ニンニク
高血圧、糖尿病から白内障、ボケに至るまで効き、老化を撃退するニンニクの多彩な薬効。
私たちが普段食べる食品の中で、強力な健康効果を発揮するものといえば、 誰もがまず『ニンニク』を思い浮かべるのではないでしょうか。 実際にニンニクは、数ある食品の中でも有効成分に恵まれて健康野菜の王様といっても過言ではありません。 ニンニクは中央アジアや北アフリカ原産のユリ科の植物ですが、長い歴史の中で、洋の東西を問わず滋養強壮に役立つ食品として、 また、数多くの病気や症状を防ぎ治す特効薬として珍重されてきました。 例えば、早くからニンニクの健康効果に注目していた古代エジプトでは、感染症や疲労衰弱、神経系・循環器系の病気、 生理不順、便秘、腫瘍など、22種類もの病気の治療にニンニクが用いられてきました。 その処方は当時の医学書「エーベルス・パピルス」に記されています。 巨大なピラミッドの建設に携わった人々が過酷な仕事に耐えられたのも、ニンニクの常食のおかげと考えられています。 さらに、歴史を下ると、中世ヨーロッパで大流行したペストや結核の予防にニンニクが著効を示したこともわかっています。 もちろん、東洋でもニンニクは重宝されてきました。漢方医学を発達させた中国では、紀元前からニンニクの保温作用や 殺菌作用、強精・強壮作用が評価されていたことに加え、頭痛や赤痢の治療薬としてもニンニクが活用されていたのです。 さらに、今から約2000年前に中国から日本にニンニクが伝えられ、熱さましや風邪薬として用いられました。 このことは「古事記」や「源氏物語」などの書物にも記載されています。
■ニンニクの効果・作用
世界各国でその効果が認められ、愛用されている香味野菜
3つの効能がうまく作用する
多彩な薬効を持つとされるニンニクは、古くから世界各地で健康増進に活用され、民間療法でもいろいろな形で利用されてきました。
その薬効をもたらすニンニクの主成分の一つが「アリシン」です。
ニンニクを刻むと、ニンニク中の「アリイン」という成分が空気に触れ、「アリナーゼ」という酵素が働いて、アリインがアリシンに変化します。
刻むと、特有の匂いがしますが、それがアリシンによるものです。
ニンニクは、ユリ科ネギ属の多年草です。ニラやネギもその仲間ですが、中でも飛び抜けてアリインの含有量が多いのがニンニク。
つまり、アリインが変化したアリシンの効能が最も強力なのもニンニクなのです。
アリシンの主な効能には、
①血液循環をよくする。
②血液をサラサラにする。
③代謝を促進する。
この3つがうまく作用し、後述するさまざまな効能をもたらします。さらに、アリシンには強い抗菌作用があります。
例えば、カツオのたたきに、おろしたニンニクが添えられるのは、カツオの寄生虫による食中毒・アニキサス症に対する抗菌効果が期待できるためです。
また、ニンニクは、その他の食中毒の予防にも大変役立ちます。
ただし、生のニンニクを摂ると、作用が強すぎて胃を痛める恐れがあります。生の場合、長期保存もできません。
そこで民間療法では、ニンニクに手を加えて長期保存を可能にしたり、アリシンの作用をマイルドにしたりして、日常生活に摂取できるようにしてきました。
次に、ニンニクの民間療法について、効果が期待できる主な効能と使い方のポイントをお話しします。
●ニンニクの有効成分「アリシン」
発癌のリスクを下げたり、活力アップをサポート!
