高血圧対策に「カリウム大作戦【余分な塩分をせっせと排出する】」

高血圧の予防には「カリウム」を摂取することが重要です。 人間は、進化の過程で、余分なカリウムだけを体外に排出する機能を持つようになりましたが、 余分なナトリウムだけを排出する機能は発達しなかったので、 余分なナトリウムを体外に排出するためには、カリウムが一緒でないと排出できないのです。 したがって、余分なナトリウムを体外に排出するためには、カリウムを摂取する必要があります。


■現代人の食事はカリウムが不足している

現代人の強力な助っ人として注目されているのが『カリウム』。 もともと人間の食事は、カリウムが多く、ナトリウム(塩分)が少ないものでした。 縄文時代の食事に代表されるように、木の実や野草を味付けせずに食べていたので、 体はこのような食生活に適応するように進化し、腎臓は余分なカリウムだけを尿に排出する機能を持つようになりました。 しかし現代人の食事では、この2つのミネラルバランスが逆転し、カリウムよりナトリウムが多くなりました。 ところが腎臓にはナトリウムだけを排出する機能はなく、必ずカリウムが一緒でないと排出できません。 つまり、過剰なナトリウムを尿に排出して減らすためには、十分なカリウムの摂取が必要なのです。


■カリウム不足は高血圧や脳卒中を招く

最近の研究で、体内でカリウムが不足し、ナトリウム過多になれば、血管が収縮し、高血圧を引き起こし、脳卒中、 心筋梗塞にもつながるということがわかってきました。 そこで、厚生労働省では、2005年発表の『日本人の食事摂取基準』内で、生活習慣病を予防するために、 カリウムを積極的に摂るべきだと明記しました。それまで1日あたり2000mgだった所要量(基準量)は、 ナトリウムと一緒に体外へ排出されることも前提に、1日当たり3500mgを摂ることが望ましいとする新基準値が設定されました。


■カリウムたっぷり食材で減塩をバックアップ

日本人の1日当たりの平均摂取量は2389mgなので、新基準量をクリアするためには、1日平均で約1200mgをさらに摂る必要があります。 カリウムが豊富なバナナに換算すると、1本分が400mgなので、約3本分。 しかし、バナナばかりを毎食食べるのでは、糖分が多くなり、栄養も偏りがち。 いろんな食材からカリウムを摂ることが大切です。カリウムは肉類にも含まれますが、カロリーの低い野菜や豆類、イモ類なら、 一度にたっぷり摂ることができます。 また、カリウムは水に溶けやすいので、下ゆでやあく抜きはしない方がお勧め。 野菜などをたっぷり入れた具だくさんの汁物にすれば、汁に溶け出たカリウムを無駄なく摂ることができるうえ、 汁が少なめになる分、減塩にも効果的です。


■腎臓が悪い人はカリウム摂取に要注意

ただし、カリウムを十分に摂っていれば、塩分も多量に摂ってよいということではありません。 カリウムもナトリウムも過剰に摂りすぎて、ナトリウムの排出に役立てようとすることは、 それだけ腎臓に負担をかけることになるからです。 クエン酸や酢などを用いて、おいしく減塩できる工夫をしながら、カリウムを摂ることが大切です。