血圧を下げる食事の工夫
高血圧がある人の食事のポイントは、食塩と動物性脂肪の摂取を抑えることです。 ここでは、食塩や動物性脂肪を減らすための調理のポイントや、外食時の工夫などを紹介します。
■食塩を減らす
ふだんの食塩摂取量を知り、少しずつ減らしていく
高血圧がある人の食塩の摂取量は、「1日6g未満」が目標となります。 しかし、”食塩○g”といっても、あまりピンとこないかもしれません。 食品の包装などに食塩含有量が表示されていることも多いので、確認する習慣をつけるとよいでしょう。 食塩の量ではなく、ナトリウムの量が記載されている場合は、次の計算式で食塩相当量に換算します。
食塩相当量(g) = ナトリウム量(mg) × 2.54 ÷ 1000
●減塩のポイント
食塩が多く含まれている味噌汁や漬物を控えるだけでも、食塩の摂取量を2~3g程度減らすことができます。 味噌汁は、だしをよくとって作ると、味噌の量を少なくしても、おいしく仕上がります。 干物などの塩蔵食品は控え、塩や醤油、ソースのかけ過ぎに注意しましょう。 味付けは調理中に済ませておき、食卓に醤油やソースなどの調味料を置かないようにすると、 余分な食塩を摂ってしまうのを防げます。焼き物や揚げ物の場合は、下味をつけず、 食べるときに減塩醤油を使うと、食塩を減らすことができます。
■バランスよく食べる
野菜を積極的に摂り、脂肪分を減らす工夫を
食事の基本は、栄養をバランスよく摂ることです。特に野菜類は、意識してたっぷり摂りましょう。
最近は、ゆで野菜の冷凍食品も市販されています。忙しい中でも上手に野菜を摂るためには、
こうした冷凍野菜を利用するのも、1つのアイデアです。
一方で、体重管理のためにも注意したいのが、脂質の摂りすぎです。
調理にい使う油は、植物性のものにして、肉類を調理する時は網で焼いたり、ホイル焼きや蒸し料理にすると、
余分な脂肪分を落としたり、油の使用量を減らすことができます。
- ▼調味料は量って使う
- 味付けをする際には、目分量ではなく、その都度量って使うようにして、調味料を使い過ぎを防ぐ。
- ▼減塩調味料を用いる
- 市販の調味料を使う際は減塩のものを選ぶ。また減塩の調味料を手作りして使うのもよい。
- ▼植物油を使う
- 油を使う場合は、なるべく植物油を使うようにする。
- ▼全体で味のメリハリを
- すべてを薄味にするのではなく、濃い味付けのものと薄い味付けのもの、というようにメリハリをつける。
- ▼煮物を作るときは砂糖を少なめに
- 煮物などで砂糖をたくさん入れると、その分、醤油もたくさん入れないと味が整わなくなるので、砂糖を少なめにする。
- ▼塩や醤油の代わりを見つける
- 酢や香辛料などは血圧に影響しないため、醤油や塩の代わりに用いるとよい。 焼き魚には柑橘類の絞り汁などを利用するのもお勧め。
- ▼酢や辛子であえる
- 酢や辛子などで野菜をあえると、食塩を増やさずに野菜をたくさん摂ることができる。
- ▼ゆでる・蒸す
- 肉料理は、棒棒鶏などのように、油を使わずゆでたり、蒸したりする調理法がお勧め。
- ▼カルパッチョにする
- 魚の切り身は、刺身ではなく、少量のオリーブオイルとレモンなどでカルパッチョにすると、食塩が少なくて済む。
●減塩醤油の作り方
- ▼材料
- 基本ベース:醤油と水の割合は1:1に、
①和風 昆布…3cm角程度のもの1枚
②洋風 ニンニク…1/2かけ、赤唐辛子…1/4本 - ▼作り方
- 清潔な空き瓶を用意する。自家製の減塩醤油は傷みやすいので100ml前後の小さめの容器がよい。 瓶に醤油と水と材料を入れておくと、数時間ほどで材料のうまみが出てくる。昆布など入れたままでよい。 和風の場合、水ではなく鰹節でとっただしを入れてもよい。洋風の場合は、好みでハーブ類を入れてもよい。
■市販のお弁当や外食の注意
食塩や動物性脂肪の少ないものを選ぶ
●市販のお弁当
お弁当を買うときは、炊き込みご飯などでなく、味がついていない白いご飯のものを選び、漬け物は残すようにしましょう。 かまぼこなどの練り製品にも、多くの食塩が含まれていますから、こうしたおかずがたくさん入っている場合には、 どれか1品を残すようにするとよいでしょう。 また、付属の醤油やソースなどは、かけ過ぎないように注意してください。
●外食
外食はどうしても食塩や脂質が多くなりがちなので、できれば控えたいところなのですが、 外食する場合には、ファストフードや丼ものは避け、なるべく和風の定食を選ぶようにしましょう。 この場合にも、味噌汁や食塩には注意が必要です。 お酒を飲むときには、おつまみの食塩やエネルギーにも気を配ることが大切です。 昼食で食塩を摂りすぎたら、夕食は薄味にするなどして、1日の食事の中で、 食塩の摂取量やエネルギー量などを調節するようにしましょう。
■合併症などがある人は
減塩に加えて脂質などの制限を厳しく行う
高血圧に加えて、ほかの病気などを持っている場合は、それぞれの合併症に応じた注意が必要です。
- ▼心臓病
-
「狭心症」や「心筋梗塞」を起こしたことのある人は、脂質の摂り過ぎを十分に、気を付けます。
「心不全」の場合には水分を摂りすぎないようにします。
【関連項目】
『高血圧と心臓病』 - ▼腎臓病
-
減塩をより厳格に行います。また、症状によっては、カリウムやたんぱく質の摂取量も制限する必要があります。
【関連項目】
『高血圧と腎臓病』 - ▼糖尿病・高脂血症・肥満・メタボリックシンドローム
-
食事全体のエネルギー量を抑えることが最優先です。コレステロールなどの摂りすぎにも、十分注意します。
- 減塩をより厳格に行います。また、症状によっては、カリウムやたんぱく質の摂取量も制限する必要があります。
【関連項目】
『高血圧と糖尿病』
『メタボリックシンドローム』
- ▼妊娠中の人
- エネルギー摂取量を守り、妊娠中は適切な体重増加を、出産後は体重が増えすぎないように心がけます。 すでに妊娠している人は、急な減塩は控えてください。
心臓病や腎臓病などの治療で使われる薬の中には特定の食品との相性が悪いものがあります。 その場合は、担当医とよく相談して、食事療法を進めてください。
■続けていくためには
できることから初めて、習慣にしていくことが大事
塩辛い味付けに慣れた人が、いきなり1日6g未満にまで減塩しようとしても、長続きさせるのはなかなか難しいものです。
”我慢できず、結局は長年親しんできた味に戻ってしまった”とならないためには、自分ができそうなことから始めて、
徐々に薄味に慣れていくことが大切です。
また、自治体などで行っている栄養指導や講習会などに参加して、基礎的な知識をしっかり身に付けることをお勧めします。
■関連項目