【質問】斜視の手術について教えてください
左目が外斜視になり、2006年に手術(外直筋後転術7.5mm、内直筋短縮術6mm)を受けました。
数年前から同じ左目で症状がぶり返し、以前より進行している感じがします。
医師に相談すると、「右目の筋も併せて調整することで症状の改善が期待できる」ということでした。
悪くない右目も手術することに納得がいかず、手術を受けるべきかどうか悩んでいます。
●70歳:男性
【答】
手に右利きと左利きがあるように、目にも「利き目」と「利き目でない目」があります。
ただ、片方の目だけに近視がある人では、遠くを見るときと近くを見るときで利き目が変わる場合があること、
また、利き目の視力が病気で低下すると、利き目でない目が利き目になることもあります。
ほとんどの人は両目で物を見ていますが、斜視のある人は利き目で物を見るため、利き目でない目が時々(間欠性斜視)、
あるいは常時(恒常性斜視)、違う方向を向いてしまいます。
ただし、利き目でない目が悪い目というわけではありません。
斜視の手術を検討する場合には、手術を行う目として「利き目」「利き目でない目」「両眼」の3つの選択肢があります。
一般に初回の手術では、患者さんやご家族が納得されやすいので、利き目でない目を手術する場合が多いのですが、両眼を手術する場合もあります。
2回目の手術では、むしろそれまで手術をしていない方の利き目を手術することが多くなります。
理由としては、1回目の手術で後転術を受けた目に、さらに後転術を行うと治療した筋の方向への目の動きが極端に悪くなること、
また、手術をする場所が目の後方の狭い場所になり手術が難しくなることが挙げられます。
ご質問者の場合、すでに7.5mmの外直筋後転術を受けられているので、後転術を追加するとしても、せいぜい2~3mm程度で、
効果がそれほど期待できないわりに手術が難しく、あまり推奨できません。
また、一度短縮術を行った筋の再短縮術は、筋の弾性を損なうため、定量性(筋肉を何mm動かせば、斜視が何度よくなるかの安定性)が悪くなり、
手術後の戻り(再び斜視になること)も大きくなると考えられます。
そのため、2回目の手術は1回目とは逆の目に行うほうが、効果が確実で手術も容易だといえます。
ご質問者の場合も、利き目である右目の手術が最も勧められる手術法だと思います。
(この答えは、2020年8月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)