糖尿病の運動療法

糖尿病の治療では、薬物療法も行いますが、基本はあくまでも食事と運動です。 糖尿病の運動療法は、脂肪を減らし肥満を解消すること、 インスリンの働きをよくして血糖値を下げることを目的に行います。


■糖尿病治療の基本「運動療法」

食事療法と並んで糖尿病対策の基本となるのが「運動療法」です。 糖尿病は血糖だけではなく、体重、血中脂質、血圧なども管理しなければなりませんが、 そのためには食事療法だけではなく、運動療法も併せて行う必要があります。 適度な筋肉運動は、エネルギー消費を増して肥満を解消し、さらにインスリンの作用を高めて、血糖コントロールや脂質代謝の改善に役立ちます。 運動は、糖尿病の進行状態、合併症の有無などの検査をした上で医師と相談して行います。 運動療法では、無理のない程度の運動を定期的に続ける必要がありますが、 「乗馬運動」「ローイングマシン(ボート漕ぎ運動機器)」 「サイクリング(サイクル運動機器)」 などの室内で簡単に運動ができる器具を使うのも1つの方法です。 これらの室内運動は、天候に左右されませんし、運動が継続しやすくなります。

また、日常的に歩く機会を増やしてください。 外出時に遠回りしたり、早めに歩いたり、エレベーターを使わずに階段を上がったりするとよいでしょう。 一日一万歩以上歩く、三十分から一時間体操するなどが推奨されています。 また、運動を毎日継続して行っていると、体内では脂肪を合成する酵素が抑えられ、脂肪を分解するホルモンが増えるという変化も起こります。 体調のよさを実感できるようにもなるでしょう。


■糖尿病の運動療法

ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動が勧められます。 「楽にできる」から「ややきつい」と感じる程度の強さで、1日に合計で20~60分程度、できれば毎日、少なくとも週に3回は行いましょう。 筋肉に負荷をかける動作を繰り返すレジスタンス運動も、特に筋力の保持のためにお勧めです。 腹筋や腕立て伏せ、スクワット、ダンベルを使った運動などがあり、週に2~3回行うとよいでしょう。

一般に、運動をするとブドウ糖がエネルギーとして消費され、 血糖値が下がります。特に、有酸素運動を長く継続すると、インスリンの効きがよくなって血糖値が下がりやすい体質になります。 その他にも、運動には、血圧が下がる、善玉コントロールが増えやすくなる、体重が減るなどの効果があります。 また、気分がよくなって、生活の質が向上することも期待できます。 ただし、血糖管理が不十分である、糖尿病の合併症で眼底出血・腎不全・壊疽などがある、糖尿病神経障害が進んでいるといった場合は注意が必要なため、 運動をする前に必ず必ず医師に相談してください。


●1日20分のウォーキング

多くの医師が進める運動療法は、 「ウォーキング」です。 ウォーキングを行うときのコツは、20分以上かつ早足で歩くことです。 ウォーキングは有酸素運動ですが、酸素が脂肪を燃焼させるのは、 運動を開始してから15分後くらいなので、それ以上続けないと効果は期待できません。 早足で歩いた場合とゆっくり歩いた場合とでは、消費カロリーが大きく異なるので、早足でカロリーの消費量を増やしましょう。


●筋力トレーニング

筋肉の量を増やすと、筋肉がブドウ糖を取り込み、血糖値を安定させて下げることができます。 そこで、できるだけ有酸素運動にプラスして 「筋力トレーニング」を行うことをおすすめします。 太らない体質を作るためにも筋肉が必要なのです。


●運動時の低血糖対策

運動をすると、血糖値が下がりすぎて低血糖が起こることがあります。 これを防ぐためには、ビスケットなどの補食を用意して、運動中や運動後に摂るようにします。 低血糖が起こったら、ブドウ糖や砂糖を摂ります。 インスリン製剤を使っている場合は、手脚などよく動かすところに注射をすると、薬の吸収が早まって低血糖が起こりやすくなるため、お腹にします。 また、運動後は血糖値が低下するので、医師と相談して、運動前後のインスリン製剤の量を調整することもあります。


運動を続けるには、日常生活の中でこまめに体を動かす工夫もしましょう。 一緒に運動する仲間を作るのも大事なことです。家族や仲間と一緒だと長続きしやすくなります。