動脈硬化対策『血管の検査』

血管の検査の技術が進歩して、心筋梗塞 などに繋がる動脈硬化の状態をかなり正確に把握できるようになってきています。 動脈硬化の様々な検査方法をまとめて紹介します。


■動脈硬化の検査

突然起こる病気を防ぐため、血管の状態を把握する

動脈硬化によって起こる病気には、冠動脈が詰まったり、狭くなったりする 狭心症・心筋梗塞、 脳の血管が詰まる脳梗塞、 脚の痛みや歩行困難が現れるPAD(末梢動脈疾患)などがあります。 動脈硬化はほとんど自覚症状がありません。血管の中で起こっている途中経過を見ることが重要です。 現在は、体の外から血管を観察する検査も普及し、患者さんの体への負担も軽減されています。


●検査①体の外側から血管を観察する検査

頸動脈エコー(超音波)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などがあります。

▼頸動脈エコー検査
頸動脈は、心臓から送り出された血液を脳に運ぶ血管です。首の左右それぞれにあり、途中で分かれて2本ずつになっています。 その頸動脈に超音波を当てて、血管の中の状態を調べる検査です。 患者さんの首にゼリー状の液体を塗り、プローブという器具を密着させます。 痛みなどもなく、血管を調べる検査の中でもっとも簡単に受けられます。 頸動脈の壁の厚さや動脈硬化によってできたプラーク、血管が狭くなっているかどうかなどがわかります。 動脈硬化が頸動脈で起こっていると、冠動脈でも起きている可能性が高いため、心筋梗塞や狭心症の可能性が高くなると考えられます。 また、頸動脈のプラークが破れて血栓ができ、脳の血管で詰まると脳梗塞を起こすことがあります。

▼CT検査
エックス線を照射して体の断面を撮影する検査で、現在は、1回の操作で複数の断面を連続して撮影できるMDCTという装置がよく使われます。 MDCTで撮影した画像を処理すると、心臓を取り巻く冠動脈を立体的に見ることができ、狭窄があれば、比較的簡単に見つけ出すことができます。

▼MRI検査
エックス線は使わずに、磁気を当てて臓器や血管を描き出す検査です。特に脳の血管を調べる場合によく使われます。 現在は、脳の血管を目立たせるMRA(磁気共鳴血管撮影)という方法もよく行われます。 血流があるところは、通常白く写ります。血流があるはずの場所が黒くなっている場合は、動脈硬化で血流が悪化していることがわかります。

体の外側から血管を観察する


●検査②カテーテルなどを使って血管の内側を観察する検査

カテーテルという細く柔らかい管の形をした医療器具を使う場合があります。

▼血管造影検査
カテーテルを、手首や脚の付け根などの血管から挿入して冠動脈まで送り込み、造影剤を注入し、同時にエックス線で撮影します。 血液がしっかり流れているところが黒くなります。冠動脈の病変を調べる中心的な検査です。 ただし、血管造影検査やCT検査は、血管の狭窄はわかりやすいものの、プラークの”質”を判断するのは困難です。 例えば、線維性の細胞が多いプラークは大きくても安定していて破れにくく、線維性の膜が薄くてコレステロールなどの脂質が多いプラークは 不安定で破れやすく、心筋梗塞を起こす危険性が大きいということがあります。 近年は、次のような、血管の中を直接観察できて、プラークの”質”がわかる検査が登場しています。

▼血管内超音波検査
先端に超音波装置の付いたカテーテルを冠動脈に送り込んで、血管の壁に超音波を当てます。 血管の内腔の状態やプラークの様子がわかります。 線維性の細胞と脂質では超音波の反射が異なるので、それを色分けすることで、プラークの”質”がわかります。

▼光干渉断層法検査(OCT)
カテーテルを冠動脈に送り込み、血管の壁に近赤外線を当てます。 高い精度で観察できるので、血管壁の状態までわかります。 線維性の細胞と脂質では、色の濃淡が異なるので、プラークの安定性を判断できます。

▼血管内視鏡検査
先端に小さなカメラの付いたカテーテルを冠動脈に送り込み、直接観察します。 血管の中を、肉眼で観察できる唯一の方法です。 白く見えるプラークは線維性の細胞が多く、黄色が濃くなるほど脂質が多いことがわかります。 脂質が多いプラークは破れやすいプラークです。

カテーテルを使って血管の内側を観察する


検査③血圧や脈の数値から血管の様子を調べる

血圧や脈の数値から血管を調べる方法もあります。 ABI(足関節上腕血圧比)、PWV(脈伝播速度)、CAVI(心臓足首血管指数)などの検査です。 これらの検査では、両腕と両足首の血圧、心電図、心臓の音などを調べます。 ABIは、両腕の血圧と両足首の血圧の比率で、動脈硬化の程度を推定します。 動脈硬化が進んでいない場合は足首の血圧のほうが高く、足の血管が狭窄して血流が悪くなっている場合は、足首の血圧は逆に低くなります。 PWVは、心臓の拍動が手や足の血管に脈として伝わる速度を調べます。 動脈硬化で血管が硬くなっていると、伝わる速度が速くなります。 CAVIは、心臓から足首に至るまでの血管の硬さを数値で表すものです。 これらの検査では、血流の状態や血管の硬さなどを調べることで、動脈硬化の進行の程度がわかります。


■検査を受けた方がよい人

動脈硬化の危険因子が多いほど受けた方がよい

脂質異常症糖尿病高血圧喫煙など動脈硬化の危険因子の多い人は、こうした検査を受けるとよいでしょう。 特に家族性高コレステロール血症がある、運動時に胸痛や息切れがある、 狭心症や心筋梗塞を起こしたことがあるといった人は、積極的に受けることをお勧めします。 心筋梗塞や狭心症を起こしたことがない場合は、一般に体の外側から血管を見る検査を中心に受けます。 血圧や脈から血管を調べる検査も簡単に受けられます。