【質問】家族性高コレステロール血症の注射薬について教えてください

「家族性高コレステロール血症(FH)」と診断され、 内服薬でLDLコレステロール値は半分程度に下がりましたが、担当医に注射薬を勧められました。 今も治療費は高めで、注射薬を併用するとさらに負担が増えますし、副作用も心配です。 注射も受けた方がよいか悩んでいます。


【答】

「家族性高コレステロール血症」は ”悪玉と呼ばれるLDLコレステロール(LDL-C)値が、遺伝的原因で異常に高くなる病気です。 LDLは細胞表面のLDL受容体に結合し、細胞内に取り込まれますが、 FHではLDL受容体やそれにかかわる遺伝子に異常があるため、細胞内にLDLが取り込まれず、血液中のLDL-C値が著しく高くなります。 そのため、若くても 狭心症心筋梗塞など 動脈硬化に起因する冠動脈疾患が起こる危険があるので、 早期診断、早期治療が必要です。 治療では、禁煙、 食事療法、運動療法などの生活改善を行いますが、それだけではLDL-C値は下がりにくいので、 薬物療法が非常に重要です。 薬はスタチンから始め、効果を見ながらエゼチミブ、レジン、プロブコールなどを併用するのが基本です。 冠動脈疾患を発症していない場合、LDL-Cの目標は100mg/dL未満ですが、十分に下がらない場合は、治療前の数値の50%未満を目標とします。 すでに冠動脈疾患がある場合は、70mg/dL未満を目標に治療します。

さて、ご質問の注射薬とは、2016年に登場した「PCSK9阻害薬」と思われます。 LDL受容体の分解を促進するPCSK9という物質の作用を阻害する薬です。 スタチンと併用して2~4週間に1回皮下注射することで、LDL-C値を60%程度下げることが可能とされています。 冠動脈疾患のリスクが高く、スタチン単独で効果不十分な場合に限って使用が認められています。 最近の研究では、スタチン内服中の動脈硬化性心血管疾患の患者さんにPCSK9阻害薬を長期間投与すると、その再発が抑制されることが報告されています。 副作用については、それほど心配はないと思います。薬の1か月の支払額は、健康保険で3割負担の場合、1万3770円です。

ご質問者の現在のLDL-C値は不明ですが、リバロ錠を1日4mgまで増量しても100mg/dL未満にならない場合は、他の薬の併用の検討が勧められます。 また、冠動脈疾患や動脈硬化の有無を評価し、冠動脈疾患の既往があれば、PCSK9阻害薬を早めに開始する場合もあります。 なお、妊娠の可能性がある場合は、スタチンは使えず、PCSK9阻害薬も現段階では妊婦への安全性は確立されていないので、 安全性の高いレジンを使います。いずれにしても、担当医とよく相談してみてください。

(この答えは、2017年7月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)