ニンニクは、そのままではほとんど臭いはないのですが、少しでも傷をつけると強い臭いを発します。
それはニンニクの成分「アリイン」が酵素「アリナーゼ」によって「アリシン」
に変るからです。ニンニクを焼いたりすると臭いが減るのは、熱に弱いアリナーゼが破壊されて、
アリシンのできる量が少なくなるからです。
アリイン+アリナーゼ(酵素)= アリシン
強烈な臭い成分アリシンこそニンニクのすぐれた成分なのです。
アリシンは、体内のタンパク質・糖質・脂質と結びつきタンパク質アリシン・糖質アリシン・脂質アリシンという
「アリシン複合体」へ 変化します。
このアリシン複合体がニンニク=スタミナというイメージを支える原動力なのです。
◆アリシンの働き
- ▼血液循環促進
- アリシンは体内で脂質と結びつき、「脂質アリシン」としての働きをします。 抗酸化作用のほかに、酸素を運搬して細胞を活性化し、血栓の分解を行います。 これらの作用は、若返り、老化防止だけでなく 高血圧、冷え症、 更年期障害、 不眠、 便秘などにも効果的です。 アリシンにビタミンEが加われば、 体の総合力はさらに強まります。
- ▼降圧作用
- 高血圧は、血管の内側にたまったカスと汚れと、 コレステロールや中性脂肪でドロドロになった血液のせいで、 血流が悪くなりその血流を体の隅々に送り出すために血圧が上がるのが原因です。 ニンニクに含まれるアリシンは、血液のかたまり(血栓)を溶かして血行を良くしたり、 血液中の脂質を減らして血液をサラサラにする働きがあり、 動脈硬化の予防や高血圧の改善に効果があります。
- ▼殺菌・抗菌効果
- アリシンには、殺菌・抗菌効果があり、赤痢菌、コレラ菌、チフス菌などの強力な菌にも有効であることがわかっています。
- ▼抗酸化作用
- アリシンは抗酸化作用が高く、 発癌のリスクを下げる働きや、抗加齢効果が期待できます。
- ▼疲労回復
- アリシンにはビタミンB1 の吸収を促す働きがあるといわれています。 ビタミンB1は糖質がエネルギーに変換されるのを促すため、ビタミンB1が不足すると糖代謝がスムーズに行なわれず、 乳酸などの疲労物質が蓄積し、疲労や筋肉痛、肥満などの原因になります。 ビタミンB1が豊富な玄米や豚肉とニンニクを合わせると、疲労回復やダイエットのサポートに効果的です。
- ▼その他
- アリシンは、強力な抗菌力とともにコレステロールに対する働きでも有名な成分です。 ただし、加熱するほど効果が減少するといわれています。
さらに、アリシンはビタミンB1と結合すると「アリアチアミン」という成分に変化し、 整腸作用や物忘れ防止作用などの効果をもたらします。 他にもニンニクは、コレステロール値を下げたり、血管や血液、脳や内蔵を若々しく保つ特効食としても注目を集めています。
●ニンニクの有効成分「アホエン」
脳の情報伝達をスムーズにし、脳の機能低下を防ぐ!
最近では、ニンニクの香りの成分であるアリシンが変化した「アホエン」というイオウ化合物も注目を集めています。 アホエンは、生のニンニクには含まれておらず、低温の油でじっくり加熱することで生成される特殊な成分です。 アホエンの健康効果は実に多彩で、ざっと見ただけでも癌や動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、認知症(ボケ)、 脂質異常症(高脂血症)など現代人が陥りやすい病気の予防効果や免疫力の強化作用のあることがわかっています。 特に注目を集めているのは、アホエンが脳の機能を活性化させ、 物忘れや認知症などを防ぐ効果です。 アホエンには、神経細胞の中で、記憶の形成に関係している成分であるアセチルコリンを分解する、 コリンエステラーゼという酵素の働きを抑える作用があるといわれています。 アセチルコリンの分解を防ぐと、情報伝達や記憶の形成がスムーズに行なわれるようになると考えられています。 また、イオウ化合物の一種である「S-アリルシステイン」には、強い抗酸化作用や抗癌作用、老化防止作用、血液浄化作用が備わっています。 さらに、「スコルジニン」というイオウ配糖体(糖と他の成分が結合した物質)は、滋養強壮作用や食欲増進作用のもとになっています。
■ニンニクの有効成分と効果
●高血圧対策に「ニンニク」
