血栓予防とアスピリン①なぜアスピリンが血栓予防に使われるか?
『アスピリン』は、古くから解熱鎮痛薬として使われてきた薬ですが、 近年、血液中の血小板の働きを抑える、「抗血小板薬」としての効果があらためて注目されています。 血栓ができるのを防ぐ薬として、”血液をサラサラにする”作用によって、「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの再発予防のために広く使われています。 ”血液をサラサラにする薬”と言われて、飲んでいる人も多いでしょう。 ここでは、血栓予防に広く使われているアスピリンについて解説します。
■血小板とは?血栓症とは?
血小板は血液の固形成分である血球細胞の一種で、血管壁が傷んだ時に、そこに集まって凝固し、出血を止める働きがあります。 けがをした時に血液を失わないようにするのは重要なことなので、私たちの体には強力な修復システムがあります。 けがをすると最初に起こるのが、血小板が集まって傷口を塞ぎ、出血を止めることです。 同じことは血管の内部でも起こります。動脈硬化が起きて、血管の壁の内側にコレステロールなどから成る 『アテローム(粥種)』がたまった柔らかい動脈硬化巣(プラーク)ができると、ときにそれが破れることがあります。 血管の中でけがが起こるようなものです。 すると、手足をけがした時と同じように、傷口を塞いで修復しようとする反応が起こります。 プラークの破れ目に血小板が凝集して塞ぎ始めるのです。 しかし、この反応が過剰に起こると、大きな血栓になって血管を詰まらせてしまうことがあります。 こうして「血栓症」が引き起こされます。 血管内に生じた血栓が、心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈を塞げば心筋梗塞が起こり、脳の動脈を塞げば脳梗塞が起こります。 背景にあるのは動脈硬化ですが、特にプラークが破たんして起こる心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症の発症には、 血小板が深くかかわっています。
■どうしてアスピリンが注目されているのか?
近年、アスピリンの抗血小板作用、心筋梗塞や脳梗塞の予防効果に対する期待が高まっています。 ”血液サラサラ”という言い回しが流行するのもその一つの表れなのかもしれません。 アスピリンには血小板の働きを抑える作用があるため、プラークが破たんしても血栓があまり大きくならず、 心筋梗塞や脳梗塞にならないのではないかという期待があるわけです。 実際、欧米では多くの大規模臨床試験の結果からアスピリンを飲んでいるとこうした血栓症が減ることが証明され、 注目されるようになりました。
血液を固まりにくくして血栓ができるのを防ぐ薬は、抗凝固集と抗血小板薬の2つに大別されます。 「ワルファリンカリウム」などの抗凝固薬の方が血栓を予防する作用は強力ですが、 その分出血性合併症などの副作用のリスクも高いのです。 抗血小板薬でも、「チクロビジン」や「クロビドグレル」の方がアスピリンよりも血栓をできにくくする作用が 強力との報告もありますが、まれに血球の減少や肝障害などの重篤な副作用が起こることが問題視視されています。 予防的な治療に長期間使い続ける場合、やはりアスピリンが基本です。 アスピリンは歴史が長い薬だけに医師の使用経験も豊富で、有効性も証明され、血栓を予防する薬の中では安全性の高い薬です。 薬価も安く、その点でも長期にわたって使いやすい薬といえます。