ふわふわするめまい

立ったり歩いたりすると体が浮いているように感じる「ふわふわめまい」。 最近になってその原因がわかってきました。


■ふわふわめまいの多くはPPPDという病気が原因

体が浮いているように安定せず、クラクラ、フラフラと感じるタイプのめまい(ふわふわめまい)に悩む人は、めまい全体の約2割に上ります。 このようなめまいがある場合、これまで「めまい症」と診断されてきましたが、原因がわからず、治療法も定まっていませんでした。 しかし、近年、めまいの研究が進んだことで、ふわふわめまいの多くはPPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい) という病気であると診断されるようになってきています。 PPPDはぐるぐるめまいなどの急性のめまいによって脳が過敏な状態になったために、ふわふわめまいが慢性化する病気です。
脳は、内耳や目、筋肉から送られてくる情報を処理することで、体のバランスを保っています。 PPPDの患者さんでは目や筋肉から得た体の動きの情報や視覚情報に対して、脳が過剰に反応するために、めまいが起こると考えられています。 立ち仕事で動いたり、商品が詰まった陳列棚をみるなど目に入る情報量が増えたりすると、症状が悪化するので、 「料理がしづらい」「スーパーでの買い物ができない」などの問題が生じます。 重度の場合、歩くだけでフラフラすることもあり、生活に大きな支障を来します。

体の動きや視覚の情報に誘発されてPPPDが起こる


●強いめまいの経験がある人は要注意

強いめまいが起こると、体のバランスを保とうと脳が視覚や筋肉の情報を総動員します。 しかし、めまいが治まった後もその状態が続くことで、脳が刺激に過剰に反応するようになり、PPPDが起こりやすくなります。 特に「良性発作性当いめまい症」 「メニエール病」 「前庭神経炎」 などが原因のぐるぐるめまいを経験したことのある人に多く、これらの病気が治った後に、PPPDが引き続いて起こる人が少なくありません。 なお、PPPDでメニエール病を合併すると、難聴を伴ったり、ぐるぐるめまいとふわふわめまいの両方が起こることがあります。 また、「片頭痛」 「自律神経失調症」 「パニック障害」などでもぐるぐるめまいを伴うことがあり、 これらの病気が治ったあとにもPPPDが起こることがあります。 思い当たる症状があれば、耳鼻咽喉科を受診しましょう。 ただし、PPPDは新しい概念なので、耳鼻咽喉科医の間でもまだあまり広く認知されていません。 より専門性の高い「めまい相談医」のいる医療機関が知覚にあれば、そこを受診するとよいでしょう。

<<前庭神経炎とは?>>

初めに24時間以上、激しいぐるぐるめまいが続くのが特徴です。 三半規管や耳石器と脳を繋いでいる前庭神経とという神経が障害されることで発症しますが、原因はまだはっきりとわかっていません。

●PPPDの診断方法

診断では問診が重視され、どんな時にめまいが起こるのかなどを聞きます。 めまいを起こすほかの病気の有無を確認するため、眼振検査や聴力検査も行われます。 また、ふわふわするめまいのなかには、貧血や低血圧が原因のものもあるため、これらの病気の有無も確認します。


■リハビリテーションや薬で症状を改善する

PPPDの治療では、自分でできる体操や薬による治療を中心に行います。

▼前庭リハビリ
前庭神経炎の治療では以前から行われてきたリハビリテーション体操で、PPPDにも有効です。 目と体を連動させる動きを繰り返し行うことによって、運動時の視線の「ブレ」を安定させたり、 スムーズな歩行につなげるための訓練で、毎日行います。 このリハビリだけで、次第に症状が改善する患者さんも少なくありません。 ただし、目や体を動かす体操なのでめまいが起こりやすいため、必ず医師の指導を受けてから行ってください。 また、やり過ぎは悪化につながります。回数や速さは医師の指示通りに行いましょう。

前庭リハビリの方法の例


▼薬による治療
脳の過剰な反応を抑えるために、抗うつ薬の一種 「SSRI」が使われます。 PPPDにうつ病や不安症が合併していて、リハビリだけでは改善するのが難しい場合に処方が検討されます。 吐き気や嘔吐、下痢、便秘など、胃腸に副作用が起こることがありますが、 別の種類のSSRIに替えることで検討します。

▼認知行動療法
精神科医や心療内科医、臨床心理士などの指導によって、自分の状況や病気についての捉え方を変える「認知行動療法」は、 海外では、めまいに対する不安を軽減することに繋がると報告されています。 現在、日本では保険診療としてめまいに対する認知行動療法は行われていませんが、認知行動療法の治療法を参考にして作られた「めまい日誌」 というものもあるので、試してみるのもよいでしょう。

めまい日誌を付けよう