのが、心電図検査です。最も一般的なのが安静時心電図で、横になった状態で15秒間ほど測定します。 運動負荷心電図は、運動をしたときに狭心症が起こるかどうかを調べられるので、動脈硬化型の狭心症の発見に有効です。 ホルター(24時間)心電図は、携帯型の心電計を装着して24時間の心電図を記録するもので、夜間や朝方に起こる血管痙攣型の狭心症の発見に役立ちます。 心電図検査などで狭心症が疑わしい場合、画像検査を行い、冠動脈の狭くなっている場所やその数などを詳しく調べます。