有NO運動【血管を若返らせて、柔軟性を取り戻す】

血管の老化が進むと「動脈硬化」になり、高血圧の一因となります。 この動脈硬化を防ぐには、血管を若返らせて、柔軟性を取り戻す必要があり、 そのためには、「有NO運動」、例えば、鼻歌を歌える程度のウォーキングやジョギング、または、水泳などがお勧めです。


■硬い血管は血圧を上昇させる

通常、年齢が上がるにつれて血管は老化して硬くなりますが、若くても血管の老化が進んでいる人もいます。 20代であっても、血管年齢はすでに60代という人もいるので、若くても油断は禁物です。 では、血管が老化して硬くなると、どのようなリスクがあるのでしょうか。 本来、血管の壁は柔らかくて弾力があり、血液が流れる際の強い衝撃を吸収して受け止めることができます。 ところが、血管が硬くなってしまうと、衝撃を受け止められず血圧の上昇を招きます。 さらに、強い衝撃に耐えられずに、血管が傷ついたりすると、血栓ができて脳梗塞や心筋梗塞を招き、 血管が破裂した場合は、くも膜下出血や大動脈瘤破裂などにつながる危険性があります。

【関連項目】:『血管年齢』


■血管の筋トレで血行を促進

これまで老化した血管はもう元に戻らないと考えられていましたが、最新の研究により、もう一度血管を若返らせる ことができることが明らかになりました。若返らせる方法は、いわば「血管筋トレ」。 血管は3層構造になっており、内側から「内膜」「中膜」「外膜」といいます。 そして中膜にはコラーゲン、エラスチンとともに「筋肉」が存在しており、血液が流れる管の周りをぐるりと覆っています。 血管は、暖かいとゆるみ、寒いと縮むというように、気温などの影響で広がったり、縮んだりします。 それは、血管の周りの筋肉が伸び縮みしているからです。 つまり、血管筋トレによって血管の筋肉を緩め、リラックスさせることができれば、老化して硬くなった筋肉も 柔らかく若返るというわけです。


■加齢とともに衰えるNO生産力をアップ

ある実験で有効な血管筋トレ法を調べたところ、ジョギングや水泳などの有酸素運動をしている人は 血管が柔らかいということがわかりました。 この「有酸素運動」「有NO(ゆーノー)運動」と言い換えることができます。 NO(エヌオー)とは、一酸化窒素のこと。有酸素運動をすると、血液を全身に送ろうとして血流が速くなり、 その刺激を受けた血管の内膜を構成する内皮細胞がNOを出します。 それが筋肉に伝わると、筋肉がリラックスして血管が広がり、血液の流れがスムーズになるのです。

年齢を重ねると、内皮細胞がNOを作り出す能力が衰え、次第に血管の筋肉が硬くなります。 この衰えを改善してくれるのが「有酸素運動=有NO運動」というわけです。 習慣的に運動を続けていると、NOの生産能力もレベルアップし、年を取ってからでも、 若々しい血管を取り戻すことが可能です。水泳やジョギング、自転車こぎなどがお勧めですが、 より手軽にできる「ウォーキング」でも、きちんと効果ができます。

▼関連項目
『ウォーキング・ギョギング』
『ローイングマシン(ボート漕ぎ運動機器)』

■実験~2週間ウォーキングで、血圧も血管弾力も改善~

ある夫婦に1日30分、週3回のペースで鼻歌が聞こえる程度のウォーキングを続けてもらい、 血圧がどう変化するのかを検証しましました。 3週間後、女性の血管の弾力は15%改善。血管年齢も65歳から実年齢の52歳になりました。
さらに続けて2週間ウォーキングを継続してもらったところ、最大血圧は夫婦ともに下がりました。 女性の最大血圧は143mmHgから236mmHgに、男性の最大血圧は131mmHgから118mmHgに下がりました。 そして、男性の血管弾力は9%改善。血管年齢も60歳から51歳になりました。 この実験から、高齢になってもウォーキングなどの有NO運動をすることで、血管を柔らかくすることがわかりました。


■その他

▼NOはいい物質?それとも悪い物質?
NO(一酸化窒素)は大気汚染物質で、呼吸などで体外から体内に吸収されると体に悪い影響を及ぼします。 ところが、体内で作られる場合には逆。筋肉をリラックスさせるなど、体に良い影響を与えます。 有酸素運動を習慣にすると、NOの体内での生産能力が高まります。