高血圧は、血管の内側に溜まったカスと汚れと、コレステロールや中性脂肪でドロドロになった血液のせいで血流が悪くなり、 その血流を体の隅々に送り出すために血圧が上がるのが原因です。 ニンニクに含まれるアリシンは、血管を広げ、血管内の汚れを取り除く他、コレステロールを下げる効果もあります。
●快食・快便・快眠に「ニンニク」
- ▼快食(食欲増進)
- 「ニンニク」は洋の東西を問わず世界的に使われているスパイスですが、アリシンは胃腸を適度に刺激して消化機能を高めます。 つまり食欲を増すだけでなく、食べたものがしっかり消化吸収されます。
- ▼快便(便秘・下痢)
- 「ニンニク」が便秘'胃腸障害によく効くことは古くから伝えられています。 アリシンはビタミンB1と結合し、アリチアミンに変化、腸壁を刺激し、末梢血管を拡大して腸の蠕動運動を活発にします。 同時に、神経組織にも鎮静、安定作用を与え整腸機能を正常化します。 細菌性の下痢症状に対しては、抗菌力の強いアリシンで解消します。
- ▼快眠(不眠症)
- 「ニンニク」には交感神経を鎮めて、副交感神経を働かせる強い作用があります。 副交感神経が働き始めると、体の緊張は緩み、末梢血管は拡張して血行が盛んになり、体温も上がって、快眠の条件が整っていきます。
●ニンニクの抗癌効果
また、ニンニクは抗癌食品のNo.1に位置づけられ、最強の癌予防食品として推奨されています。 ニンニクが健康野菜として大きな注目を集めたのは1953年のことでした。 米国ケースウェスタンリザーブ大学のワイズバーガー博士が行った研究で、ニンニクは発癌の抑制効果が極めて高いことがわかったのです。 1989年に米国国立癌研究所が中国と行った疫学調査では、ニンニクを常食している人は癌になるリスクが40%も低いことが報告されました。 1994年に米国のアイオワ州で行われた調査でも、ニンニクを週1回以上食べる人は全く食べない人に比べ、大腸癌の発症率が約1/2しかないことが確認されています。 さらに米国では、抗癌効果の大きい食品をランク付けした「デザイナーズフーズピラミッド」で、 ニンニクを抗癌食品のNo.1に位置づけ、最強の癌予防食品として推奨しています。
◆ニンニク若葉
ニンニク若葉は、言わずと知れた健康野菜の王様 ニンニクの「スプラウト(新芽)」が原材料の健康食品です。 ニンニクスプラウトは、ニンニクだけに含まれる正常細胞の変異予防と癌細胞の増殖を阻害する物質 S-アリルシステイン(SAC)と ジアリルトリスルフィド(DATS)が生ニンニクよりたいへん多く含まれていることが特筆すべき点で、 含有量はS-アリルシステインが16.2倍、ジアリルトリスルフィドが7.8倍です。 S-アリルシステインとジアリルトリスルフィドの機能性については、 米国ピッツバーグ大学をはじめとする世界の研究機関でそのメカニズムが解明されています。以下は、それら研究論文の一部です。
- 1.ニンニク成分ジアリルトリスルフィドは、トランスジェニックマウスにおける前立腺癌および肺転移の活発な細胞増殖分化を阻害する (米国 ピッツバーグ大学 薬理学・化学生物学科)
- 2.ジアリルトリスルフィドおよび関連アリウム野菜由来の有機硫黄化合物による多標的予防および癌の治療 (米国 ピッツバーグ大学 癌研究所、ピッツバーグ大学大学院 医学部)
- 3.ジアリルトリスルフィドは、JNKおよびAP-1のROS媒介性の活性化を介して、 ヒト乳癌細胞においてアポトーシス(細胞の自然死)を誘導する(韓国 誠信女子大学 ヒューマンエコロジー学部)
- 4.試験管内のマウス白血病WEHI-3細胞をアポトーシス(細胞の自然死)の誘導、そして、 生体内の正常および白血病マウスの免疫応答の変化にジアリルトリスルフィドの影響(台湾 極東記念病院)
- 5.ニンニクより単離した抗癌作用物質ジアリルトリスルフィドによる 大腸癌細胞の細胞死の誘導メカニズムを解明! (日本大学 生物資源科学部)
●その他の効果
- ▼更年期障害
- 「ニンニク」には更年期障害の原因であるホルモンの分泌をうながして、アンバランスを是正する働きがあります。
- ▼冷え症
- 最近、職場や家庭での冷房病も加わり、冷え症の悩みは深刻な問題となっています。 冷え症をはじめとする不定愁訴の多くは、女性ホルモンの分泌異状が原因ですから、治療には普通ホルモン剤が使われます。 「ニンニク」のアリシンには、体内のホルモンアンバランスを是正するはたらきがあり、血行を旺盛にし、体全体の保温作用を高める効果もあります。
- ▼美容とニンニク
