【質問】肥大型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症。手術は必要ですか。

「肥大型心筋症」と「僧帽弁閉鎖不全症」と診断され、服薬治療中です。 聴診器検査では雑音が入り、MRI検査では左心室から左心房に血液の逆流が見られます。 担当医に手術を勧められましたが、紹介先の専門病院の医師に「経験上、まだ経過観察でよい」と言われ、困っています。 自覚症状はなく、普通に生活しています。
●60歳代・男性


【答】

心臓は筋肉(心筋)でできた臓器で、全身に血液を送り出すポンプの役目をしています。 通常、心筋は厚くならないように制御されていますが、何らかの原因で少しずつ厚みが増していくことがあります。 左心室の心筋の厚みは、通常1cm程度ですが、1.5cmを超えた状態を「肥大型心筋症」と呼んでいます。 一方、心臓の4つの部屋(左心房、左心室、右心房、右心室)のそれぞれの出口には、逆流を防ぐための弁が付いています。 左心房と左心室の間にある「僧帽弁」がしっかり閉じず、 左心室から左心房に血液が逆戻りしてしまう場合を「僧帽弁閉鎖不全症」と呼びます。
ご質問者の場合は肥大型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症の両方があるようですが、 多くの場合は肥大型心筋症によって僧帽弁閉鎖不全症が引き起こされていると考えられます。 肥大型心筋症によって心筋が厚くなり左心室の内腔が狭くなると、血液が全身に送り出されにくくなるので、息切れや呼吸困難を生じやすくなります。 また、左心室の内腔が狭くなると、左心房から左心室へ血液が流れにくくなるので、僧帽弁に負担がかかり、 この状態が長く続くと便が閉まりにくくなって逆流が生じるのです。

肥大型心筋症の患者さんが僧帽弁閉鎖不全症を併せて患った場合に、手術が必要かどうかの一番の決め手になるのは自覚症状です。 「少し歩いただけでも息が上がるので買い物にも行けない」など日常生活に支障がある場合は、手術をお勧めすることになります。 どのような手術が行われるかは、僧帽弁の逆流の程度や左心室の内腔の狭さなどにより、弁を治すか、左心室の内腔を拡げるか、あるいはその両方か、が決まります。 一方、自覚症状がない場合は、経過観察になることが多いと思います。 ご質問者の場合も、今後、息切れなどを自覚するようになり生活に支障が出てきた場合は、手術を検討するとよいと思います。

肥大型心筋症は突然死の可能性が高いことも知られています。突然死のリスクがある場合は、 その予防に「植込み型除細動器」を使うことがありますので、 症状がなくても定期的に病院を受診して検査を受けるが必要があります。 また、肥大型心筋症の場合は心臓の内腔が狭くなると病態が悪くなるので、他の心筋症と異なり、心臓をある程度膨らませるために、 医師の指導の下、適度に水分を補給することが重要です。

(この答えは、2018年5月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)