インクレチン関連薬
strong>インクレチン関連薬は、インスリンとグルカゴンに作用して、血糖値が上昇した時に血糖値を下げる薬です。
■インクレチン関連薬
インクレチン関連薬は、膵臓のインスリン分泌を促進する作用のある薬です。 この点は従来から使われているスルホニル尿素薬などと同じですが、この薬には血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンの分泌を抑える作用もあります。 スルホニル尿素薬の場合は、常に膵臓を刺激してインスリン分泌を促進するため、 血糖値が下がり過ぎる「低血糖」を起こす場合があります。 インクレチン関連薬は、食後などの血糖値が高いときにだけインスリンの分泌を促すので、低血糖が起きにくいのが特徴です。 また、インスリンを分泌させるときに、スルホニル尿素薬ほど膵臓を疲れさせないと考えられています。 また、従来の飲み薬の多くは、体重が増えやすい副作用がありましたが、インクレチン関連薬には、体重が増えにくいというメリットがあります。 インクレチン関連薬には、大別して「DPP-4阻害薬」と「GLP-1受容体作動薬」があります。 どちらもインスリンの分泌を促進する働きを持っていますが、血糖値を下げる仕組みは従来から使われているインスリン分泌薬とは異なります。
- ▼DDP-4阻害薬
- 飲み薬で、現在よく使われているインクレチン関連薬です。血糖値を下げる効果はGLP-1受容体作動薬の方が強力です。
- ▼GLP-1受容体作動薬
- 自分で注射する薬です。体重が増えにくい点はDPP-4阻害薬と共通していますが、GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑える効果も期待できます。
■インクレチン関連薬の作用
- ▼血糖値が高いときにインスリン分泌を促進する
- インスリン分泌促進薬で、従来からよく使われている「スルホニル尿素薬」は、 血糖値に関係なくインスリンの分泌を促進します。 一方、インクレチン関連薬は、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促進します。 そのため、低血糖が起こりにくくなるのです。
- ▼グルカゴンの分泌を抑制する
- 膵臓は血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンも分泌しています。 健康な人は、血糖値が高い状態ではグルカゴンの分泌が抑えられていますが、 糖尿病がある人では、分泌量が増えてしまいます。 インクレチン関連薬には、膵臓からのグルカゴンの分泌を抑える働きもあります。
このようにインクレチン関連薬は、インスリンの分泌を増やす一方で、グルカゴンの働きを抑えるという 2つの作用によって血糖値を低下させます。
■インクレチン関連薬の実際
糖尿病の原因によって使い分けられることがある
2つのインクレチン関連薬を従来からよく使われているスルホニル尿素薬と比較すると次のような違いがあります。
- ▼DPP-4阻害薬の場合
- スルホニル尿素薬と同じ経口薬ですが、血糖値を下げる効果は同等かやや弱まります。 ただし、スルホニル尿素薬に見られる低血糖や体重の増加は起こりにくくなります。
- ▼GLP-1受容体作動薬の場合
- 注射薬で用いられます。血糖値を下げる効果はスルホニル尿素薬より強くなります。 低血糖が起こりにくく、食欲を抑え、体重の減量効果も期待できます。
●他の治療薬と併用される場合が多い
インクレチン関連薬は、従来のインスリン分泌促進薬や他の治療薬と併用されることも多く、 例えば次のように用いられることがあります。
インスリンの分泌不足が原因の場合は、まずインスリン分泌促進薬が使われます。 それでも十分な効果が得られない場合は、スルホニル尿素薬とDPP-4阻害薬が併用されたり、 異なる作用で血糖値を下げる薬が追加されたりします。
また、インスリン抵抗性が原因の場合は、最初にインスリン抵抗性改善薬が使われますが、 効果が不十分な場合にはDPP-4阻害薬やスルホニル尿素薬などが追加されます。 体重が増加したり、血糖値が再び上がってきた場合には、DPP-4阻害薬やスルホニル尿素薬を、 体重の減量効果も期待できるGLP-1受容体作動薬に切り替えることがあります。
このほか、患者さんの病状に合わせてさまざまな組み合わせで用いられます。
●併用する場合は低血糖に注意する
インクレチン関連薬は低血糖の起こりにくい薬ですが、他の薬と併用する場合は血糖値が下がりすぎる場合があります。 スルホニル尿素薬と併用する場合は、スルホニル尿素薬の量を減らして使われます。 高齢者や腎臓の働きが低下している人は、特に注意が必要です。