動脈硬化対策『生活改善と薬』

動脈硬化が進むと、 「心筋梗塞」などの命に関わる病気を発症しやすくなります。 予防するためには、生活習慣の改善が重要です。 また、必要に応じて、薬による治療も行われます。


■動脈硬化による病気を防ぐ

まずは生活習慣の改善。不十分なら薬を使う

動脈硬化による病気を防ぐためには、まず 禁煙食生活運動といった生活習慣の改善を行います。 生活習慣を改めることで、動脈硬化の危険因子である 脂質異常症高血糖高血圧を改善していきます。 それだけでは効果が不十分な場合には、薬による治療も行われます。


■生活習慣の改善①食生活

肥満は、動脈硬化による病気のリスクを高めます。 食べ過ぎないことが基本です。1日に摂るエネルギー量は体格や身体活動量などでそれぞれ異なります(下図参照)。 また、動脈硬化対策のために、控えたい食品と増やしたい食品があります。

●控えたい食品

脂身の多い肉、乳製品、卵などです。 肉や乳製品などの動物性脂肪には、飽和脂肪酸が多く含まれています。 飽和脂肪酸を摂り過ぎると、LDLコレステロールが増加します。 飽和脂肪酸は、牛バラ肉や豚バラ肉、鶏肉の皮の部分、ベーコンなどの加工肉に多く含まれます。 乳製品にも飽和脂肪酸は含まれています。ただし、体に必要な栄養素も多く含んでいるため、すべてやめたりはせずに、 低脂肪の物に替えるなどの対策を考えましょう。 飽和脂肪酸の摂取量の目安は、1日に摂るエネルギー量全体の4.5%以上7%未満です。 LDLコレステロール値が高い場合、1日で食事で摂るコレステロールは200mg未満が望ましいとされています。 卵1個には200mg以上のコレステロールが含まれていますが、卵によるコレステロール値への影響は人によって大きく異なります。 コレステロールはイクラやレバーなどにも含まれています。 控えたい食品をどの程度制限すればよいかは、担当医や管理栄養士に相談してください。


●増やしたい食品

魚、野菜、大豆製品などです。魚の油に多い不飽和脂肪酸は、 心筋梗塞などのリスクを減らしたり、 中性脂肪値を下げる効果があるとされています。不飽和脂肪酸の代表が EPADHAで、特に青魚に多く含まれます。 野菜や海藻も多く摂ると心筋梗塞のリスクが低下するとの報告があり、野菜は特に緑黄色野菜がよいとされています。 同様の効果は、果物でも報告されています。甘い果物は糖質が多く、摂り過ぎると中性脂肪が増えます。 食べるなら柑橘類など糖質の少ない果物を中心に適度に摂りましょう。 量はグレープフルーツなら1日1個までが目安です。 大豆製品は、多く摂ると 脳卒中や心筋梗塞などのリスクが低下すると報告されています。


●調理用の油に注意

バターやラードは飽和脂肪酸を多く含むため、調理には不飽和脂肪酸の多い植物油を使うことをお勧めします。 洋菓子や揚げ物などの加工食品に使われるマーガリンやショートニングなどは、トランス脂肪酸を多く含んでいます。 トランス脂肪酸は、LDLコレステロールを増やし、心筋梗塞などのリスクを増やすことがわかっています。 動脈硬化のリスクの高い人は、市販のケーキ、ドーナツ、油を使ったお菓子などの摂り過ぎに注意しましょう。


●「日本食」がお勧め

伝統的な日本食の献立では、魚を中心に大豆製品や海藻もよく使います。 主食は麦や玄米の割合が多いほど食物繊維も多く、 コレステロールの吸収や血糖値の上昇を抑えます。日本食で注意したいのは、食塩の摂り過ぎです。 特に高血圧のある人は食塩の摂取量を1日6g未満に制限しましょう。


●甘いもの・お酒は摂り過ぎに注意

甘いものの摂り過ぎは、中性脂肪を増やし、血糖値を上げます。お酒の飲み過ぎも中性脂肪を増やします。 特に、多量に飲んだ場合は、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。


食生活改善のポイント


■生活習慣の改善②運動

有酸素運動を中心に週に3日は行う

ウォーキング、水泳、エアロビクス、 サイクリングなどの有酸素運動を中心に行います。 楽だと感じる程度からややきついと感じる程度の強さで、1日合計30分以上を目標に、週に3日は行いましょう。 その他毎日の生活の中でも体をこまめに動かすことが大切です。 運動は、 脂質異常症高血圧高血糖を改善します。 特に、食事や薬では増やすことが難しいHDLコレステロールを増やす効果があります。 また、血管がしなやかになり、血栓ができにくくなります。 ただし、重い心臓病や糖尿病、高血圧などがある場合は、事前に担当医とよく相談してから行いましょう。


■薬物療法

動脈硬化予防のために脂質異常症を治療する

動脈硬化による病気を防ぐには、必要に応じて脂質異常症、糖尿病、高血圧などの薬も使われます。 特に脂質異常症は動脈硬化の大きなリスクとなるので、脂質異常症の危険性が高い場合は治療が必要です。 脂質異常症で最も注意が必要なのは、LDLコレステロール値が高い状態です。 LDLコレステロール値を下げる薬では、 スタチンがよく使われます。効果が不十分な場合は、エゼチミブ、レジン、プロブコールなどを併用します。 2016年には、PCSK9阻害薬が登場しました。この薬はスタチンと併用します。 中性脂肪値が多い場合は、フィブラート系、ニコチン酸誘導体などが使われることがあります。 これらの薬による副作用は軽いものがほとんどですが、スタチンではごく稀に、筋肉の成分が血液中に溶け出して腎臓を障害する横紋筋融解症が起こることがあります。 筋肉の痛みや脱力感がある場合は担当医に伝えましょう。また、妊娠中や授乳中にはスタチンなどは使わず、レジンのみを使います。

◆目標値

脂質異常症のLDLコレステロールの目標値は、患者さんの心筋梗塞などの発症のリスクによって異なります(下図参照)。 発症のリスク(低・中・高)は、脂質、血糖、血圧などの数値や、喫煙の有無などから決まります。

◆無理せず長く続ける

生活習慣の改善は長く続けることが大切です。無理な計画を立てて中断しないよう、自分に合った方法で取り組みましょう。 また、脂質異常症などの薬を処方されている場合は、必ず決められたとおりに使ってください。


食生活改善のポイント