- 古くから「ニンニク」を常食している中国や朝鮮の女性は、きめが細かく美しい肌をしているといわれています。 「ニンニク」は「食べるスキンケア」ともいわれ、細胞活性作用があって、全身の細胞をいきいきとさせ、皮膚の老化を防ぎます。 また、血管を拡張して血行をよくしますから美肌を保ちます。
■ニンニクの食べ方
- ▼酢ニンニク
- ニンニクと酢の血液サラサラ効果、血流改善効果により、全身の血行が良くなって、高血圧や冷え性が改善し、 腎臓の機能も高まります。また、ニンニクと酢の代謝促進効果は、糖尿病や肥満の改善にも有効に働きます。 肝臓病にも勧められます。さらに、肝臓の解毒作用が高まるので、癌予防にも役立ちます。 かすみ目など、目の症状の改善にも有効です。
- ニンニクを電子レンジで加熱してから作ると、3~4日目から食べられます。 毎日1~3片を目安に食べますが、少し多めに摂ってもよいでしょう。
- ▼ニンニクの醤油漬け
- 生のニンニクを加熱せずに醤油漬けにすると、アリシンの強力な抗菌作用が残存して胃腸の働きを整えるため、 胃弱や胃痛、便秘の人に勧められます。全身の血流が改善し、血液がサラサラになり、代謝もアップするので、 動脈硬化や糖尿病の予防や改善にも有効です。
- 毎日1片が目安です。胃弱や胃痛の人の場合は、食べ過ぎに注意してください。半年ほどで食べきりましょう。
- ▼ニンニクの味噌漬け
- ニンニクと味噌の成分の働きで、全身の血流がよくなり、冷え性、イライラ・めまいなどの更年期障害の予防や改善に 役立ちます。ニンニクに豊富なビタミン・ミネラルの働きと、脳の血流の改善効果で、脳細胞の若返りが促され、 ボケ予防効果も期待できます。また、味噌に日本酒を加えることによって、味噌が混ぜやすくなるだけでなく、 血流効果が高まるのです。
- ▼ニンニクワイン
- ニンニクと赤ワインの色素成分・ポリフェノールの働きで、血流がサラサラになり、全身の血行が促され、高血圧、糖尿病、 動脈硬化の予防や改善効果が期待できます。血流の改善によって肝臓と腎臓の働きが高まります。 東洋医学では、肝と腎は目の症状と密接な関係にあるとされています。肝と腎が整うと、眼精疲労、老眼、白内障、飛蚊症 などが改善するのです。
- 夜寝る前に少量飲む習慣をつけるとよいでしょう。
- ▼ニンニク酒
- 全身の血流を改善するニンニクには、優れた滋養強壮作用があります。精力減退、疲労回復、老化予防、肝臓病予防に 役立ちます。生のニンニクを35度のホワイトリカーに漬けこむため、必ず、6ヶ月間はしっかり漬け込んでください。
- 1回15mLが目安ですが、虚弱体質の人は、1回5mLから飲み始め、慣れたら、少しずつ摂取量を増やすとよいでしょう。
- ▼ニンニクのはちみつ漬け
- ニンニクは、全身の血流をよくして代謝を改善し、虚弱体質の改善にも役立ちます。 ハチミツも滋養強壮作用が強い食品なので、相乗効果で免疫力もアップします。 風邪、咳、痰、喘息で悩む人にもお勧めです。ニンニクのほかハチミツも併せて摂取しましょう。
- ▼焼きニンニク
- ニンニクは、全身の血行を促し、代謝を改善します。その結果、皮膚や頭皮の細胞も活性化され、 美肌効果、白髪・抜け毛予防効果が期待できます。血行促進によって、腰痛、冷え性、精力減退も改善するでしょう。
- 1日1~3粒が目安。少し多めに摂っても構いません。
- ▼ニンニク塩麹
- 大腸癌予防に効果ありと世界が注目の成分が2.7倍増のニンニク塩麹。
- ▼ニンニクオイル
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血栓を防ぎ血液サラサラ!
脂肪燃焼を促進し、ダイエット効果大の『ニンニクオイル』 - ▼黒ニンニク
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老化を防ぐ成分が充満!
若返り効果の期待大!臭いも気にならない『黒ニンニク』。 - ▼ニンニクヨーグルト
- 便秘や下痢、食中毒に悩むことなく夏を乗り切るためには、「ニンニクヨーグルト」がお勧めです。 ニンニクヨーグルトとは、ニンニクとヨーグルトを混ぜ合わせた食べ物です。 その組み合わせに驚く人がいるかもしれませんが、実は意外にこの二つは合うのです。 現にトルコをはじめ東地中海地方では、ニンニクとヨーグルトのソースや、 「ジャジュク」と呼ばれる伝統的な冷製スープが当然のように食されています。