【質問】母がペースメーカーを入れましたが、何を気を付ければいいですか?

先日、80歳代の母がペースメーカー(Medtronic W2DR01)を入れました。 無事に退院しましたが、これから気を付けることを教えてください。
●50歳代・女性


【答】

ペースメーカーとは人工的に心臓を動かすための医療機器です。 お母上の病状の詳細は不明ですが、一般的には不整脈、特に病的に脈が遅くなる「徐脈性不整脈」の治療に用いられます。 息切れ、倦怠感、失神、心不全などの合併がなくても、近い将来の危険性を回避するために予防的にペースメーカーを植え込むこともあります。
ペースメーカーにはいくつかの種類があり、徐脈の種類によって使い分けられます。 今回使われているは心房と心室にリード(細いワイヤー)を挿入するタイプで、自身の心臓の電気信号を感知して、 あらかじめプログラムされた設定で電気信号を発生させ、ワイヤーを通して心房、心室を順に刺激することで、 生理的に近い拍動を維持します(心房・心室順次ペーシング)。ペースメーカーの本体(ジェネレーター)は胸部(通常は左の鎖骨の下あたり) の皮下にポケットを使って植え込みます。

さて、植え込み後ですが、基本的には以前と変わらない生活を送ることができます。 もちろん本体を植え込んだポケット部分に衝撃を加えることは避けてください。 いちばん問題になるのは電磁波の影響ですが、最近の機種は磁気共鳴画像検査(MRI)も可能です。 携帯電話の電磁波については、総務省の指針で本体と携帯電話端末を15cm以上離すことが推奨されていますが、あまり神経質になることはないでしょう。
そうはいっても、いざというときにプログラムどおりにペースメーカーが作動しないことがあってはなりませんので、 3~6ヶ月ごとにペースメーカー外来を受診して作動状況をチェックしてもらうことが必要です。 電池の寿命も大事なので、受診時に電池残量をチェックして交換の時期を教えてもらいましょう。 電池の寿命は機種や作動状況などによっても異なりますが、今回植え込まれた機種の場合はだいたい12~13年となっています。

ペースメーカーを植え込んだ患者さんが安心して日常生活を送れるように、患者さんどうしの情報交換や医師への相談などを支援している 「日本心臓ペースメーカー友の会」統いう団体がありますので、活用されるのもよいと思います。

(この答えは、2024年6月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)